第32話 魔法学園⑧
食べ終わるとリリスが先に立つ、皿を見てから軽く手を振る
「それ、置いといていいわよ」
「……いいんですか」
「いい、あとでやるから」
それだけで終わる、葵は少しだけ迷ってからそのまま席を立つ
部屋に戻ってベッドに腰を下ろす、少しだけ天井を見て、そのまま横になるといつの間にか目を閉じていた
――
朝の光で目が覚める、昨日よりは少し軽い、体を起こして手を動かしてみるが違和感はない
そのまま部屋を出るとリリスがいて、ちらっとだけこっちを見る
「起きたの」
「……はい」
「顔、普通ね」
「……そうですか」
「変なことしてないならいいわ」
「……じゃあ行ってきます」
「ちょっと待ちなさい、ご飯いらないの?」
「……あ、パンとかってありますか?」
「ええ、あるわよ。それ食べて町に行ってらっしゃい」
――
軽く朝食を済ませてすぐ家を出る。空気は少し冷たくて人も増え始めている、自然と足はいつもの通りに向く
少し歩いてから、ふと足が止まる
「……中田」
と呟く
転生してからあいつが今どうしてるのか少し気になる
このまま何もないのも変だと思って、そのまま方向を変える
通りに出て人の流れに混ざりながら視線を動かす、見覚えのある顔を探すが違う、少し進んでもやっぱり違う
「……いねえな、そりゃここにいるってことはないんだろうが」
小さく呟いて足を止めるが、そのまま別の通りへ向きを変える
人が少し減ったところで視線を上げる、奥に見覚えのある後ろ姿が引っかかる
少しだけ距離を詰める
「中田?」
と、中田らしき人に声をかける
相手が振り返る、その瞬間に目が合う
一拍置いて、顔が変わる
「……は?」
じっと見る
「お前……まさか葵?」
確認みたいに言う
「……そう」
短く返す
少し間
中田が一歩近づく
「いや、ちょっと待て」
頭をかく
「なんでいるんだよ」
「それはこっちだろ」
すぐ返る
「……まあ、そうだけど」
まだ信じきってない顔で見てくる
「ほんとに葵か?」
「他にいるのか」
「いねえけどさ」
小さく笑う
「……変わってねえな」
「お前も」
少しだけ空気が軽くなる
中田が周りを見る
「ここで立ち話もあれだな」
「まあ」
「時間あるか」
「ある」
「じゃあちょっと行くか」
顎で奥を指して歩き出す
葵もそのままついていく
人の流れに混ざる
少ししてから中田が口を開く
「で、今どこに住んでんの」
急に現実的な話になる
「……あの辺」
来た方向を軽く示す
中田がそっちを見る
「マジで?あっち森とか多いとこだろ」
「……そう」
「一人?」
「……いや、世話になってる」
「へえ」
小さく頷く
少し歩く
今度は葵が聞く
「お前は」
中田が肩をすくめる
「俺?適当」
「適当ってなんだよ」
「場所変えながらって感じ」
「……定まってないのか」
「そうとも言う」
軽く笑う
また少し間
通りの音が入る
中田がちらっと見る
「てかほんと、どうなってんだこれ」
「……分からない」
「だよな」
少し笑う
「でもまあ」
少しだけ間
「会えたのは普通にびびったわ」
「……そう」
会話は一度切れる
でも途切れた感じじゃない
二人はそのまま歩く
人の流れに混ざって歩く、少し間が空いてから葵が口を開く
「中田今、何してるの?」
中田が肩をすくめる
「その辺うろついて、頼まれたのやったり」
「仕事か」
「まあそんなもん」
少し歩いてから続ける
「……魔法とかって」
「あー……使える」
少し笑う
「最初意味わかんなかったけどな」
「……そうだな」
「お前もか」
「まぁ少し」
人が横を抜ける、間を置かずに続く
「学校は?」
「入ってねえ」
「だろうな」
すぐ返る
「そんな余裕ねえし」
「……そうか」
また少し進む
「お金は」
中田が少し顔をしかめる
「それ聞くか普通」
「必要だろ」
「まあな」
息を吐く
「依頼とか、適当に稼いでる」
「足りてるのか」
「今はな」
少しの間
でも止まらない
「他にクラスの奴らいると思うか?」
「……考えたことはあるけどな」
前を見たまま続ける
「でも見てねえ」
「名前は」
「聞いてない」
少しだけ間を置いて
「梓紗は」
中田の足がわずかに止まる
「……あずさ?」
首を振る
「知らねえな」
また歩き出す
中田が小さく笑う
「なんか急に現実だな」
「……そうか」
そのまま二人は進む




