季節がめぐる中で 122
保安隊ハンガーの前に広がるグラウンドは砂埃に包まれた。誠が見上げれば大型輸送機がいつも誠が立っているマウンドに向かいゆっくりと降下してきていた。
「菰田もやるもんだなあ」
出撃前の作業服姿の要がそう言いながら誠の肩を叩く。
「すぐに乗り込むぞ」
要の言葉に頷いた誠はそのままハンガーへ足を向けた。
「野次馬は結構だが自分の仕事を忘れるなよ」
ハンガーの入り口で同じように作業服姿のカウラがエメラルドグリーンのポニーテールをなびかせて二人を迎え入れる。
「焦りなさんな。叔父貴がおらんでもやることは変わらねえんだ。神前!とっとと済ませちまおうぜ」
そう言って要は自分の白く塗りなおしたばかりの05式甲型へと足を向ける。誠も自分の機体を見上げた。美少女キャラが全面に描かれた『痛アサルト・モジュール』には整備員が張り付いて反重力エンジンや対消滅エンジンの調整を行っている。
そんな中、誠はコックピットに上がるエレベータに乗り込む。そのまま上昇してコックピットに張り付いているヨハンの隣に立った。
「ご苦労様です」
そう言った誠に巨体を振り返らせるヨハン。助手の下士官は調整用端末のジャックを取りまとめていた。
「法術系の対応出力はかなり上がってるからな。まあチャージレートなんかはシミュレーションの設定にかなり近づけたからそれなりの戦果は出してくれよ」
ヨハンの言葉に誠は頷いた。法術兵器による広範囲攻撃。誠の知る限り、いやたぶん知らないところでもこのような兵器の実戦投入は初の試みだろうと思うと誠の鼓動が高鳴る。
「本当にうまく行くんですか?」
誠のこわばった表情を見てヨハンの表情が厳しくなった。
「お前のそう言うところ直した方がいいな。俺達は万全を尽くしたんだ。少しは人を信用しろよ。それと自分自身もな」
そう言って笑うヨハンに笑顔を返そうとするが、誠にはそのような余裕は無かった。手元のコンソールが光り始め、機体のチェック項目が次々と終了していく。
「シュペルター中尉!オールグリーンです!」
「よし!神前、頼んだぞ!」
ヨハンに背中を押されて誠はコックピットに身を沈めた。ハッチと装甲版が降り、全周囲モニターが光を放つ。目の前では搬入のために起動した要の二号機がゆっくりとハンガーを出ようとしているところだった。
「どうだ?異常はないか?」
回線が開いてカウラの心配そうな顔が映る。
「大丈夫ですよ、ヨハンさんとかが完璧に仕上げてくれましたから」
そう言うと誠は関節を固定していた器具の解除のランプがついたのを確認して操縦棹を握り締める。一歩、そして二歩。誠の機体が歩き始める。
「こけないように」
「馬鹿にしないでくださいよ」
突然開いた回線で笑っている明華に誠はそう返すとそのままハンガーを出た。足元では大漁旗や自作の寄せ書きを振るう整備員の姿がある。そのまま誠は彼らをすり抜けて後部のハッチを全開にした輸送機の格納庫へと機体を移動させた。




