第六十一便 元帥なんて呼ばないでっ!
七つ道具(七つでは足りない)
輪ゴム 何かと便利です。
見送りには、王様や医者、博物学者、そしてゴシェと守備兵たち、更に城の多くの人たちがやってきた。
そのうちの一部はゴシェと同じ南の国出身らしい。中には涙を流し、跪いている人もいた。
王様も、当然のことながら〝南風のフェアリー〟退治には喜んでいたし、娘たちが無事だったことについてお兄ちゃんに感謝していた。同時に、「この時期なら」と娘を二度も港に送り出したことを悔いていた。
まあ、確かに、前々回の薬草運送時に南風のフェアリーに襲われていたら、多分グリシーヌは助からなかったし。
『それにしても』
一通り礼を言った後、王様がグリシーヌを見た。
『あの南風のフェアリーの行動というか、二人の前に行き、止まっていたのはいったい何だったのか?』
隣の医者と博物学者も首をひねる。
お兄ちゃん、ここはかっこよく正解を!
「いや、俺もわかりませんが」
ガックシ。
「それより、グリシーヌ姫様の、というか、この国の皆様の思いにまた触れた気がします」
死んだ虫を、グリシーヌは城内の片隅に埋めた。つい数時間前に戦った相手なのに、土に埋めると黙祷をしていた。ヴィオレットも隣で同じようにしていた。
まあ、二人はまだわかる。
驚いたのはゴシェだ。
彼からすれば、故郷を滅ぼした憎むべき相手だし、実際、南風のフェアリーをはじめ夏の魔女の使徒について話すときは、常に憎悪を隠さなかった。
でも、死んだ虫に対しては、踏みつけたり切りつけたりすることもなく、ほんのわずかだけど黙祷を捧げていた。王様たちもそれに倣った。
『荷車の騎士殿』
それからゴシェは振り返ってお兄ちゃんを見た。
『あらためまして、故郷を滅ぼした夏の魔女に対して一矢報いて下さったこと、心から感謝いたします』
「あ、いいえ」
『今は亡き祖国、そして家族のためにも、また、私たち南の国の難民に手を差し伸べて下さったポローニャ王、そして東の国のためにも、この命、いつでも捧げる覚悟です!』
……うっとおしいね、軍人って。
まあ、でも、ある意味義理堅い人ってことか。
『守備兵隊長がそこまで言う人物、逃す手はないな』
王様(一応名前があったんだね)が頷く。
『では、荷車の騎士殿、我が軍の元帥として迎えたいが、いかがか?』
『お父様! 無茶言わないで!』
お兄ちゃんの隣に当たり前のように立っているグリシーヌが顔を赤くした。お兄ちゃんが不思議そうに彼女を見てから、オレに小声で訊いた。
「フッフ、元帥って何?」
この人はそう言う用語は弱い。
「元帥ってのは軍で一番偉い人だよ!」
グリシーヌが気になるけど、ポローニャ王、なかなかわかってんじゃん、と思いながらオレが答えた。
「えーと、失礼ですが」
お兄ちゃんが遠慮がちに訊いた。
「ちなみに、守備兵隊長さんはどういう階級で?」
『城の守備はもっとも重要な任務の一つ。わが軍では将軍クラスだ』
『ポローニャ王は、他国出身の私を取り立てて下さった心の広いお方です』
いちいち感動してうざいな、おっさん。
「前線にはシェーヌ将軍がいるんですよね? ちなみに、ヴィオレット姫様は?」
『ヴィオレットはまだ若いが、王族特権で大尉だ』
〝特権〟とか自分で言うなよ。
ヴィオレットもちょっと自慢気な顔してんなよ!
「えーと、それ以外の皆さんは?」
『専業軍人は皆中尉、それ以外の臨時徴用は皆少尉だ』
下には将軍と大尉と中尉と少尉しかいないじゃん!
一般兵なんて0じゃん!
それ、ほぼどっかの海賊か野盗レベルじゃん!
何が元帥だよーーーーっ!!!




