季節がめぐる中で 116
いつものように実働部隊の部屋の端にあるたった一つの時代遅れの端末で備品の発注書を作成していた誠の目の前の画像が緊急呼び出しの画面に切り替わった。
「おう、それじゃあハンガーに集合!」
明石の言葉に要やカウラも黙って立ち上がる。
「なんですか?今回は」
このような呼び出しは誠は二回目だった。前回は豊川の北にある久留米沢での岩盤崩落事故の支援出動だったが、今回の明石の表情を見ればその時とはまるで違う緊張した面持ちが見て取れた。
「ぐだぐだ言ってねえで早くしろ」
要がそう言って誠を小突く。部屋を仕切るガラス窓を茜とラーナが駆け抜けていく。
「法術特捜?どう言うことですか?」
そう言ってカウラは明石の顔を見上げた。サングラス越しだが、感情を隠すと言うことが苦手な明石には明らかにこの事態を予測していたような落ち着きが見て取れた。
扉を開いて廊下に出れば、すでにハンガーには整備班員が整列して明華、ヨハン、レベッカが彼らの前で直立不動の姿勢をとっていた。管理部の隊員に続いて階段を駆け下りると、さも当然と言うようにランと高梨が整列していく隊員を眺めている。
ハンガーに整列する隊員だが、技術部はバルキスタンに派遣された島田達とマリアの直参の警備部の面々、そして島田に同行したサラをトップとするバックアップ要員がいないこともあって閑散としていた。
「遅いぞ、とっとと整列しろ」
シンが管理部の隊員に声をかける。誠達も明石の前に順番に整列した。そんな誠達の前には待機状態の大きな画像が展開していた。前回の事故の時とは指揮官達の表情はまるで違った。最後に駆けつけてきたリアナ貴下のブリッジクルーの女性隊員達も緊張した表情でアイシャを中心に整列する。
「いいかしら、リアナ」
部下を整列させ終えたリアナに明華が声をかける。そして彼女に促されるように明石が置かれていたお立ち台の上に上がった。
「一言言っておく!今回の緊急出動は戦闘を前提としたものである!各隊員においては常に緊張した状況で事態に対処してもらう必要がある。各員、気を引き締めて職務に当たってほしい」
言葉としては標準語だが、明石の関西風の独特のイントネーションが誠のつぼにはまって思わず噴出しそうになる。前に立っていた要はそれに気づいて誠の足を思い切り踏みしめた。足の痛みに涙を流しそうになる誠の前のスクリーンが起動した。
そこには誠が初めて見る保安隊隊長嵯峨惟基の緊張した表情が大きく映し出されていた。誠は嵯峨の緊張した面持ちにこれから説明されるであろう事態の深刻さを理解していた。




