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23、ダンジョン探索(水)

 フィーのイライラで火のダンジョンを攻略し終えた。ボスのファイアードラゴンは、ちょっと大きなトカゲみたいな見た目で、がっかりだったが、ドロップした『火竜の牙』『火竜の鱗』『火の魔石』は結構な値で売れた。

道中で倒したスライムからの『スライムの粘液』『魔石(極小)』、レッドラビットからの『赤兎の肉』『赤兎の毛皮』『魔石(小)』、ファイアーバードからの『火鳥の羽根』『火鳥の肉』『火鳥の卵』『魔石(小)』。これらも単価は安かったが、数だけはあったので、いい金になった。

ちなみに、ドロップ率が低い魔石は、スライムからの極小のでも、五千ピロで売れた。これだけで、今まで死ぬ気でやってきた薬草採取クエスト一回分の稼ぎを越えたのは、何の皮肉ですか?

最後に一つ、この世界の人々に問いたい。この世界の肉が一回地面に落ちているのは、気にしないんですか?


「ほら、何呆けてるの? 行くわよ」

「分かった、今行く」


 次は、水のダンジョンだ。

さて、次はしっかり準備してから行くぞ――と思っていたんだが……。


「どうして、俺たちは水のダンジョンの前にいるんだ?」

「何言ってるのさ、ご主人様。あんなショボいダンジョンじゃ、攻略したうちに入んないよ」

「いや、でも……」


 ポーションの在庫がほとんど無い。

一昨日火のダンジョンを攻略し、一日休んで、水のダンジョン。

一応、昨日薬草を取りにいっていて良かった。でも、せめてもう一日休みたかった。みなさん、俺の休暇は無いのでしょうか?

三人を見渡すと、やる気満々といった表情だ。


(ええい、もうこうなりゃ、やけっぱちだ!)

「行くぞぉー!」

「おーっ!」


 またもや、先に走り出したユリアを捕まえてから、水のダンジョン攻略が始まった。




 〈一階層〉

一階層の敵は、またスライムだった。ただ、数とバリエーションが増えているだけ。

水色のは、火のダンジョンでも見た普通のスライム。青色のは、水魔法が使えるらしい水スライム。デカイのは、物理攻撃無効のラージスライム。


「スライムは攻撃が通りにくいんだよなぁ」

「ほら、ぼやいてないで、攻撃、攻撃」

「じゃあ、ユリアは水色の、お姉ちゃんは青色の、ご主人様は大きいのね」

「分かったわ」


 俺もここらで、戦っておくか。

さすがに、ただポーションを作って三人に手渡すだけ、というのは味気無い。


「任された」


 胸ポケットから、【Cランク毒液】を取り出す。動きの遅いスライムには、【Cランク麻痺液】をかけるまでもない。

俺の手から離れた【Cランク毒液】入りの試験管は、回転しながら放物線を描いて飛んでいく。


「セリア、ユリア、避けろよ!」


 慌ててジャンプして回避した彼女らの足元を、【Cランク毒液】を撒き散らしながら、試験管が飛んでいく。


「セリア!」

「ええ、分かったわ。『魔力拳』」


 拳の形をした魔力が試験課に当たる。

真上からの『魔力拳』で砕け散った試験管の破片は、どこへ向かうだろうか?

そう、それは真下だ。

真下のスライム三体めがけて、試験管の破片が二次攻撃として降り注ぐ。そして、スライムらの体を縦に貫いた。

毒の効果も合わさり、セリアとユリアが着地した頃には、スライム三体が全てポリゴンエフェクトに包まれた。


「あっ、ユリアのスライムが!」


 ユリアが悲痛な声をあげる。

そういえば、倒すスライムの分担をしていたんだっけ?


「もぅ、ご主人様は攻撃しちゃダメ!」


 ユリアが両腕でバツを作って、俺のもとに抗議しに来た。


「ユリア、それは――」

「なーんにも、聞こえなぁーい。女の子との約束は絶対なんだよ」


 そう言うと、笑いながらクルッと一回転してから、走り出した。右肘を後ろに下げた後、

『魔力拳』

拳が風を切る音が、ここまで聞こえてきそうだ。それが当たったスライムは、二度壁に当たってから、ポリゴンエフェクトに包まれた。


「どう、ユリアのすごいでしょ?」

「ああ。セリアのとは、ちょっと違ったな」

「ええ、私の『魔力拳』は魔力を飛ばしているだけ、ユリアのは自分の拳の周りに魔力の膜を作って、それで殴っているの」


 妹の自慢ができて嬉しいのかと思ったら、前で戦うユリアの背を見つめ、なにやら悲しげな表情。勝ち気なセリアには珍しい表情だ。

無言の彼女の表情からは、出会ったばかりの俺でも、何かが隠されていると感じ取れる。


「もう、気付いてるんでしょう? ユリアのこと……」

「何となくはな」


 セリアが俺を見つめる。何か言いたげな表情で。


「ユリアは――いえ、私が言うことじゃないわね」

「そうだな」

「珍しく、あなたと意見が一致したわね」

「ユリアに対しての気持ちは一緒だからな」

「あら、そう? うざがっているのかと思ってた」

「まあ、ちょっとわな。でも、あんなの可愛いもんさ」


 そう、これはセリアのために言ったお世辞じゃない。あの人に比べれば、ダル絡みのレベルが格段にマシ、いや天使だ。


「ユリアのこと……よろしくね?」


 この前、ユリアにもした気がする。


「任せろって。俺と一緒にいたことを後悔させるような結果には、絶対しないから」


 もう、誰も……見捨てたりしないから。


「お姉ちゃーん! いっぱい来たよー!」


 セリアは、大きく手を振るユリアに向かって走り出した。

その背中に、さっきの弱気は感じられない。




 〈十階層〉

火のダンジョンの時と同じく、五階層と六階層との間で一泊した。

ダンジョンの最下層にいるボスは、このラビリスの八大ダンジョンでは、全てドラゴンだ。そして、今回は水のダンジョンだから、ウォータードラゴン。


「フィー、今回はユリアたちに任せてくれない?」

「いいよ、もうMP少ないし」


 フィーは、一昨日の火のダンジョンで出てきたレッドラビット、そう一番弱い奴を攻撃するっていうあれだ。その水属性版のブルーラビットの攻撃をかいくぐるのに、結界を張っていたせいで、もうMPが枯渇しかかっている。

結界には、それぞれ耐久値が定まっている。攻撃を食らう度に、それは減るが、耐久値以上の攻撃で破壊されない限り、MPを使って耐久値を回復する。

つまり、カスダメを食らい続けていると、いつの間にかMPが尽きていました、みたいな事故が発生するわけだ。

MP切れは、高難易度ダンジョンでは命取りだし、フィーの『強化魔法』『幻術魔法』が活かせなくなるのは問題だ。早急に、解決策を考えねば。


「お姉ちゃん、行くよ!」

「分かったわ」


 始めに、セリアがドラゴンの目の前まで駆け抜け、跳躍し、『魔力拳』を入れる。

出鼻をくじかれたドラゴンは、口から水を吐いて、間合いを取ろうとする。

セリアが空中で体を反らし、ドラゴンの『ウォーターブレス』を避け、少し離れたところに着地する。

それを見越していたかのように、『ウォーターアロー』が彼女の着地地点に飛来する――だが、それを『魔力拳』で粉砕し、ドラゴンの横に回り込もうと走り出した。

セリアの進む方向が読めたその瞬間を狙って、ウォータードラゴンはその長い尾をムチのように回し、マサカリのような刃となってセリアに迫る。

刃先がダンジョンの壁すれすれを通るそれからの逃げ道は上だけ。ただ、そこにも怪しげな魔法陣が展開されている。


「お兄ちゃん!」

「大丈夫だって、ほら」


 視線を戻した瞬間、フィーの視線に映ったのは、縦に真っ二つに割れるウォータードラゴンだ。そして、地面に落ちるドロップアイテム。

戦いは、終わったのだ。


「ねえねえ、何があったの?」


 フィーが服の袖を引っ張る。


「ほら、誰か忘れてないか?」

「……あ、ユリアお姉ちゃん!」

「そうそう、多分セリアが注意を引いたところで、ユリアが『魔力拳』を入れたんだろうな。さすが姉妹の連携プレーってとこだな」


 遠距離・高頻度のセリアが注意を引き、近距離・一撃必殺のユリアが一撃で粉砕する。理想的な戦い方だ。


「お兄ちゃん、姉妹と夫婦って、どっちが連携できるかな?」


 姉妹と、夫婦か。

俺と全く接点がない二択を挙げられても、イメージがまるで付かない。


「どっちも、同じくらいなんじゃない?」

「なら、フィーたちも連携プレーできるね」

「……そうか?」

「うん!」


 とはいえ、俺もフィーも攻撃系のスキルは持っていない。

あるとしても、フィーの『結界(反射)』と、俺の【Cランク毒液】くらいだ。さすがに、この二つでコンボを決めに行くのは難しい。もうちょっと、似た系統のスキルがあれば……。


「あ! フィーは天才だな。うん、天才だよ」

「そう?」

「ああ、すごいぞ。面白いことができるかもしれない」


 しっかり、ドロップアイテムを回収してから、水のダンジョンを出た。

まだ日は沈みそうにないから、俺は薬草採取に、フィーたち三人はダンジョン攻略で貯まったお金で装備を買いに行くことにした。

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