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季節がめぐる中で 47

「いやいや、中佐殿、教導官殿を乗せることには自分は全く反対しませんよ。なあカウラ」 

 とりあえず更衣室を出た誠とランに声をかける要。

「まあ、そうだな。私の車でよければ」 

 そう言うと菰田に背を向けて車のキーを出して歩き始めるカウラ。

「すまねーな。オメー等も疲れてんだろ?」 

 引きつった笑みを浮かべるラン。それをいつものタレ目をさらにまなじりの下がった姿にして要が見下ろしている。

「いえいえ、アタシ等は中佐殿と違って暇を持て余していますから。明日はご予定は?」 

 そう言う要に、思わず釣られて携帯端末を取り出すラン。

「一応、明日は嵯峨大佐に会うつもりでいたから明日の昼間はまるまる空いてるんだ。夜からは遼北陸軍第二十三混成特機連隊の夜間教導の予定が入ってるけどな」 

 そう言うとランは要の顔を見上げた。ランの顔は完全に『しまった』と言う顔をしている。

「それじゃあかなり付き合えそうですねえ」 

 まなじりが下がりっぱなしの要を見て、誠も不安を感じていた。だいたいこう言う表情を要が見せるときはろくなことが起きない。

「それと、コイツは酒の飲み方が出来ていないんでねえ。できればそちらの方を教えてあげて欲しいんですけど……」 

 やはりこちらに風を向けた要。誠が緊張しながら振り返るランを見つめる。だが、ランもどこかしら先ほどまでの自信にあふれた姿を失って不安そうに誠を見上げた。

 これでは本物の小学校二年生である。

「そいつは……教えてやならないといけねーな」 

 頬を引きつらせながらハンガーの階段をカウラに続いており始めるラン。西達、夜勤組の整備班員がランの姿を見て敬礼する。軽く手を上げて答えるランだが、どこかしら不安そうな表情が口元に浮かんでいる。

「お待たせしました」 

 そのままジャケットを着込んだ誠は呆然として立ち尽くしている菰田を置いて更衣室を出た。

「どう言う酒の飲み方……ってあの餓鬼酒を飲んだことがあるのかね」 

 要の言葉に頷くカウラ。二人はそのまま誠を引き連れると医務室の前を通り過ぎ正面玄関に向かう階段を降りる。

 階段を下りきると広がる正面玄関の大きなガラスの扉。そこからは隣接している菱川重工豊川の明かりが煌々と照らしているうす曇の空が見えた。二人はそのまま本部前の駐車場に向かうがそこに制服姿のランが駆け寄って来る。駐車場には茜の高級セダンと吉田のワンボックス。それにパーラの四輪駆動車が残っていた。

「パーラの奴、まだ残ってるのか」 

 そう言うとカウラは自分のスポーツカーの鍵を開ける。

「あいつ等だろ。どっかで遊んでるんじゃねえの?」 

 要はそんなことを言いながらさも当然と言うように助手席のドアを開けると狭い後部座席に乗り込んだ。

「なんだよ。アタシじゃねーのか?そこは」 

「いえいえ、中佐殿にはこのような狭い場所はふさわしくないですから」 

 そう言って笑う要を見てカウラは思わずこめかみに手を当てた。

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