第九十三便 般若だなんて言わないでっ!
七つ道具(七つでは足りない)
瞬間接着剤 いろいろな場面で。
厨二病たちは西の首都へ向かって出発した。催涙剤の除去と薬草湯の配分もある程度終わった。お兄ちゃんは、「暗くなる前に」って、パラグライダーのキャノピーを拾いに行ってる。
ヴィオレットの馬の後ろに乗って。
燃料が厳しいから少しでも温存、ってのはわかるけど。
最初は歩いて行こうとしてたけど、グリシーヌに『どちらへ?』って訊かれて事情を(おおざっぱに)説明したら、『ならば私が馬で』とか言い出した。
それ自体も問題だけど、ヴィオレットが『軍馬は気性が荒いからお姉さまには難しいですの。ヴィオレットが荷車の騎士を乗せていくですの』としゃしゃり出て来た。
グリシーヌはそれなりに抵抗したけど、確かに違いはあるらしく、ヒゲも『ここは大尉に任せた方が』と進言する。それでもグリシーヌは抵抗してたけど、金髪が『私が乗せて行こう。私は荷車の騎士(の水)に身も心も捧げた身』とか言い出したところでようやく折れた。
とはいえ、お兄ちゃんがヴィオレットの後ろ(パンセルメールの次に速い馬らしい)に乗った時は、オレも動揺を隠せなかった。
『それじゃ、行ってくるですの』
「なるべく早く戻ります」
『荷車の騎士、ヴィオレットにしっかりつかまってるですの』
「はい、わかりました」
と言いながら鞍を掴む。
『馬はいいですね。余計な口を出さないし』
『そうですの。魔獣と違って静かでいいですの』
『小姑もいませんしね』
『お姉さまも邪魔ですの』
『ほんと、押しかけ女房気取りでうんざりだったんですよ』
『お姉さまも意外に図々しいですの』
『フッフもグリシーヌ姫様もいないし、じゃあ、このままさっきの続きをしましょうか?』
『それがいいですの。お姉さまには一足お先ですの』
『どこかに止まりますか?』
『馬に乗ったままでもいいですの。これがほんとの』
『とか言い出したらどうするの!? フッフ!?』
オレ以上に動揺したグリシーヌがオレに駆け寄る。
『え、いや、オレに言われても』
オレだってイヤだけど、役に立てない以上仕方ないし。
ていうか、いつの間にかお兄ちゃんが現地語喋るみたいになってるし。
ついでに、グリシーヌにオレの妄想癖も感染してるし。
『何が〝一足お先〟よ! 姉よりお先の妹など存在しないわっ!』
……なんて言ってる間にヴィオレットたちは出かけた。コミュニケーションの心配はあるけど、まあ、キャノピー探すくらいなら何とかなるでしょ。
『何とかなってたまるもんですかっ!』
どす黒いオーラを放ちながら、グリシーヌはヒゲや部下たちに混じって夕飯の準備に取り掛かった。
『鬼だ』
『般若だ』
笑顔を貼りつけたグリシーヌをそんな風に思ったのか、薬草が効いてテントから出て来た一部の兵士たちはまたテントに戻って行った。
かなり早い夕飯の準備が落ち着いて来た頃には、グリシーヌも落ち着いて来た。
オレはグリシーヌを呼ぶと、簡単に説明してOBD2の電源を切ってもらった。
一つは、バッテリーの消費を多少でも抑えるために。
そしてもう一つは……。
注1 ジャギのセリフの説明は必要ないですよね?




