第10話 お呼びでない店員になれ
ピッ
”出勤 十六時四十四分”
通用口の端末が皐月のカードに短く鳴ると、肩ごしに伸びてきたもう一枚のカードが同じ音を鳴らす。
「さっちゃん、おはよー」
栗原 美羽は皐月とは別の高校の二年生で、月・水・金の夕方はいつも皐月と同じシフトになる。丸い顔の口の端から八重歯が一本のぞいていて、しゃべる前からもう笑っている。
皐月がきちんと頭を下げて「おはようございます」と返すと、栗原は「かたっ」と言ってまた笑う。
更衣室で皐月は仁科主任の言葉を書きとめた四つ折りのメモを制服のポケットに入れる。
隣のロッカーで栗原は明日のハロウィンの仮装の話を一人で続けていて、皐月は「はい」と「へえ」を交互に返している。
*
事務所。
机に向かう高坂の背中は振り向かない。
ホワイトボードの下に吊るした連絡ノートを栗原が先に開く。新しいページに店長の字が一行だけ書いてある。
”お客様が帰り支度をされたら、見た人が客席から「ありがとうございます」。「レジお願いします」は今日から使わない。理由:店長が、報告書を書きたくないので。以上 高坂”
栗原は指でなぞっていき、最後のところで吹き出す。
「小学生の日記じゃん。……え、待って私めっちゃ言ってた。水曜も言ってた」
くっくっと肩を揺らしながら机の背中に本気ですかーと聞くと、背中は振り向かずに「本気だ」とだけ返す。栗原はまた吹き出して、署名の欄に丸っこい字で”栗原”と書き、ペンを皐月に渡す。
皐月は笑わない。
目が”見た人が”のところで止まってそこから先へ進まない。
水曜の夜、紺のジャケットの背中が入口のほうへ遠ざかっていくのを見ていたのは皐月だった。
栗原の丸い字の下に皐月は”真田”と書く。ペンを握る指の関節が白くなっていて、ペン先が紙に食いこみ、次のページにまで跡が付く。
栗原が手を振って出ていくと、壁の時計の長い針がちょうど十二を指す。
「皐月」
高坂が椅子を回して立ち上がり、事務所のドアを自分で閉める。
「水曜の事を見たとおりに話してくれ。報告書と食い違いがないか見るだけだ。五分で終わる」
五分で終わらせたいのはもちろん高坂のほうである。
高坂は報告書の写しを引き寄せてペンを持ち、皐月は立ったまま両手をおへその前で組んで話し始める。
三十一卓は男の人の二人連れだった。白髪まじりで銀縁の眼鏡の人がずっとしゃべっていて先に帰った。短く刈り上げて紺のジャケットを着た人は顎の左に古い白い傷があって、ずっとスマホを見ていた。二十一時過ぎにその人が鞄を肩にかけて入口のほうへ歩いていくのを、皐月は通路の角でトレーを持って見ていた。
「声は出しませんでした。誰かがレジに出ると思ったので」
高坂の「うん」が少しだけ遅れる。
「私が三十一卓を片付けました」
筒に伝票がなかったので払って帰ったのだと思い、私が全部下げて拭いた。皐月の話はそれで終わり、「でも」も「だって」も付かない。組んだ手の親指の爪が人差し指の横に食いこんでいる。
時刻も卓も二人連れも、報告書と一つも食い違わない。
ただ、報告書にはどこにも人の名前がないのに皐月の話は一文ごとに頭に「私」が付いている。私が見て、私が黙って、私が拭いた。
――私が、か。お前が埋める穴ちゃうねん。俺の穴や
高坂はペンを置く。この子に「次」しか返した事がない店長で、慰める言葉を一つも持っていない。
「報告書の原因の欄な。誰の名前も書いてない」
「でも、私が……」
皐月の頭が下がりかけて下がりきらない。
「食い違いは無い。以上だ」
皐月は頭を下げる。戻した顔は眉のあいだに力が入って、目は瞬きを忘れた様に一点から動かず、口の両端がきゅっと下に引かれている。水曜の夜から皐月の顔はずっとこの形で固まっていて、店の誰が見ても固い顔である。
「ありがとう。聞きたい事はそれだけだ。次はロールプレイ」
*
十七時五分、休憩室。
六人がけのテーブルに業務用のタブレットが一枚あって、冷蔵庫がうなっている。
高坂はテーブルの端に座って足を組み、俺は細かいお客様だとだけ言って「始め」をかける。
皐月は棚から小皿を一枚取ってトレーの代わりに手のひらに乗せる。
「失礼致します。お待たせ致しました。ライス小盛りでございます。……お料理はお揃いでしょうか?」
「揃ってるかどうかは食べてみないとわからないよね。あと、これ小盛り? 普通じゃない? 君、何グラムか知ってる?」
――素でもネチ坂のくせに役になったら倍じゃない
皐月は口角だけ義務的に上げて「ごゆっくりどうぞ」まで言いきる。
タブレットのご説明でも、君じゃなきゃ嫌だと絡み続けるお客様を皐月は「近くにいる者が伺います」でかわす。
高坂は「ふうん」の顔のまま腰を浮かせて尻のポケットに手を回す。
財布の角が見えた時には皐月の膝はもう伸びている。
「ありがとうございます!!」
皐月の声が休憩室の壁と冷蔵庫の扉と電子レンジの窓に当たって三回くらい跳ね返る。
高坂の手の中で財布が開いている。中から出てきたのはくしゃくしゃのクーポン券である。
「……これ使えるかって聞こうとしたんだけど」
皐月の手のひらの上で小皿が小さくかたかた鳴っている。皐月はそれに気づかない。
高坂は財布を閉じて組んでいた足をほどく。お客様の顔がそこで引っこむ。
「俺はまだ座ってる」
財布は帰り支度じゃない。上着、鞄、伝票。立つのを見てから。高坂は一つずつ区切って直していく。
「それと、言う前に顔を見ろ」
高坂が直したのはそれで全部で、声が大きい事には何も言わない。
最後のお見送りで休憩室のドアを自動ドアの代わりにして出ていくお客様に、皐月が頭を下げる。
「ありがとうございます。またお越しくださいませ」
「また来るかどうかは今日の料理次第だよね」
皐月は営業スマイルのままフリーズした。
ドアから戻って来た高坂に皐月は一歩詰め寄る。
「店長。最後に食い逃げのお客様もやってください」
「やらない」
高坂が断っても皐月は引かない。
「一回だけでいいです。今度は絶対声を出します」
「次」
高坂はタブレットを脇に抱えて休憩室を出ていく。
「……次ってもう項目ないじゃないですか」
ドアは返事をしないで閉まる。
*
十七時四十五分、入口。
仁科 亘が案内の台の横でいつもの軽い顔で手を振っている。
「主任、おはようございます」
「かたいね~。水曜からずっとその顔?」
答えを待たずに、仁科が歩き出す。
客席から声は一つも飛んでいない。それなのに仁科の足はもうレジのほうを向いていて、皐月が三歩遅れて追いかける間に仁科はレジの内側に立っている。
客席の奥から午後のフロントの米倉 理恵の「ありがとうございます」が届き、仁科は「ありがとうございま~す」と返す。返した時にはもう着いていて、伝票を持って来た年配の夫婦は少しも待たない。
皐月は歩き出す前の仁科の目を思い出す。夫婦の顔では無く、奥さんの手を見ていた。卓の端の筒から伝票を抜くその指を。
皐月はメモを出して”顔より先に見るとこ→?”の「?」の上から小さく書く。
”手元”
トレーを持って通りかかった小山田 梨沙に、仁科が三十五卓は皐月ちゃんの検定だと伝えると、小山田は目を糸にして笑い、奥へ歩いていく。仁科は皐月のほうへ向き直る。
「教官、十七時半からお待ちかねだよ~。行っといで」
*
十七時五十分、三十五卓。
客席Bの奥、パントリーの出入り口のすぐ横の二人席に角田がジャンパーを着たまま座っている。四十年、教習車の助手席に座ってきた元教官である。胸のポケットにボールペンが一本、卓の上にはお冷のコップが一つだけで、何も頼まずに二十分生徒を待っている。
皐月は卓の手前の角でいったん止まる。曲がり角では止まって一つ数えろと先週角田に教わった。
『一』
「失礼致します。本日はこちらのタブレットで――」
角田の手のひらが皐月の前に立つ。待て、の手である。
太い人差し指がゆっくり降りて来て画面に腹から着く。ぽん、和風ハンバーグ。ぽん、皿。ぽん、ライス小盛り。ぽん、ドリンクバー。一度も押し直さないで注文の確定まで行く。先週は押しても画面が知らん顔をしていた指である。
押し終えた指が画面の隅へ流れていって”店員を呼ぶ”の真上で止まる。皐月は息を止める。
指は暫く浮いてすっと卓の上に戻る。
「今日は本免だ。わしはこれは押さん。一時間黙って見とる」
皐月は卓の上に戻った人差し指を見ている。先週はあの指が一本立つたびに『よし』が一つ出た。
――今日は全部立たせてやる
*
十八時、客席B。
小山田が三十四卓の皿を重ねて下げていく後ろで、皐月が卓を拭いて紙ナプキンを足す。
三十二卓は女の人の二人連れである。一人がリップをポーチにしまい、ポーチを鞄にしまう。もう一人がコートに手を伸ばして筒から伝票を抜く。
それから顔を見る。二人とももう半分立ち上がっている。
「ありがとうございます」
声が客席を渡っていくと、入口のほうで仁科の足が先に動いているのが見える。
――当たった
三十一卓、水曜と同じ卓に今夜は作業着の男の人が二人で座っている。
二人の椅子が同時に鳴った時皐月の息が止まる。トレーの縁を持つ指に力が入って膝が一瞬だけ凍り付く。
手元を見る。伝票は抜かれている。顔を見る。入口のほうを向いている。
「ありがとうございます」
少し早すぎて少し大きすぎる声である。それでも仁科の足は動いてこれも当たる。皐月は二人の背中が自動ドアの外へ出るまで見送ってからようやく息を吐く。
皐月は三十五卓のほうを振り向く。
角田の右の人差し指が半分立ちかけている。そこへ左の手がかぶさって指を卓に押さえつける。
――ようやった。……いかん、検定中だ
左手の下で右の指はまだ立とうとしている。
皐月にはかぶさった左手しか見えない。
――押さえた。まだよしじゃない
*
十八時五分。
配膳ロボットのニゴーが三十五卓に和風ハンバーグを運んで帰って来ると、デシャップ台の高坂が皐月のトレーにライス小盛りを一皿載せる。
「三十五卓、最後の一皿」
皐月は三十五卓の手前の角で止まる。
『一』
「失礼致します。お待たせ致しました。ライス小盛りでございます。お料理はお揃いでしょうか?」
角田はハンバーグとライスの皿を一つずつ見て深く一度うなずく。右の人差し指が上がりかけて左手の下に消える。
――なんでよ
皐月は「ごゆっくりどうぞ」と頭を下げて、下げた頭の中で奥歯を噛む。
*
十八時四十五分。
角田は最後の一口を食べ終えると箸をそろえて皿の縁に置く。車を枠の中にまっすぐ停める様な置き方である。両手を膝に置いてタブレットは見もしない。
三十六卓を拭いていた皐月はそろった箸を見る。手元。
「失礼致します。こちらをお下げしてもよろしいでしょうか」
角田がうなずくのを見てから皿を重ねる皐月の手の横で、膝から卓の上に戻った角田の左手が右手を上からしっかり押さえている。今夜一番強い押さえ方である。
――まだ?
角田はドリンクバーでコーヒーを淹れて戻って来る。カップの縁のすぐ下まで入っていて、歩いても面が揺れない。
皐月はカップの面を見ている。顔は見ていない。
*
十八時五十五分。
「テンチョー、ちょっと」
キッチンの奥から馬場ルーカスがソースの鍋の前で手を振って、高坂はデシャップ台を離れてキッチンへ入る。一分で済む用である。
皐月はドリンクバーの前の空いた三十三卓を拭いている。
その目の端で三十五卓の右手がカップを離れる。
手は卓の端の筒へ伸びて指が伝票をつまんで抜く。
筒が空になる。
紺の背中と誰もいないレジと水曜の空の筒が一度に戻って来る。
――帰る
顔は見ない。「一」も数えない。膝が伸びるより先に声が出る。
「ありがとうございます!」
声が客席Bを渡ってパントリーの横の壁に当たる。
誰もありがとうございます、を返さない。
パントリーの出入り口からは誰も出て来なくて、仁科の「いらっしゃいませ~」はずっと遠い入口で鳴っている。三十四卓の女の人がスマホから顔を上げてまた下ろす。
皐月の声だけが客席の真ん中にぽつんと残っている。
三十五卓で伝票をつまんだ角田の手が宙で止まっている。
卓の上では縁まで淹れたコーヒーがまだ湯気を立てている。
角田は椅子を卓のほうへぐいと引き寄せて腰を据える。伝票を裏返して卓に置き、胸のポケットからボールペンを抜いてかちりと鳴らす。
「……わしはまだ飲んどる」
カップに向かって低く言う。
皐月の手の中でダスターが止まる。
耳の後ろから首まで一度に冷たくなる。
皐月は顔を上げて初めて角田の顔を正面から見る。角田もペンを持ったまま皐月の顔を見ている。
角田はこの顔を知っている。四十年、教習車の助手席から見てきた顔。
暫くして角田は伝票の裏に目を落とす。ペンが動く。
*
十九時十分。
角田はコーヒーを最後の一滴まで飲んでジャンパーの前を上まで閉め、伝票を持って立ち上がる。
皐月の口が開いて閉じる。声が出ない。
レジの内側の仁科が伝票を受け取り、裏の字に目を一度だけ落として何も言わずにレジの横によけて置く。千五百五十一円を角田は指の腹で一枚ずつ受け皿に置いていく。
それから、レジの横の皐月に独り言の様に言う。
「来週の金曜、また来る」
「……ありがとうございます。またお越しくださいませ」
自動ドアが開いて、角田は国道の暗がりへ出ていく。
皐月は閉まったガラスに映った自分の顔を見る。
後ろのレジで、仁科は皐月の後ろ姿をみていた。
*
二十時半、事務所。
発注の為にレジの裏を通った高坂に、仁科が指の先に挟んだ伝票を一枚差し出す。
「三十五卓の教官の~。たぶん店長あてかな~って」
高坂はそれを持って事務所に入り、ドアを閉める。客席の音が一枚向こうへ遠のく。
十七時に皐月を立たせて話を聞いた机である。高坂は椅子に座って伝票を裏返す。ボールペンの大きな字が一行ずつ短く並んでいる。
”検定 研修中”
”角の停止 よし”
”合図の読み よし”
”呼ばずに来た よし”
”十八時五十五分 一時不停止”
”顔”
”補習 十一月六日”
よしが三つ並んでいる。教官の字は一つ書くたびに大きくなっていて、三つ目のよしは紙の端からはみ出しそうである。高坂の口の端が少しゆるむ。
ゆるんだ口の端が、次の行で止まる。
十八時五十五分は、ルーカスに呼ばれて、一分で済むと思ってデシャップ台を離れた頃である。その一分に客席で何があったのか高坂は知らない。
”顔”の行だけ字が詰まっている。はじめに”怖い”と書いて線を一本引き、横に書き直してある。
”怖がっとる”
高坂の指が伝票の端で止まる。
十七時の皐月の顔が机の向こうに戻って来る。眉のあいだに入った力、瞬きを忘れた目、きゅっと下に引かれた口の両端。手を伸ばせば届く所でその顔を見ていて、高坂は固い顔だとしか思わなかった。
――怖がっとる、か。俺は原因の欄の話しかしてへん
水曜の事を何も知らないお客様が、一時間座っていただけでそれを一行で書いている。
『誰かがレジに出ると思ったので』
あの子がそう思って黙った水曜の夜、その誰かであるはずの店長はパチンコ屋にいた。今夜の十八時五十五分には鍋の中のソースを見ていた。
――二回とも、俺はおらんかった
高坂は伝票を二つに折ってシャツの胸のポケットに入れる。慰める言葉は今も一つも持っていない。
デシャップ台に戻ると、パントリーの出入り口の先に中央通路が細く見えている。皐月がダスターを握りしめ三十六卓のほうをじっと見ている。眉のあいだの力はまだ抜けていない。
高坂は台の前に立ったままその顔から目を離さない。胸のポケットで折った伝票がかさりと鳴る。
*
二十一時、客席B。
十八時五十五分から皐月の声は喉の手前で止まる。角田の帰りぎわにも出なかった。
三十六卓でスーツの男の人が椅子の背から上着を取る。
手元を見る。袖に腕を通してその手で筒から伝票を抜く。顔を見る。一も数える。
皐月は口を開ける。開きかけたところへ誰も返さなかった声と、ぽつんと残った自分の声がフラッシュバックする。
「ありが……」
隣の卓にも届かない程の声で、その声も喉の奥へ戻っていく。
「ありがとうございます」
パントリーの出入り口から聞いた事のない、凛として涼やかな声が皐月の体を通って客席をつつむ。
振り向くと出入り口に白いシャツが立っている。
いつも半分閉じている目が開いている。その目は上着を着た男の人のほうを向いていない。
皐月をまっすぐに見ている。
皐月は言いかけた口の形のまま動けない。皐月の知っている店長の声は眠そうで語尾が下がって、「次」としか言わない声である。
胸の真ん中だけが熱くなっていく。
三十六卓の男の人が出入り口と皐月を一度ずつ見比べてから、皐月に軽く会釈をしてレジのほうへ歩いていく。
高坂がパントリーの出入り口を出て皐月のすぐ横を通りすぎる。仁科が一歩よけてレジの内側に高坂が立つ。
「ありがとうございます。お会計、千三百八十六円でございます」
レジから聞こえて来るのは、もういつもの声である。
皐月の口はまだ少し開いていた。
*
二十一時四十五分、女子の更衣室。
皐月はまだ制服のままロッカーの扉の内側の小さな鏡の前に立って、両手の人差し指で口の両端を持ち上げる。
鏡の中で口の端だけが上がる。眉のあいだは固いまま、目は瞬きをしないまま。さっきより怖い。
指の力を少しゆるめて、小さな声で「……ありがとうございます」と言ってみる。
ドアが開く。
「さっちゃん、お疲れ――」
栗原が入口で止まり、皐月は指を口の端に掛けたまま止まる。
「え、何それ明日の? 口裂け女? ゾンビ? めっちゃ怖いんだけど。さっちゃん、本気じゃん!」
栗原は紙袋から猫の耳のカチューシャを出して見せる。
「私これだけだよ? 負けたー」
皐月は指を口から離さない。
「……来週までに直します」
「来週? ハロウィン、明日だよ?」
皐月は答えずに、指でもう一度口の端を持ち上げる。
耳の奥でさっきの声がもう一度聞こえる。
鏡の中で眉のあいだの力が少しだけゆるむ。指はまだ口の端に掛かっている。
――ふふ、びっくりした
本日の売上 計画 455,000円/実績 440,303円(計画比96.8%)
本日の客数 計画 302人/実績 290人(計画比96.0%)
本日の客単価 計画 1,507円/実績 1,518円
今月の累計 売上 前年比98.1%/客数 前年比94.9%




