14、新しい生活⑥
投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
ほんと、いい加減注意力が足りないって話なんですが、如何せんまたやってしまいました。
「次からは……」と言っても、なにも説得力がないので、別の言葉で締めさせて頂きます。
ぜひ、楽しいラノベライフを!
草原を抜ける風が気持ちい。
本格的な秋に近付いてきたからか、涼しい風も混じっている。
昨日までより、たくさん朝食を食べるフィーを見ながら、金を稼ぐ方法を考えていたのだが、一手段しか思いつかなかった。
どういうものか率直に言うと、俺が一番苦手な肉体系だ。
ファーストインプレッション的には、結構キツい。
「なあ、フィーさんや」
「さん? あっ! な、なんだい、じいさんや」
……いや、そういう返しを期待していたわけではないのだが。
というか、元気でハキハキしているばあさんだ。
確かに、これなら桃太郎を育てることもできそうだ。
「フィー、協力してくれないか?」
「いいよ! お兄ちゃんのためなら、何でもする!」
「これ、【MP回復ポーション】だから、ずっと結界頼むよ」
「え、ずっと張るの?」
「ああ。ちょっとでも止めたら、生きて帰れる自信はないんだが……やっぱり止めるか?」
「ううん、フィーに任せて」
俺は【筋力増加ポーション】と【AGI増加ポーション】を、フィーは【精神耐性ポーション】のポーションを一気飲みした。
うん、フィーも良い飲みっぷりだ。
よいしょっ。
フィーを背中におんぶして、さあ出発だ。
「行くよ、ばあさんや」
「ん〜〜。フィーは、ばあさんじゃないもん!」
キュイーン
おそらく、周りにはそう聞こえているだろう。
別に、会心の自信作というわけではなかったのだが、今までの五倍は速く走れている。【疲労回復ポーション】も併用することで、問題はお腹がタプタプなことだけになった。
あとは……
「お兄ちゃん、ストップ、ストップ!」
背中のフィーが半泣きになっていることくらいだろうか。
結界で守られているとはいえ、四六時中、攻撃が飛んでくるし、このスピードだ。相当精神が削られる。
俺とて、ずっと走り通しで肉体的疲労も合わさり、泣きそうだ。
カンカン……ドンッ……ドドン
弓矢、槍、棍棒、盾、火球に雷撃。
本当に、なんでも飛んでくる。
挙句の果てには、魔物すら飛んでくる。
まあ、俺たちが突っ込んでいってるわけなのだが。
ドシャという明らかに鈍い音のあと、結界一面に魔物の残骸が飛び散るのには、さすがに肝っ玉が縮む。
まったく食欲は湧かないが、こんな状況だから仕方ない。俺もフィーも、ゴクゴクと喉を鳴らしながら、走り続ける。
「……まだぁ?」
フィーが大人しくなったところを見るに、疲れが溜まってきたのだろう。
結界が解ける前に、走り切らなくては。
さすがに、このジェットコースター並みの速度で、何かに衝突したらどうなるか、それくらいのことを考える余力はある。
「フィー、頑張れよ。もうちょっとだから」
そう、俺たちが目指しているのは、通称、跳梁跋扈の森の中に忽然とある小さな野原、フェアリーゾーンだ。
まず、跳梁跋扈の森の解説から。
この森は、ヤバい。
その一言に尽きる。魔力のオーラからして、ヤバい。
この森関連の依頼はすべてBランク以上なのが、動かぬ証拠だ。普通なら、AまたはBランクでパーティーを組んで、しっかり用意してから突入するのがセオリー――なわけだが、まあ、そんな金も時間もない。
ということで、強行突破という結論に至ったわけだ。
そして、フェアリーゾーン。
この小さな野原には、たくさんの薬草、果実、その他諸々、これぞ生きる宝と呼べるものが自生しているらしい。詳細は不明だが、最悪、走って逃げる。
まさか、剣と魔法の世界に来て、全力疾走し続けるとは思っていなかった。
「お兄ちゃん、あれ」
フィーが右前を指差す。
走り続けて、約3時間あまり、植物のユートピアに到着した。
ポーションを飲みまくったからか、疲労感はあまり感じない。ただ、エナジードリンクと同じで、後で疲労が来るタイプだ。
「わぁ、きれいだね」
「そうだな」
野原というより、宮殿の花壇に近い。
「あのお家、何だろうね?」
「危ないから、俺のそばから離れるなよ」
「うん!」
フィーが餌を見つけた金魚みたいに、俺の腕に飛びついてくる。
俺に向けられた恥じらいを含んだ笑顔に、おもわず目を背ける。
(まったく……)
「ふふっ」
「じゃあ、俺が採る薬草をアイテムボックスに入れてくれるか?」
「うん」
『薬草鑑定(A)』
おそらく、周りは薬草に溢れているだろうから、頑張らなくては。
薬草を一度に多く鑑定するほど、負担が正比例的に増えていくのは言うまでもない。
「まじか……」
「ん?」
寡黙な彼が、思わず口に出してしまったのも無理はない。
何せ、こんな序盤にボーナスステージに巡り合ったのだから。
「なあ、フィー、お金持ちになったら何がしたい?」
「フィーは……うーん、あっ! あのお家で一緒に暮らそ! うん、それがいい」
「あそこか」
せっかく、フィーが出してくれた意見だから、腰を折ることはしないが、出てもおかしくない雰囲気を醸し出している。
あの建物にまとわりついているツタ、あの片方だけ取れかけたドア、あの黄ばんだ窓ガラス、出ても文句は言えない。だって、「出るぞ危険」ってアピールしているのだから。
「いいアイデアでしょ?」
「そうだな、暇になったら、また来ような」
「うん、一緒に来よう」
気付いたら、太陽が黒ずんだ煙突の後ろに隠れていた。
周りの木々の合間から、冷たい風が吹き抜けてくる。
ガサゴソと葉が蠢いて、気味の悪い演奏をしている。
「帰るか」
フィーが袖を引く。
「もう、まっ暗だよ」
「うーん、それもそうだな」
ここまで来るのに、行きは三時間。
疲れ具合も含めて、帰りには四時間は見積もったほうがいい。とすると、街につく頃には真っ暗。
うーん、ちょっと交通事故が怖いな。
まあ、木だろうと魔物だろうと、全部結界でぶっ飛ばせるのだが、あまり結界を張るフィーに負荷をかけられない。
「寝袋ならあるけど、さすがに外じゃなあ」
起きたら右手をもがれてた、とかはマジで洒落にならない。
さすがに、寝ている間まで、フィーに結界を張らせるわけにもいかない。
「うーん、やっぱり……」
近付くと、一層不気味さが増す。
分かりやすく、廃墟だろう。
「ここしかないかぁ」
「えっ、ここ?」
この廃墟に引っ越すとか言ってたフィーも怖気づいたようだ。
「うーん」
「うーん」
朽ちかけたドアを前に唸っていても、仕方ない。
覚悟を決めて、足を踏み出して、ドアに手をかけようとしたとき、
「ん? なあ、フィー、あれ」
「馬小屋……かな?」
「屋根がついているなら、あれで手を打つか」
ドンッドンッ
「お兄ちゃん、何してるの!?」
目を丸くしているフィーに腕を引っ張られて、足を止めた。
「いや、屋根の強度の確認を」
「っなんだぁ、びっくりしちゃった。私たちのお家の小屋を壊しちゃうのかと思ったよ」
あ、それ本気だったんだ。
この屋敷に家主がいないといいんだが。
「じゃあ、夕食を食べるか。フィー、お願い」
「うん!」
夕食は、昨日料理屋で頼みすぎて余った料理たちだ。
もちろん、雑貨屋で買った木皿に移している。さすがに、店の皿ごと持って帰りはしない。
皿を洗う水なんて無いので、とりあえずアイテムボックスに入れておいた。まだ料理が暖かかったから、おそらくアイテムボックス内では時間が止まっているのだろう。
だから、取り出してみたら、真っ黒にカビて、異臭もするという凄惨なことにはならないはずだ。
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
馬小屋の窓から見える月と星がきれいだ。
昔と見ているものは同じはずだが、月は黄金色、星は青、赤、黃――。黒いキャンパスを色とりどりに彩っている。
自分の胸に手を当ててみる。
俺のキャンパスには……。
「スースー」
心地よさそうな寝息を立てているフィーの横顔が目に入った。
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