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第7話 干渉のはじまり

暗い

何も見えない

どこにいるのか分からないまま、ただ立っている感覚だけがある


前に誰かいる

輪郭がぼやけていて顔は見えないが、視線だけははっきりと分かる


こっちを見ている


何か言っているはずなのに聞こえない、音がない


ただ口だけが動いている


――……ない


一瞬だけそんな音が混じった気がしたが意味は分からない


次の瞬間、全部消えた


ピピピピピ、とアラームの音で目が覚める


天井が見える

いつもの部屋のはずなのに、少し遠い


「なんだ今の」


小さく呟きながら夢を思い出そうとするが、うまく掴めない


誰かがいたことだけが残っている


体を起こすと少しだるく、寝不足のような感覚だけが残っていた、ちゃんと寝たはずなのに理由が分からない


顔を洗って鏡を見る

いつもの自分のはずなのにほんの少しだけ違う気がして、すぐに目を逸らす


気のせいだと決めつける


準備をして家を出ると朝の空気がやけに冷たい


いつもの道を歩くが、同じ景色のはずなのにどこか噛み合っていない


足音が一瞬遅れて聞こえる気がする


歩くたびにほんの少しだけズレる


「なんだよ」


小さく呟くが返事はない


当たり前だ


前から人が歩いてくる

すれ違うとき軽く肩が触れる


「すみません」


反射的に言うが相手は何も反応しないまま通り過ぎていき、聞こえていなかったのかと一瞬考える


振り返るともう普通に歩いている


違和感だけが残る


そのまま学校に着き教室に入るといつも通りの空気に少しだけ安心する


席に座ると中田がこっちを見ていた


「おはよ」

「ああ、おはよ」


短く返す


「なんか元気なくね」

「ん、寝不足」


適当にごまかすと中田は少しだけ首をかしげる


それ以上は何も言わないが視線だけがわずかに残る


チャイムが鳴り授業が始まる、先生の声も黒板の音もすべて普通


ノートを開いてペンを持つが、書こうとしたところで一瞬手が止まる


何を書こうとしていたのか分からなくなる


さっきまで分かっていたはずなのに


「……あれ」


もう一度黒板を見ると普通に読めるが、さっきの一瞬だけが抜け落ちている


気持ち悪い


そのまま書き写す


授業の途中でふと黒板を見ると、先生の動きが一瞬だけ止まったように見えた


ほんの一瞬、気のせいとも思える程度だが違和感だけが残る


横を見ると中田がこっちを見ていた


目が合う


「なに?」


小声で聞くと中田は少し間を置いてから「いや」とだけ返す


それだけなのに何か考えている顔だった


「なんでもない」


自分でもよく分からないままそう言うと中田は軽く頷く


それ以上は何も言わないが、さっきよりわずかに距離があった


気のせいで片づけるには少しだけ違和感が残る


前を向くと黒板も先生の声も普段通りなのに、内容だけが頭に入ってこない


ノートに視線を落とすと書いたはずの文字が妙に歪んで見えた、自分の字のはずなのにどこか他人のものみたいで思わずペンを握り直すが指先にうまく力が入らない


一瞬だけ動きが遅れる、そのわずかなズレに気づいた瞬間、背中が冷えた


息を整えようとしてもうまくいかない


横を見ると中田はすでに前を向いていてさっきの視線は消えているのに完全に何もなかった顔でもなく、何かを考えている気配だけが残っていた


そのままチャイムが鳴り授業が終わると同時に椅子の音や話し声が一気に戻ってくる


「なぁ」と横から声がして体がわずかに強張る、中田だ


「さっきさ」と言いかけて少し間が空き、「……やっぱなんでもない」とだけ言って立ち上がる


「次、移動だし」といつもの調子で続けるがそのわずかな間だけが引っかかる


立ち上がると足が少し重い。





教室を出る人の流れに混ざるが、その中で自分だけが一歩遅れている気がした


言葉にできない違和感だけが残った そのまま歩きながら前を見るが、

さっきのズレがまだ消えない 距離も足音もほんの少しだけ噛み合わない


息を整えようとした瞬間、頭の奥で何かが引っかかる


――遅い


声 

反射的に足が止まりかける 周りを見るが誰も気づいていない 中田も普通に歩いている

気のせいだと思おうとするが消えない 耳じゃない、もっと奥


「無駄に意識するな」


今度ははっきり聞こえた 足がわずかに乱れる 呼吸が浅くなる


「……誰だよ」


小さく呟く、すぐに返事は来ない。

数歩進む、そのまま終わるかと思ったところで


「まだ慣れていないだけだ」


間を置いて声が落ちる 自然すぎて逆に気味が悪い


「……何が」


反射的に返す 口に出したつもりはない、それでも返した感覚だけが残る


「全部だ」


短い返答

それ以上は続かない、言葉を待つ..が、何も来ない


「……は」


足が止まりかけるが人の流れに押されてそのまま歩かされる


頭の奥がざわつく 誰もいないのに確かにいる


「今は聞くだけでいい」


少し遅れて声が落ちる


「余計なことをするな」


それきり沈黙 残ったのは自分の呼吸だけ、さっきまでと同じ廊下のはずなのに少しだけ違って見える。


足取りがわずかに乱れる 視線が下に落ちる


「――下を見るな」


反射的に顔が上がる まっすぐ前を見る 廊下の奥、一直線に伸びるライン


「直線だけ追え」


短く響く

言われた通り視線を固定する、ざわつきがわずかに引く


「呼吸を整えろ」


息を吸って吐く 少しだけ楽になる


「目を閉じてそのまま歩け」


一瞬ためらうが、ほんのわずかに目を閉じる


一歩、二歩と歩く さっきまでのズレが少しだけ薄れる


目を開ける、完全じゃないでもさっきよりましだ


「そうだ、それでいい」


少しだけ温度のある声が落ちてすぐに消える また静かになる 何もなかったみたいに

でも確かに残っている さっきの感覚、整えられた感じ


「……今の声の主は誰だったんだ」


答えはない ただ、さっきまでよりほんの少しだけ楽になっていた

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