第10話:ガラスの法廷と、届かない声
慧太郎が連れていかれてから、私の周りの世界だけが、まるで音を失ったみたいに静まり返っていた。
学校に行っても、家にいても、次から次へと大人がやってくる。
警察の人、児童相談所の人、それから学校の偉い先生たち。みんな私を別室に連れ出して、同じような質問を繰り返した。
「ゆらりさん、本当に彼に脅されたりしていませんか?」
「嫌だと言えなかったわけではないですね? 全部話してください」
違う、そうじゃない。何回そう叫んでも、大人の人たちは私の目をまっすぐ見つめるだけで、誰も私の言葉を本当の意味で聞いてくれなかった。
「それは心の防衛反応だよ」「未成年を狙った悪質な手口に巻き込まれたんだよ」
彼らは最初から答えを決めていて、私が言うことはすべて「大人の男に洗脳された子供の言い訳」にされてしまう。
裁判が始まっても、私は法廷の中に入ることを許されなかった。
子どもだから、被害者だからという理由で、私の意思は徹底的に排除された。私がどんなにあの人との日々が本物だったと訴えたくても、法律という冷たい壁の前では、私の気持ちなんて存在しないものにされてしまった。
そして、下された判決は——実刑判決。
ニュースの画面でその重い事実を知ったとき、頭の中が真っ白になって、呼吸の仕方が分からなくなった。
私たちが過ごしたあの甘い時間も、あの部屋の空気も、すべて「犯罪の証拠」として処理され、彼は遠くへ引き離されてしまった。
私の世界から、慧太郎が完全に消去された瞬間だった。




