第四十八便 リバありなんて言わないでっ!
七つ道具(七つでは足りない)
ビニールテープ 配線その他で使用します。
「……かしい。……ぜ……。……うこ……しょう」
「えーと」
「……のまま……は……」
「えーと、(自称)女神様?」
「……って、あ、あなた、いつのまに?」
いつの間にって、周りは真っ暗なのに、自称女神はどこにいて何してるんだろう?
多分ごろごろしてるだけだと思うけど。
「してません」
また人の心を読みやがった。
人じゃないけど。
「悪口だけなら聞きませんよ」
「あ、違います! 美しい女神様!」
「見えないのによくわかりますね? まあ、私の高貴さ、美しさは、闇の中でも輝いていると思いますが」
「その美しくて調子に乗りやすい女神様にお願いがあります」
「少し引っかかりますが、何ですか?」
「あ、あの、オレ、もう少しいろいろとできるようになりたい、というか」
「いろいろ、とは?」
「ほら、今のオレって、結局喋れる車でしかないですし」
「翻訳能力もあるじゃないですか」
「それはありがたいですけど、でも、それだけじゃなくて……」
「例えば?」
「例えば、こう、お兄ちゃんが運転しなくても、自分で走ったり曲がったりできる、とか。お兄ちゃんの危機に、オレがさっそうと駆け付けるとか」
「……」
「さらに言えば、『オレは命が惜しいからここから先は行けないよ?』とか言っておいて、お兄ちゃんが絶体絶命の時に『お金のためだよ』とか言って助けに入るとか」
「ふぅ」
自称女神がため息をついた。
「そんなことを言いますが、そういう、車などの機械が自由意思で動く作品は過去にもたくさんありますよ」
「いや、作品て」
「それは〝異世界赤帽〟というより、〝異世界ナイトライダー〟です。又は、〝異世界クリスティーン〟とも言えますね。あれ、でも、結局クリスティーンは自分で走ってたんでしたっけ?」
「そんなのどうでもいいけど、うう……」
嫌なとこ突きやがる、この自称女神。
「じゃ、じゃあ、逆に、車縛りをやめたらどうですか?」
「どういうことですか?」
「あの、オレ、OBD2で接続してスマホの画面通して見たり聞いたり話したりできるようになったんです。エンジン切ってる時もお兄ちゃんと話したり通訳したりできるように」
「それは良かったですね」
「でも、ブルートゥース接続なんで、オレ本体から5、6メートル離れるとスマホの接続が切れちゃうんですよ」
「仕方ないですね、あなたの本体はあくまで車ですから」
「だ、だから、もっと離れても大丈夫なようにしていただければ。……お兄ちゃんもここんところオレの中でしか寝てないし、足伸ばせないですけど、多分オレに気を遣ってくれてるんだんと思うし。接続距離の制限さえなければ、オレ本体は外で待機していても、部屋のベッドにオレの目や耳や口もついていけるし」
万が一小娘が夜這いに来ても監視できるし。
でも、自称女神はまたため息をついた。
「そんなことを言いますけどね、もしあなたが本体である車関係なしにスマホでどこにでも行けるなら、それはもう、ほとんどスマホが本体ではないですか?」
「そ、それはそうかもしれないけど」
「それではもう、〝異世界赤帽〟ではなく、〝異世界スマホ〟になってしまいますよ? あなたのアイデンティティ的に、それでいいのですか?」
良くない。
アイデンティティ的だけじゃなくて、いろいろ良くない。
「そもそもあなたの分身のスマホは、今朝からの多くの時間を、荷車の騎士の首からぶら下がって過ごしていますよね?」
「は、はい」
「荷車の騎士のみぞおちのあたりに顔があり、本人や周りの人と喋るし、表情も変わる。あなたは気づいていないかもしれませんが、絵面的には〝異世界ぴょん吉〟状態なんですよ? 一応独自性を保ちたいなら……」
「わかった! わかりました!」
……ていうか、この自称女神、何でこんなに漫画やアニメやラノベに詳しいんだろう?
「私は全知全能の女神ですからね」
又心を読まれた。
「じゃ、じゃあ、ついでにリーマン予想でも?」
「さて、仕事仕事、忙しい忙しい。藤岡君より忙しい」
「戦国○△□のカップリングの一押しは?」
「○○×△△は私のジャスティス!」
「知ってんじゃん! やっぱいろいろと腐ってんじゃん!」
つーか、オレがいまだ性別不明で、微妙にBLって言うか男の娘っぽいのは、この自称女神のせい?
「それは違います」
また心を読まれてた。
「BLと男の娘は全く別物です」
そっちかよ。
「そもそも、男の娘は女性声優が担当することが多く、これはもう形を変えた女性キャラと言え、腐女子からすると納得できないところが多々あり」
「自分で腐女子って言ってんじゃん!」
「と、とにかく、あなたはあなたの独自性を保って頑張ってください」
「じゃ、じゃあ!」
声が遠くなり始めた女神にすがるように叫んだ。
「ね、燃料を! せめてガソリンを!」
「たくさんあるはずですから探して下さい」
「も、もし石油掘り当てたとしても、ガソリン精製なんてできるわけないし!」
でも、自称女神の返事はなかった。
逃げた。
「もう一つだけ言わせてください」
逃げてなかった!
ありがとうございます! 女神様!
「○○×△△はリバなし。異論は認めない」
二度と帰って来るな。
注1 テレビシリーズが人気でしたね。
注2 最初の頃に少し触れました。レンタルが見つからなかったので、DVDを購入しました。
注3 すみません……。
注4 少年ジャンプに恨みはないです。
注5 次女さんは常に忙しいようです。
注6 名前しか知りません。意味も分かりません。
注7 同上




