第八十九便 サルでも描けるとか言わないでっ!
七つ道具(七つでは足りない)
ウォッシャー液 特に冬は予備が必要になります。
ツンデレって言葉、いつからあるのか知らないけど、誰かが考えたんだよね?
オレ、あの言葉考えた人死刑でいいと思うんだ。
だってアレって、結局デレるのが前提じゃん。その時点で、ドーテーかバカな男の妄想(以下略)。
ていうか男はみんなバカ(お兄ちゃん含めて大体合ってる)。
とにかく、ツンならツンで通すべき。
だいたい、現実世界では、女の子は一度「嫌い」ってなったら、百パーセント好きにはならないよ?
そんなどんでん返しが成立するのは、あくまでフィクション。
それも、自称平凡な主人公モテモテアニメの没個性チョロインか、または、少女漫画に出て来る股下二メートルの不良、でも実は捨て犬に傘を差し出す美男子に絡まれる自称平凡な主人公の少女だけ。
つまり、男にとって都合のいい女の子か、又は、女にとって都合のいい男限定での女の子の反応だよ?
断言するけど、デレるツンなんて、要は最初からデレてるんだよっ!
……何が言いたいかって言うと、この世界でもツンデレは同性に嫌われるってこと。なんてったって、半日でデレた根性なしのヴィオレットでさえ、他人がやると怒り出すくらい。
自分がやるのはいいけど人がやるのはムカつくという。
あ、じゃあ女も(自主規制)。
もちろん、バカ、じゃなくて金髪ンデレがデレてるのは、正確にはお兄ちゃんではなくて水だ。
水にデレない人間、というか生物は(地球基準だと)いないから(あえて言うならオレもデレるし)、 〝デレるツンデレは最初からデレてる〟っていうオレの完璧な理論と矛盾しない。
でも、理屈じゃわかってても、金髪ンデレがお兄ちゃんを物欲しそうに見てれば、どうしても同一視しちゃう。
ほら、今みたいに。
三人(オレ含む)の憎悪の視線の焦点で、金髪ンデレがお兄ちゃんを睨んでる。頰が赤いのは、催涙剤の名残じゃないっぽい。
『か、勘違いするな!』
「しませんよ。それより、喉や顔の痛みは引いてきましたか?」
『だ、黙れっ!』
恥ずかしそうに顔を伏せる。
いい加減にしろっ!
姫騎士とかいう謎職業なら、最後までその謎職業的威厳を保てっ!
そんな妹の様子を見て、ディレター中将が肩をすくめた。
『ふっ、モーヴがここまで感情をあらわにするとはね』
そのセリフも散々あちこちで聞いたよっ! そう言うキャラだとそう言わなきゃ死んじゃう法律でもあんの!? やっぱおまえなんて厨二病で十分だよっ!
それにおまえの妹が感情をあらわにしてる対象は人じゃなくて〇〇のおいしい水だからねっ! 妹が水と結婚するとか言い出してもいいのっ?
……あ、別にいいや、それでも。
『噂に違わぬ恐ろしい男だな、荷車の騎士』
厨二病の相変わらず芝居がかったセリフに、お兄ちゃんがまた不敵に笑う。でも本当は(以下略)。
お兄ちゃんの笑みをどうとったのか知らないけど、厨二病はもう一度野営地を見回してから訊いた。
『二つ目の条件は?』
「同盟」
お兄ちゃんが即答した。
「どちらかがどちらかを吸収するようなものでも、主従があるものでもない。あくまで対等な関係で。国力や国土の広さは関係なく、国と国としての同盟です」
『同盟?』
厨二病が冷笑する。
『今や島内に我々二国しかない現状で、同盟を結んでどうする? 海の向こうの敵でも倒すか? それとも、冬の魔王でも相手にするつもりかい?』
「将来的にはそれもあるかもしれません」
お兄ちゃんが厨二病を見つめ返す。
「しかし、まずは夏の魔女の討伐を」
注1 『サルでも描けるまんが教室』から




