季節がめぐる中で 35
「こんなもの作ってんじゃねえよ。明華!」
ランはそう言うと控え室から出てきた明華に声をかける。
「作っちゃったんだからしょうがないじゃない。それにこれなら人力で何とかなるでしょ?丁度、説教も終わったところだし……」
そう言う明華の後ろから西達整備班員が出てくる。
「神前も手伝いなさい」
明華の言葉に押されて目の前の箱に群がる隊員。
「じゃあいっせいに力を入れるのよ!」
明華の合図に隊員達は力を込めて踏ん張った。突然バランスが崩れて黒い塊が入り口から飛び出てきた。巨大な熊。近くの隊員が恐怖で手を離してプレハブが床に落ちる。
「なんだ!シャム。入ったままだったのか!」
怒鳴りつけるランにシャムは頭を下げている。飛び出した熊、グレゴリウス13世は逃げ惑う整備班員を追い回していた。
「どうにかしろ!」
腹を抱えてこの有様を見つめている吉田の尻をランが蹴り上げた。
「なにすんですか!」
そう言い返すものの腕組みしてにらみつけるランに、吉田はあきらめてグレゴリウス13世のところに行ってその首輪を握って動きを止める。
「今のうちよ」
そう言う明華の顔色を見た西が仲間を集めて再びプレハブを持ち上げる。
「大変ですわねえ」
外から戻ってきた茜が汗を流して熊の家を運んでいる誠達を優雅に扇子をはためかせながら見つめている。
「茜もやるか?」
そんなランの言葉に扇子で口元を押さえる茜は首を横に振った。
「早く運べよ!」
ランはそう言うと隅を持っている誠の尻を蹴り上げる。
「そんなこと言っても……」
泣き言を言う誠を横目に見ながらグレゴリウス13世とシャムと吉田がじっと彼を見つめていた。
「さあ!私も応援よ!」
その後ろにはいつの間にかアイシャが来てグレゴリウス13世の頭を撫でていた。




