22、ダンジョン探索(火)②
GWはアニメエネルギーの補充をしていた関係で、投稿できませんでした。
すみませんでした。
翌朝から、六階層の攻略が始まった。
昨日より一層執拗さを増した、レッドラビットの攻撃に辟易した俺は、フィーの結界を使うことにした。
ほとんど捨て身ゆえの高火力技なのだろう。フィーの『反射』付きの結界に当たったレッドラビットのほとんどが、地面に落ちるなり、ポリゴンエフェクトに包まれ、そしてドロップアイテムと化した。
まじで、【魔力強化ポーション】でバフしたフィーの結界の耐久値より、攻撃力が低くてよかった。しかし、【魔力強化ポーション】などの強化ポーションの材料は、回復ポーションの材料より入手難易度が高いせいで、手持ちが少ない。
ダンジョン内を全力疾走しながら、俺はつくづく思う。
(早く抜けられればいいが)
それに、生態系を破壊しているようで、気が重い。
動物愛護団体のいない世界で、本当に良かったと思う。
「相手の攻撃を反射する結界とは……」
「ほんと、フィーはすごいよねぇ。だって、こんな楽ちんなんだもん」
「まったく、ユリアは……」
セリアはフィーに大丈夫か、と聞きながら、軽口を叩くユリアをたしなめる。根っからのお姉さん気質なのだろう。
二人に褒められて、えへへ、と嬉しがっているフィーの顔にも疲れの色が浮かんできた。敵の数が少ない時は、セリアとユリアが対処することになった。
五階層を越えて、だんだんと暑くなるこの環境で、ずっと結界を張り続けるのは、相当大変だろう。幸い、まだ生温いくらいだから、しっかり休んでいれば、そこまで支障はなさそうだ。
「む〜、フィーめ。ご主人様におぶってもらうなんて、中々の策士だな。ユリアも、負けてられないぞ」
ドン、と振り下ろした拳が、ちょうど飛来してきたフレイムバードの頭に、クリティカルヒットする。
「何言ってんのよ? ぶつくさ言ってないで、ちゃんと働きなさい」
はぁ、とため息をつきながら、拳を前に突き出す。こちらも、同様にフレイムバードが撃墜された。
「ねぇ、ご主人様ぁ。もし、ユリアが足をつって、動けなくなったらどうする?」
「減らず口を叩いてないで、集中しなさいよ」
「なら、お姉ちゃんならどうする? ユリアが怪我したら」
「そうね。一回、魔物の餌になってみたら、どう? きっと、真面目にやることの意義が分かるはずよ」
ユリアは言い返す代わりに、ん〜、と頬を膨らませた。
しかし、魔物の波が一段落したことで、ユリアの減らず口が復活した。セリアは、もう諦めている。
「で、さっきのあれ。ご主人様だったら、どうする? ダンジョンの深層で、ユリアが死にかけていたら」
なんか、だんだん状況が悪化している気がする。
でも、俺の答えは多分変わらないだろう。それが俺の願いである限り。
俺のせいで誰かが傷つくのも、目の前で傷つく大切な人を守れないのも、大切な人から笑顔が消えるのを見てることしかできないのも、大切な人が俺の元からいなくなるのも――もう、嫌だ。
俺の力で変わるかは分からない。でも、最後の最後まで死力を尽くして、その笑顔を守るのが俺の使命だ。
「俺と一緒にいたことを後悔させるような結果には、絶対しない。そうだな……最悪、死霊王様でも呼んで、助けてもらうさ」
俺の脳裏を、いつぞやの正統派黒髪美少女の顔がよぎる。
「ん! 今、他の女のこと、考えたでしょっ!」
ユリアがニヤニヤしながら、俺の方を見てくる。
なんで、変な所で鋭いかな、ユリアは。
だてに、起きてから寝るまで、俺たちにアンテナを張り巡らせ、獲物が来た瞬間にツッコミを入れていない、ということだろう。
まあ、余計なことを言ってくれるユリアがいるから、ほのぼのとした空気で、ダンジョン攻略がっ!
「ちょっと、フィー、前が見えないって」
背中でうなだれていたフィーが、俺の顔の前に身を乗り出す。
バランスが崩れ、さらに視界不良に陥った俺は、酔っ払いより酔っ払い的なふらふらになっている。
「フィーじゃ、ダメなの? フィーじゃ、力不足なの? フィー、何でもするから嫌いにならないで!」
フィーが急に暴れ出した。
ユリアのやつ、どんな入れ知恵をしたんだか……。現に、今もニヤニヤしてるし。
ほんと、お昼の校内ラジオの質問コーナーにでも頼りたいくらいだ。「他の女子のことを考えていたら、背中の幼女が急に暴れ出しました。どうすればいいですか?」
まあ、あのコーナーは、俺の深刻な質問も、すべて話のネタにするだけだろうが。
数々のラノベを読んできた経験から導き出される、正解はおそらくこれだ。
「そんな訳無いだろ。俺はフィーのこと、大好きだぞ」
「そう?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ、本当だとも」
「じゃあ、お嫁さんにしてくれる?」
「あぁ……。あの、今なんて?」
フィーの小さな顔が、俺の背中にピトッと押し付けられる。
「だから……フィーをお嫁さんにしてくれる?」
「いや、その……」
「くれないの?」
「ほらほら、早く答えちゃいなよ。女の子を待たせるなんて、良くないぞー」
ユリアが嬉しそうな顔で、残酷な茶々を入れてくる。
今、やっとセリアの気持ちが分かった気がする。なんか、いつもごめん。
それで、どう収拾を付けたものか。
ほんと、フィーまで委員長化すると、困るんだよなぁ。そこに、フィー本来の純粋さと、ユリアとが合わさると、手が付けられない。
「あっ、また別の女だ!」
あっ、しまった!
そっか、委員長も女だったか。未確認生物か、宇宙人くらいにしか思っていなかった。
「お兄ちゃん。フィーは怒りました。もう、ユリアお姉ちゃんの小芝居に付き合うのは止めました。詳しく、その女性について、お話を聞かせてもらいます」
フィーの目が据わっている。
キレた時のセリアに近いオーラだが、それよりもっと純粋な怒りだけで構成されている。
ていうか、やっぱ、ユリアだったのか。
「はい」
「まず、一人目の方から。誰ですか?」
「えっと、知り合いです。前に、助けてもらって」
「じゃあ、二人目は?」
「えっと、知り合いです。前から、よく絡まれてて」
「ねぇ、フィー。もっと聞いちゃえ!」
「ユリアお姉ちゃんは黙っててください」
「はい……」
セリアがキレても、まるで引き下がらないユリアが大人しくなった。
さらに驚くべきことに、セリアと並んで、前方から来る敵の掃討まで始めた。明日は、空から槍でも降ってくるのだろうか。
【五感強化ポーション】を飲んだことで過敏になった、俺の聴覚がセリアとユリアのコソコソ話を捉えた。
「何してんのよ!」
「いやだって、フィーがあんなになるなんて、聞いてないよぉ」
「早く謝ってきなさいよ!」
「やだよ。フィーが怖くなってるし。……もう、ご主人様に任せちゃおうよ」
「あんたねぇ……」
「じゃあ、お姉ちゃん、代わりに行ってくる?」
「え、私? どうして、私なのよ」
このパーティーで、最も力を持っているのは、フィーだろう。戦闘面でも、日常面でも。
フィーが再び口を開く。
「フィーと、その人たち、どっちが好きですか?」
「そりゃ、フィーの方が――」
「フィーは具体的な説明を要求します」
「だって……あの人たちは、死霊王と魔物みたいな人たちだから。いや、ほんとに、死霊王と魔物だから」
だって、あの正統派黒髪美少女は自称死霊王だったし、委員長は魔物みたいなもんだろ。話が通じないところとか。
「そうですか、なら許します。……もう、浮気はダメですからね?」
「はい……」
フィーの笑顔に恐れを感じつつ、ユリアの元へ向かった。
いつもより、歩調が早くなっているのは、言うまでもない。
「ユリア、気を付けような……」
「うん、そうだね……」
他人の隠れた一面の恐ろしさ、そんなことを学んだ一日だった。
ちなみに、フィーがにこにこ笑顔で結界を張ったまま先陣を切って、即日中にボス部屋まで到着。そのまま、二本目の尻尾の「強化魔法」、三本目の尻尾の「幻術魔法」で、単騎でボスのファイアードラゴンを撃破した。
これがまさに、『窮鼠猫を噛む』ならぬ『憤狐ドラゴンを倒す』だろう。
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