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第61話 魔法学園㉛

街へ戻るにつれ人通りも少しずつ増えていく。買い物袋を抱えた人が行き交い、子ども達の笑い声が遠くから聞こえてくる。さっきまでいたダンジョンの静けさとはまるで別世界だった


それでも補助干渉リンクが示す方向は変わらない


「まだ真っすぐ?」


「全く変わってない」


「結構歩いてるよね」


「俺もそう思う」


軽く肩をすくめながら歩き続けると、不意に見覚えのある景色が目に入った。


「あれ……」


葵は思わず足を止める。


「どうしたの?」


「ここって」


目の前にあったのは、小さな広場だった


噴水こそ動いていないものの、周囲にはベンチが並び、休日になると多くの人が集まる場所だ


「ここって……」


梓紗も辺りを見回す


「前に来たことあるの?」


「一回だけ」


葵はゆっくり頷く。


「中田と一回来た」


何気なく立ち寄っただけの場所だった


特別な思い出があるわけでもない


それなのに補助干渉リンクは、迷いなくこの場所を示している


視界の端では【進行方向:維持】の文字が静かに浮かんだまま動かない


「どうしてここなんだろ」


梓紗がそう呟いた、その瞬間


表示がふっと揺れた。


【対象まで 15m】


「……え」


葵の表情が変わる。


さっきまで無かった数字が、静かに表示されていた


葵は思わず足を止め、周囲へ視線を走らせた


15メートル。


それなら遠くはない


広場を囲むように並んだベンチ、噴水の前で遊ぶ子ども達、買い物帰りらしい人影まで一人ずつ目で追っていくが、その中に見覚えのある姿は無かった


「どうしたの?」


隣で梓紗が不思議そうに顔を覗き込む


「距離が出た」


「距離?」


「ああ、さっきまで無かったんだけど……今は15メートルって出てる」


「え、それって近くにいるってこと?」


「たぶん」


葵は小さく頷き、そのまま一歩だけ前へ踏み出す。すると視界の端に浮かぶ数字が静かに変わり、15だった表示が14へと切り替わった。


「……減った」


思わず漏れた声に梓紗も周囲を見回す


「じゃあ合ってるんだ」


「みたいだな」


二人は人とぶつからないように歩き始める、数字は一歩進むたびに少しずつ小さくなり、13、12と静かに距離を縮めていく。補助干渉リンクは余計な案内をすることもなくただ目的地までの距離だけを淡々と表示し続けていた。


やがて広場を抜け一本奥の細い通りへ入る


人通りは一気に少なくなり、賑やかだった声も遠ざかっていく古い建物が並ぶその一角で数字は急に小さくなり始め、5メートル、4メートルと減っていくたび、葵の鼓動も少しずつ速くなっていった


「この辺だ」


足を止めた先にあったのは、小さな喫茶店だった、営業している様子はなく、入口には休業の札が掛けられている。窓の奥も薄暗く中の様子まではよく見えない。


「ここなの?」


梓紗が首を傾げる


葵も答えられない


それでも補助干渉リンクだけは迷わず数字を減らし続け、二人が入口の前へ立った瞬間、表示は静かに【0m】へ変わった。


その場へ緊張が流れる。


本当にここなのか


葵がゆっくり扉へ手を伸ばそうとした、その瞬間


店の奥から、何かが倒れるような鈍い音が静かな店内へ響いた。

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