季節がめぐる中で 123
『2号機積み込み完了!固定作業開始。続いて3号機!』
管制を担当するパーラの声に合わせて誠は機体を輸送機に移動させる。一歩、一歩、確実に滑り止めのついた輸送機の後部搬入口を歩く誠機。
『こけるんじゃねえぞ』
心配する要の声がしたのを聞くと誠は機体を振り返らせ、固定器具に機体を沈める。すぐに整備班員が間接部の固定作業に入る。誠はそのまま機体の上腕を持ち上げた。そこに先日誠が試験した05式広域鎮圧砲がクレーンで下ろされる。
「確かにこれは大きいですね。空中ではどうなるか分かりませんよ」
『おい、誠。そんなの抱えて空中戦をする気かよ。酔狂だねえ』
モニターの中で嫌味な笑みを浮かべる要。誠はただ黙って目の前の大きな砲身を見つめていた。
『それじゃあ一号機!』
パーラの指示がカウラ機に移ったのを確認すると誠はハッチを開けて斜めに倒れこんでいる05式乙型から飛び降りた。
「ご苦労さん!それじゃあアイシャ達のところに行くか」
そう言って要が狭い通路を歩いていく。要の機体、誠の機体。整備班員は忙しくそれぞれの機体の固定作業に集中していた。要は前部の倉庫のハッチを開く。そこには仮設の司令室が作られ、運行部の女性士官達がセッティング作業を行っていた。
「カウラちゃんも搭載完了!それじゃあ菰田君。発進準備、よろしくね」
部隊統括であるアイシャは誠達に手を振りながらパイロットの菰田に指示を出した。
「よく借りれたなP23は最新型で……三春基地に去年3機配備だっけか?東和軍も人がいいねえ」
そう言いながら低い天井に手を伸ばす要。誠は空いている席を見つけて座った。
「隊長が押さえておいてくれたのよ。そうでなければ借りれるわけなんか無いじゃない」
アイシャの言葉に納得したように頷く要。再び後部格納庫のハッチが開いてカウラが顔を出す。
「本当に大丈夫なのか?この鈍足の輸送機では制空権が取れていない状況ではただの的だぞ」
そんなカウラの言葉にアイシャは目の前のモニターのところに来いと言うように手招きした。誠と要もカウラと並んでアイシャの前のモニターを覗き見る。そこにはバルキスタンの地図が映し出されていた。
「まあ、進入ルートについてはこちらで随時検討するから良いとして……東和軍による航空制圧地域を重ねてみるわね」
アイシャはそう言うとバルキスタンの北半分を多い尽くす範囲を指定した。
「そんなことは分かってるつもりだ。東和政府のベルルカン大陸での飛行禁止措置の解除がされていないことは分かった上で言ってるんだ。相手が紳士ならこの範囲の中にいる限りこの鈍い輸送機でもピクニック気分で行けるかも知れない……けどなあ」
「まあ護衛は東和最強で知られるパイロットをよこすってちっちゃい姐御も言ってたから大丈夫なんじゃないの?」
アイシャのランを指す『ちっちゃい姐御』の言葉がつぼに入って笑い出してしまった誠に要とカウラの冷ややかな視線が降り注ぐ。アイシャも咳払いをしながら説明を再開した。
「こちらの進入空域に関しては吉田さんがいろいろとダミー情報を流してくれているからそう簡単にはばれないわよ。さらにバルキスタン政府軍のレーダーはあと5時間後にクラッキングを受けて使用不能になる予定なの。完全復旧には三日はかかるでしょうね」
「吉田の奴、ボーナスの査定時期だからって気合入れてるなあ」
そう言いながら笑う要。
『クラウゼ少佐!発進準備完了しました!』
「では発進よろし!」
アイシャの言葉が響いた後、うなる反重力エンジンの駆動音と共に軽い振動が誠達を襲った。




