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121/171

季節がめぐる中で 121

 バルキスタン中部、山岳地帯。深夜、迷彩服に身を包んだ小隊がドアを蹴破り粗末な小屋を襲う。中で銃の手入れをしていたイスラム系民兵が驚きの声を上げることは無かった。突入した部隊のアサルトライフルの弾丸が次々と襲い掛かり、民兵達はそのまま何もできずに床に倒れこむことになった。

 突入部隊の指揮官が外に向かってハンドサインを送る。

 数人の部下に囲まれた女性士官、マリア・シュバーキナ少佐は機材の搬入を行う部隊員達を避けるようにしてそのまま小屋の中央のテーブルに腰掛けた。

「死体の処理を頼む。そして……」 

 マリアの横に置かれた大型の通信機にも見える装置。マリアは何も言わずにそれを見た後、自分の腰につけられた小型の機械に目をやった。走り回る彼女の部下達も同じ機械を腰につけている。

「お守りねえ。ヨハンの奴、何か隠しているな。それにこいつ……」 

 マリアは床板をはがす部下達の作業を見つめていた。粗末な気の床は斧の一撃で砕け、まだ一分しか立っていないと言うのに兵達はスコップに得物を持ち替えていた。

「これで最後か。そして合流地点まで移動」 

 独り言を言う彼女に曹長の階級章の部下が雑嚢から取り出したポットから紅茶を取り出した。マリアはいつものように自分のベストのポーチからジャムの入った缶を取り出してたっぷりと紅茶に落した。

「しかし、何でしょうねこの機械は」 

 紅茶をマリアに渡した曹長は覆面を外して剃りあげた頭を叩きながらつぶやいた。

「ヨハンや明華が私にこの機械の意味を知らせないと言うことはそれなりに重要な、そして秘匿すべき事象の多い品物なのは確かだろうな」 

 そう言いながらマリアは紅茶をすする。人一人が入れる程度まで広げられた穴に先ほどの機械がゆっくりと納められる。

「私はてっきり米軍や胡州の特殊部隊とやりあうものだとばかり思っていたのですが……」 

 曹長の言葉ににやりと笑うマリア。

「そうだな。だが、隊長の指示はまるで違ったわけだ。それなりに丸くなったのかもしれないなあの人も」 

 再び紅茶を口に含む。機械は今度は砂をかけられて埋められていく。外を警戒していた隊員がハンドサインを曹長に送ってくる。

「所属不明の勢力。人数は12名以上。武装は未確認。どうしますか?」 

 曹長の言葉に最後の一口の紅茶を飲み終えたマリアは立ち上がった。

「我々の行動はどの勢力の目にも触れるわけには行かない。対応可能な部隊は先制攻撃をかけろ。確実に敵勢力を殲滅。以上だ」 

 マリアの前で次第に砂を被って埋もれていく機械。

「作業は後何分で終わる?」 

「あと15分と言うところでしょうか?」 

 曹長の言葉に表情を険しくするマリア。

「5分で済ませろ。それと手の空いたものは敵勢力の排除が優先事項だ」 

 マリアの言葉に板切れを抱えていた二人の兵士が小屋から駆け出していく。

「各員に告ぐ。この機材の埋設が終了と同時に第二小隊との合流地点へ向かう。できるだけ不要な装備は外していけ」 

 そう言ったマリアは愛用の狙撃銃SVDSドラグノフを手に取ると小屋を後にした。

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