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第45話 魔法学園⑭

翌朝。


まだ少し眠気の残る空気の中、葵は静かに玄関の前へ立っていた


制服。通学鞄。ほんの数日前まで当たり前だったはずなのに、妙に久しぶりな感覚がする


リリスは壁へ寄りかかりながら腕を組んでいた


「本当に大丈夫なの?」


「……多分」


ソファへ座っていた梓紗も顔を上げる


「まぁでも、久々の学校ってちょっとダルいよね」


「……それは分かる」


小さく返しながら、葵は自分の手を見る


対象転移。


今なら、前よりもっと正確に使える気がしていた


『――対象転移、待機状態』


頭の奥で小さく声が響く


葵はゆっくり目を閉じる


思い浮かべるのは学校の校門前。毎日通っていた景色。道路の感覚。朝の空気。そこへ“自分自身”を対象として固定する


ざわつく感覚が頭の奥へ広がる


『対象確認』


『転移座標を固定』


その瞬間だった


葵の足元へ、淡い光みたいな揺らぎが広がる


「……え?」


梓紗が目を丸くする


リリスもわずかに目を細めた


次の瞬間、空気が小さく歪む


――バシュッ


風だけがその場へ残った


「…………は?」


梓紗が固まる


さっきまで玄関にいたはずの葵が、跡形もなく消えていた


数秒遅れて、梓紗が慌てて立ち上がる


「ちょ、え今の何!? 消えたんですけど!」


リリスはため息をつく


「全く、急にスキルを使い始めて」




朝の空気が流れる校門前。登校してくる生徒たちの声が周囲へ広がる中、葵は小さく息を吐いた


『――対象転移完了』


『誤差:0.4』


頭の奥で静かに表示が流れる


前みたいな強いブレはない。周囲へ干渉が広がる感覚も、かなり抑えられていた


「……成功、した」


その時だった


「……おい」


聞き覚えのある声に、葵が振り向く


校門の近く。そこにはガイが立っていた


少し呆れたみたいな顔で、こっちを見ている


「お前、いつの間に来てたんだよ」


「……今」


「は?」


ガイが怪訝そうに眉を寄せる


「いや、今来たにしては気配すらしなかったんだけど」


葵は少し視線を逸らす


さすがに“転移してきた”とは言えないな


ガイはそんな葵を見ながら、小さく鼻を鳴らした


「まぁいいけどよ」


「最近ずっと見なかったから、ほんの少しだけ心配してやったぞ?」


そこで一拍置いて、少し口元を歪める


「そのままくたばったのかと思ったぜ」


「……縁起悪いな」


葵が小さく返すと、ガイは肩をすくめる


「っは冗談だよ」


そう言いながらも、ガイの視線はどこか葵を探るみたいだった


―――


教室の中は、朝特有のざわついた空気で満ちていた


久しぶりに入る教室。椅子を引く音、誰かの笑い声、窓から入ってくる風。全部が少し懐かしく感じる


葵が自分の席へ座ると、周囲からちらほら視線が向いた


「お、アイツやっと来た」


「休みすぎじゃね?」


「大丈夫だったの?」


適当に返しながら鞄を置く


(まぁ普通に人と話すのがアレなだけで。)


けれどその時、不意に視線を感じた


教室の少し後ろ側。


リオが静かにこちらを見ていた


目が合った瞬間、ほんの僅かに眉が動く


「あ……久しぶり」


小さくそう言って、手を振ってリオは視線を逸らした


「……あぁ」


葵も短く返す


けれど次の瞬間。


頭の奥で、小さくノイズが走る


『――周辺干渉を検出』


「……?」


葵の動きが止まる


視界の端へ、半透明の表示が一瞬だけ浮かび上がった


【対象認識】


リオ


『解析――』


次の瞬間、表示がノイズ混じりに揺れる


『不明な反応を確認』


……なんだ?


葵がわずかに目を細める


今までと違う。


梓紗の天獄みたいな重さではない。けれど、普通とも違った


その時、リオが再びこっちを見る


「……どうかしたの?」


静かな声だった


けれどその瞬間、表示がもう一度揺れる


『認識阻害を確認』


『解析失敗』

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