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5、新しい出会い②

すみません

昨日、寝落ちしてしまい、投稿が少し遅れてしまいました……


それでは、お楽しみを〜

 翌朝起きると、まだ夢の中だった。

ついに狂ったかと思われるかもしれないが、実際にそうなのだ。

昨日、確かに馬車で寝たから、地面の上で起きてしかるべきなのだが、なぜかベッドの上で目覚めてしまった。

俺には何一つとして困ることは無いのだが、不気味で仕方がない。

未成年だから酔っ払っていたわけでもないし、まさか寝ている間に死んで地獄や天国にいるわけでもないし、神隠しだったとしてもご丁寧にベッドの上に連れて行かれるわけもないだろう。


「神か、悪魔か、狐か……」

「わたしは、人間だよっ!」

「そっか、人間か……」


 確かに、人間の仕業と考えるのが最も合理的だ。

でも俺は、大貴族の息子でも、有名人でも、可愛い女の子でもないから、恩を売る意味が無い。むしろ、どこの馬の骨かも分からない奴を家に上げて、もし俺が連続殺人犯だったら、どうするつもりだ。


「まだ寝ぼけてるのかい。さあ、起きた、起きた。もう六時だよ」

「あの……ここは?」

「あんたが寝てたとこの宿だよ。お客を乗せる馬車に行き倒れが死んでいたら、使えないだろ。ほら、冒険者なんだろ。さあ、稼ぎに行った、行った」


 宿、つまり有料なのか……。


「悪質な客引き宿?」

「そんなのと一緒にしないでおくれ!」

「その……いくらですか?」

「一日二食付きで、一日千五百ピロだよ。宿代の滞納は一週間まで。それを過ぎたら、追い出すからね!」


 この千五百ピロがどれくらいの額なのか分からないから、いかんとも言い難いが、狭くて机と椅子とベッドしかないし、色の落ちた壁、浮浪者に貸したことから考えると、きっと安宿の最低ランクの部屋だろう。

まったく、俺が冒険者だと見抜いて、宿に泊まらせるなんて、商魂たくましいことこの上ない。

しかし、念の為、そのピロが円換算でいくらか知っておきたい。


「少し、出てきます」

「ああ、とっとと稼いできておくれ」




 手持ちが心許ないが、行かなければならないところがある。この国の金銭感覚を知るために、昨日チラッと見えた商店街に行くのだ。

さすがに、ただでさえ財布の中身が寂しいから、ぼったくられると堪ったもんじゃない。

絶対に無駄な支出をしないと、心に誓ってから、商店街の入口を表すアーチをくぐった。

ギュルルゥゥ

昨日の昼から何も食べてないから、お腹が文句を言っている。俺の体が、早く飯を食え、とストライキ寸前の最終勧告を行っている。


「お兄さん、リンコ゚一つどうだい?」

「じゃあ、頂きます」


 食べ方を訊いたところ、新鮮で洗ってあるからそのままいけるとのことだ。

見た目はりんごそのものだが、食感はどうだろうか……歯を入れると、サクッという心地良い音ともに、甘酸っぱい果汁が口中に流れ込んでくる。

うん、結構いける。

漫画でしか見たことのない、りんごの食べ跡になって、一個で満足だ。おまけで付けてもらった、もう一つは夕食用に取っておこう。

そういえば、このりんごもどきのリンゴは一つ五十ピロ。まあ、これは地球と似たような値段。


「ボア肉、大特価でグラム二百ピロだよ!」


 確か、先週のバーゲンのとき、近所のスーパーの牛肉がグラム百五十円だったから、ボア肉、おそらく猪肉は、ちょっと高級な黒豚くらいだろう。


「デーコン、今日はデーコンがおいしいよぉ!」


 デーコン。うーん、大根のことだろうか。

まあ、見た目は同じだが、仮に大根そのものだとしても、生で食うのはちょっとキツい。

値段は百二十ピロ、ボア肉と比べるとちょっと高いが、旬と外れているなら妥当かもしれない。


「ドワーティス王国の剣、ドワーティス王国の剣が一振り百万ピロ、百万ピロ! これを逃すと、入荷は来年だよ!」


 剣の値段は分からん。

買おうと思ったこともないし、中学の修学旅行の時も別に木刀を買って帰ろうとは思わなかった。まあ、買う時にはもっと安いものを買おう。


「エルフ、エルフだよ! 眉目秀麗、それに読み書きもできるときた。こんな上物、買わなきゃ損、損!」

エルフ、エルフか。なんとも異世界らしい響きだ。


 ……あれ、エルフって売り買いするものだっけ?

声が聞こえた方向に振り向くと、荷台が檻の馬車があった。そして、その中に人、いや耳が長いところを見ると、おそらくエルフがいた。

そういうことか。まあ、異世界だ。俺がとやかく言うことではないが、見ていて気持ちの良いものではない。

ちなみに、値段は……『千万ピロから』と書かれている。

高級車一台くらいか、と物と比較して考える自分に嫌気が差す。


「すみません、他の奴隷はいますか?」

「他が欲しいなら、奴隷商館に言ってくれ。さあ、どいた、どいた。いらっしゃいませ、どれがお気に召しましたか? おっ、お目が高い。それを選びますか、特別に二千でいかがですか? えっ、高い? じゃあ、千八百。いや千七百でどうですか!」


 高そうな服を着た恰幅の良いおじさんの相手を始めてしまった。

まあ、ボロボロの服を着てる俺より、金を出しそうだから、致し方ない。しかし、商館の場所くらいは訊いておきたかった。

さすがに、この広い街の中で探し出すのは大変そうだし、人に奴隷商館の位置を訊くのも気が引ける。

まあ、そういう目的のためにも、とりあえず稼がなくてはならない。

ある程度の持ち金ならあるが、あまり手を付けたくない。ここは異世界だから、何が起こるか分からない。




 デトック草とリヴァイン草が生息している草原へと向かった。

ギルドの受付嬢に聞いた通り、街の東門から出ると、若草色の草原が一面に広がっている。その右奥には深緑色の森が、左奥には街道が続いている。その奥には、白い帽子を被った山々が連なっている。


「さあ、やるか」


 草はそこら辺に生えているが、高いのから低いの、緑色のから黄緑色の、丸い葉からギザギザの葉、花を付けているのから付いていないの、花が紅色のから藍色の、色々ありすぎてよく分からない。

誰かが悪意を持って仕組んだとしか思えないほど、雑多だ。

しかし、

『薬草鑑定(A)』

そう。俺にはこれがある。薬草にしか使えないものだが、逆にそれが良い。

薬草以外にも反応して全てを鑑定したら、情報量が多くてカオスになってしまう。それでも、情報量が多いことは否めないが。普通の『鑑定』よりかはマシだろう。


「デトック草とリヴァイン草。デトック草とリヴァイン草」


 呟いていないと別の薬草を取ってしまう。

『トーキシック草』とか、『インヴァイン草』とか、『ヴィゴルの実』とか。

野菜と果物の名前は同じだったのに、薬草の名前だけ違うのは完全に悪意を感じる。

『薬草鑑定(A)』で、名前以外の薬草の詳細を見るには、手を近付けて、再度使用する必要がある。

紫色の薬草に手を近付けながら、『薬草鑑定(A)』と唱えた。

『トーキシック草:猛毒の薬草。触れるだけで、皮膚がただれる。……一昔前は、拷問に使っていたとか』

みたいな内容が、俺の目の前に表示された。


「……うおっ!?」


 慌てて、手を引っ込める。


(危ねぇー)


 この世界の薬草は、完全に無知なやつを殺しに来ているではないか。

まさに、触らぬ神に祟りなしだ。

しかし、俺は目的のために。その神とやらに触らなくてはならない。


(『薬草鑑定(A)』さん、お願いします!)


 この毒草のことは、一旦忘れよう。こんなん取って帰ったら、殺人未遂かなんかで即騎士団行きだ。

えーと、『インヴァイン草』は……【精神耐性ポーション】の材料か。冒険者カードを発行する時の針を指に刺す時に使えそうだ。

あとは、『ヴィゴルの実』。薬草と言っているが、薬やポーションになるものだったら何でも良いらしい。で、これは……成長速度増加。

成長速度はスキルのランクと能力の上昇に、経験値効率はレベルの上昇に関連している。

つまり、持っているスキルのランクがAの俺には、成長速度よりも、ただでさえ低いステータスを早く上げるために、経験値効率関連の薬草の方が格段にありがたい。

まあ、使っていて損はないので、ありがたく【成長速度倍化ポーション】にしよう。


他にあった薬草は、胃薬だとか、睡眠薬とか、風邪薬とかの材料だった。

ポーションにはちゃんと消費期限があるらしいので、必要になった時に作ろう。そうならないことを祈っているが。異世界に来てまで、風邪を引きたくはない。

ちょうどお腹が昼飯の催促をし始めた頃に、依頼分の薬草を集め終えた。




 昼飯を食べに来た冒険者でごった返す商店街を抜けて、やっとの思いで、屋台から漂う匂いに負けずに冒険者ギルドに辿り着いた。

この時が、さっき採取したインヴァイン草で作った【精神耐性ポーション】を使う好機だったように思う。

まあ、腹の虫を抑えるためなんかに使われるポーションが可愛そうではあるが。


「はい。確かに、デトック草とリヴァイン草を十本ずつ受け取りました。新しい依頼をお受けになりますか?」

「では、これをお願いします」


 今達成したばかりの依頼と同じ、『デトック草とリヴァイン草を十本ずつ採取』というやつだ。Fランクの俺が受けられるEランクまでの依頼の中では、最も難易度が低くて報酬が良い。つまり、タイパが良い。

とは言え、一回あたり三千ピロぽっちだと、一日一個受けるだけじゃ年収百万ピロくらいにしかならない。

農家でもない俺が、この程度の年収で暮らしていけるほど、異世界は甘くないだろう。

魔物と遭遇するかもしれないのに、いつまでもこの薄っぺらい服一枚でいるわけにもいかないから、装備を買う金も欲しい。

さすがに、最もタイパが良いとは言え、非戦闘職でかつ、ステータスも低い俺一人で魔物討伐をしに行くのは無謀にも程がある。

一回試してはみたが、他の冒険者パーティーに入ることはできなかった。彼ら曰く、結界師やヒーラーなら大歓迎だが、ポーションしか作れない調合師なんて荷物なだけらしい。

ワイワイと騒いでいる冒険者たちから目を逸らすと、ギルド内を吹き抜ける風に煽られて、画鋲一つで危うげに止まっているチラシが目に映った。

パタパタと今にも飛んでいきそうなチラシの『奴隷商会、只今……』という文言が目に焼き付いた。


 (そっか、奴隷か)


 剥がれかけけながらも風にたなびき、俺に手を振っているチラシの手を取り、冒険者ギルドから飛び出た。

冒険者にぶつかりそうになったが、ギリギリで避けられた。何か言っているが、口喧嘩をするなら、また今度だ。

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