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想いの行き着くさき

ようやく、最終話です。

最後まで、楽しんでいただけたらうれしいです!

今日もまた灰色の雲が空を覆っている。


なんだか最近天気の悪い日が多いなーー。


そう思い、いつもの帰路につく。

こうも天気が悪い日が続くと、気が滅入ってくる。


そういえば、この地域は他県から来るとあまりの日照時間の短さと雨やくもりの日のおおさにノイローゼになりやすいって聞いたことがあるような・・・・。




き、気をつけようーー。


そう思い、いつもよりはいくらか軽い足を動かした。

あの日、由里に相談した日から二日が経っていた。溜めていたものを吐き出したおかげか、心が少し軽かった。


それに、もう何日もなにもない日が続いている。

もしかしたら、本当にもうなにもないのかもしれないーー。


そんな、淡い期待があった。

その気持ちのまま自分の家へとりさは急いだ。




「りさー!!」



ふと聞こえたその言葉に、後ろを振り向いた。



「こ、康介先輩?」



そこには、先輩である康介がいた。走って追ってきたのか、いくらか息が上がっている。



「先輩、どうかしたんですか?」


「俺、今日部活なくて、帰ってたらりさの姿が見えたから、追ってきた・・・はぁはぁ」


「大丈夫ですか?苦しそうですけど」


「大丈夫、すぐ復活するから待って」



そう言い、うつ向いてしまった康介の回復を待ってから、二人並んで歩きだした。


あれ?でも、康介先輩の家って逆方向だよね?なんで、こっちの方角に帰ってるんだろう。友達の家でも行くのかな?




「なぁ、りさーー」


「はい、なんですか?」



首を傾げて聞くと、目をそらされる。

康介の顔が、心なしか沈んでいるように見えた。


先輩落ち込んでる?珍しい。



「なにかあったんですか?」


「え、なんで?」


「いや、だって、元気なさそうですしーー」


「ーーーー」



しばらく沈黙が続いたが、りさが辛抱強く待つと、康介は口を開いた。



「・・・・りさは、あのいつも一緒にいるあいつ。藤堂 悠のことが好きなのか?」


「え?」



私が悠のことを好き?考えたこともなかった、そんなことーー。


りさの沈黙を肯定と受け取ったのか、康介の表情がより深く暗いものへと変わった。



「そっかー。やっぱり、りさはあの男がいいんだー。俺よりも、あんな奴のことが!

・・・なぁ、なんでだよ、りさ!りさ!!」


肩を強く握られる、爪が食い込み、痛さで表情が歪む。



「い、痛っ。先輩、痛いっーー 」


「ーーーーっ。

ごめん、りさ!俺、今動揺してて」



離してそう言う康介の顔はとても青白く、こちらが心配になる程だった。



「ーーだ、大丈夫です」


「ごめん、ほんと。俺、今日行くとこあるから、先行くな・・・」


「ーーはい」



先輩、どうしたんだろう。


様子がおかしく心配ではあったが、康介が有無を言わさず去っていってしまったので、りさはどうすることも出来なかった。






「ほんと、どうしたんだろ先輩・・・」



聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟く。

しかし、それに答えるものはなく、その声は風に吹かれて消えた。






そして、りさが再び自分の家の方へ歩きだそうとした瞬間ーー。



「んっ・・・・!?」



凄い力で口をふさがれる。

酸素が不足して、その代わりにハンカチからなにか別のにおいがした。


ーーー意識が、視界がぼやけて ・・・。



遠のく意識のなかで、愛おしげに自分の名を呼ぶ声が聞こえたーーー。




++++++++++++++++++++





目を覚ますと、そこは見たことのある部屋だった。

しかし、前にきた時とどこか様子がちがっている。それは、窓に鉄格子がつけられているせいかもしれない。



「ここは・・・・。ーーー痛っ」



身動ぎをした瞬間、小さな痛みが生じた。

それは、足首につけられた鎖のせいだった。


ーーなんで、鎖が?それに、ここは・・・。



ギイーー。扉が開く音がした。






「康介、先輩・・・?」


「やぁ、りさ。ーーもう起きちゃったんだ。

もう少し、その可愛い寝顔を見てたかった んだけどな」


「ここは、康介先輩の部屋・・・」


「そうだよ。中学の時、部活の帰りにたまに遊びに来てただろ」



そう宝物の記憶を懐かしむように、康介はにっこりと笑った。




「なんでこんなこと・・・・」


「なんでって、そんなの決まっているだろ?

ーーりさに害を及ぼす虫どもからりさを守るためさ」


「害を及ぼす・・・?」


「そんなことより」



そう言って近づいてくる康介に、自然と後退ってしまう。足についた鎖がジャラジャラと不快な音を奏でた。



「ははっ」



康介はその音を聞いて、うっとりと微笑んだ。そして、鎖を手に絡めとり、小さなキスを落とす。



「ーーーっ」



それはまるで、私自身にされたことのように感じ、言い様のない寒気に襲われた。



「俺が怖い?」



声が出ずに、首を横に振る。ここで、怖いと言ってはいけない気がした。

夕焼けの橙の光が微かに射し込む、だが夜が近いのか光が失われつつあった。



「怖いくせにーー。大丈夫、優しくするから」


「えーーっ」



そう言って康介は覆い被さってきた。

康介の息が耳をくすぐる。手が体のラインを愛おしげに撫でてくるのを感じた。



「い、いやだ。離してっ、康介先輩ーーんっ!?」



口の中に康介先輩の舌が入ってくるのがわかった。歯列を丁寧になぞられて、頭が真っ白になりそうだった。



「離してーーっ!!」


「ーーつっ!」



両手で康介を突飛ばすと、りさは早足で部屋の扉に向かった。

ガシャンっーー。



「痛っーー」



痛みがする方を見る。自分の足についた鎖が、逃げようとするのを妨げていた。扉にもう一歩で届くという距離に、よりいっそう絶望的な気分になった。


私は一生ここから逃げられないのーー?



「いやだ。悠、助けてーー」


「悠ーー?あいつか」



康介は苦々しく呟いた。


「俺といる時に他の男の名前なんか呼ぶなよ。お前は俺のものなんだから」



そう言って抱きしめてくる康介が怖い。

まるで、知らない男の人みたいだった。



「離して!!」



先ほどよりも強い力で振りほどく。

康介は少しよろめいただけだったが、その表情は昏く険しいものとなっていた。



「なぁ、自分の立場わかってる?お前はいつなにされるかわかんない状況なんだよ?

ーー例えば、こんなふうにさぁ!!」


「えっーー」



強い力で押し倒され、床にしたたかに体を打ち付ける。

体に康介の重みが重なって、首を暖かいものが包だ。


ーーーっ?


そう思った時にはもう息が出来なかった。

康介の指が自分の首を絞めている。



「ーーっ」



薄暗い室内で、自分の浅い息だけが響いていた。

声も出せず、浅くなっていく呼吸をまるで他人事のように感じている自分がいた。


変なの、自分のことなのにーー。






意識が遠のきかけたその時、今までの圧迫感がとうとつに無くなった。



「ーーっごほ、ごほ!!」



急に酸素が体内に入ってきて、激しく咳き込んでいると抱き締められる感覚がした。





「ごめん!りさ、ごめん!!

ーー苦しかったよな、俺、俺・・・。りさがいないと生きていけないのに。ほんとにごめん、ごめん・・・」



先輩、泣いてる。なんでーー?

酷いことをされてるのは、私の筈なのに。

どうして先輩がないてるのーー?



耳元で泣いて謝る声が聞こえる。




「・・・・っ。く、クククっ」



先輩の泣いている声がいつの間にか笑い声に変わっていた。



「でも、これでやっとりさは俺のものになった。こんなに喜ばしいことはないよね?」


「・・・・っ」



その笑顔にぞっとした。

狂っている、そう感じたーー。



「・・・あの鬱陶しい、藤堂 悠もいなくなったことだしな」


「ーーーえ?」



康介がボソッと呟いた言葉に疑問符を浮かべる。


今なんて言ったーー?

悠がいなくなった・・・・?



「一体、どういう・・・?」


「あぁ、りさは気づいてなかったんだった

な」



そう言って、康介は愛おしげにりさの頬を撫でてきた。



「今までりさをストーカーしてたのは俺だったんだよ。あいつ、悠はその邪魔をしてたんだ」


「なん、てーーー?」



今、なんてーーー?

ストーカーしてたのは康介先輩で、悠はその邪魔をしてた?

てことは、悠は私を守ってたってこと?



「・・・じゃ、じゃああのクローバーの葉は?」



そうだ、だって悠の靴にはあの公園のクローバーの葉がついてた。



「クローバーの葉?

ーーあぁ、確かあの公園にあったかもな。

本当はあの日、りさを連れていくはずだったんだぜ?

それを、あいつが邪魔しやがったから」



康介は、拳を握り締め悔しそうな表情をした。

しばらくそうした後、拳をゆるめ、りさの髪をすかしてきた。

その表情は酷く優しい。



「けど、こうして今りさは俺の手の中にいる。それだけで、充分だーー」


まるで、長い長い旅をしてきた旅人がようやく落ち着ける場所を見つけたといった様子だ。



「ーー今、悠は?

悠はどこにいるの?」



他の男の名前が出てくることに苛々しながらも、康介は無表情な顔で言った。



「あいつは死んだよ。

ーーー俺が、殺した。最後まで、俺のりさの名前を呼んでやがったから。ムカついて、殺してやった」


「・・・・・・・・」


「あ、でも安心して?

俺が殺したってことはわからないようにしといたから。だから、俺とりさはずっと一緒だよ」



悠が死んだ・・・?私のせいで?

悠はずっと私を守ってくれてたのに。

私は、私は悠を疑ってた!

ごめん、ごめん、ごめん悠!!ごめんね。



「ーーーーっ」


「りさ、泣いてるのーー?」



頬を伝う液体が、とても冷たい。

心が痛い。まるで、心臓が小さく縮んでしまったみたいだ。



「りさ、寂しいんだよな?

大丈夫、これからは俺がずっとそばにいてやるから。ずっと、ずっと、死んでもりさのそばに俺はいてやるからーー」



その言葉は、まるで呪いの言葉のようだった。

大事な大事な幼なじみを疑ってしまった自分への罰だ。



「でも、逃げようなんて思うなよ?

ーーもし、逃げたりなんてしたら、りさの周りのやつ全員殺すから」



ヒヤリとした、冷たい声音だった。

私が逃げようとすれば、この人は必ず実行するだろう。そう感じるほどに、冷たい表情だった。


その言葉は鎖だ。私の心を体をこの部屋へと閉じ込める。





「愛しているよ、りさ」



先程の冷たさを感じさせない甘い声で言って、康介はりさを抱き締めた。



たぶん、私はこの人から逃げられない。

そう感じて、最後に一滴涙が伝っていった。



暗闇となった部屋に二人の影だけが動いていた。






++++++++++++++++++++




ごめん、最後まで守ってあげられなくて。

いつも、もらってばかりで、結局なにも返せなかった。


水の底に沈んでいくなかで、幼いころの記憶が浮かんだ。




ーーーすっごーい!!難しい本読んでるんだっ。なんか格好い い



ーーー私に出来ることがあるなら、なんでも言って。私はいつ でも傍にいるから



幼い少女のこれらの言葉がどれだけ自分の支えになったことか。

彼女は知らないだろうなーー。



執着して、自分だけのものにしてしまいたいと思ったこともあった。

でも、彼女が悲しむ姿は見たくなかったから・・・。

彼女には笑顔でいてほしかった。




たとえ、彼女の未来に自分がいないのだとしても、彼女には幸せでいてほしかった。




だから、だから、ごめんーーー。

最後まで、守りとおせなくてごめんーーーっ。



沈んでいく意識のなかで、最後に彼女の笑顔が見えた気がした。



最後まで、読んでくださりありがとうございました!


な、長かった・・・。

まぁ、更新が遅かっただけなんですけどね(笑)

って、(笑)じゃないですね。


こんな亀更新に付き合って下さった皆さまには本当に感謝しています!

本当に、読んでくださる皆さまがいなければ最後まで書けなかったと思います。ガチな話。


最初はアップテンポでわりと明るめに始まった話ですが、次第に暗い話になってしまい・・・。

それが果たして読む側の立場的にどう映ったのかだけが心配ですが。

よろしければ、感想書いてくれたら嬉しくて踊りだすかもです(笑)



最後に、長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださった方

ありがとうございました!!!

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