第27話 魔法学園③
教室のざわめきが落ち着いた頃、教師が前に立つ。軽く机を叩くと自然と視線が集まる
「来週から実地に入る」
短い一言
「ダンジョンだ」
一気に空気が揺れる。「早くね?」という声や、抑えきれない期待が混ざる
教師はそのまま続ける。倒した魔物は持ち帰る必要はなく、専用装置で変換されること、その結果がレイとして支払われること。言葉が進むごとに教室の温度が少しずつ上がっていく
「好きに使え、装備でもいいし貯めてもいい」
現実的な一言でざわめきが強くなる
そして
「三人一組で組め」
今度は一気に動き出す。声が飛び交い、近い者同士でまとまっていく
葵は動かない
その必要がないことを分かっているように
「……あんた、組みなさいよ」
横からリオの声。軽い調子のまま、すでに決めている響き
「どうせ余るでしょ」
葵は少しだけ視線を向ける
「……いいけど」
それで十分だった
「じゃあ決まり」
リオが小さく笑う
そのとき
「ちょうどいい」
前から声
顔を上げると、さっきの男が立っている。距離を詰めてくる動きに迷いはない
「俺も入る」
一方的な言い方
リオが肩をすくめる
「はいはい、これで三人ね」
流れるように確定させる
男が葵をまっすぐ見る
「ガイだ」
短い名乗り
それだけで性格が滲む
「お前のこと、まだ分かってねえ」
一歩近づく
「だから確かめる」
試すような視線
葵は逸らさない
「……葵です」
短く返す
それで十分だった
リオが間に入るように軽く手を叩く
「ケンカはダンジョンでやりなよ」
軽い言い方だが、止める位置を外さない
三人が並ぶ
リオは自然体、ガイは張り詰め、葵は静か
空気は噛み合っていないのに、妙に崩れない
教師がそれを一瞥する
「決まったな」
短く確認
「週明けすぐ、入口前に集合」
それだけで十分だった
ざわめきがまた広がる
期待と不安と、少しの興奮
その中で
葵は何も言わない
ただ一つだけ分かっている
次は外だ
そして
試されるのはまた“言葉”になる
授業が終わる合図と同時に、張り詰めていた空気が少しだけ緩む。ざわめきが広がり、それぞれが次の話題へと移っていくが、時折視線だけはまだこちらに引っかかる
葵はそのまま席を立つ。特に誰かと話すこともなく教室を出る
「もう帰るの?」
後ろからリオの声
「うん、今日はこれで終わりだし」
軽い調子の返事、その横でガイが腕を組んだままこちらを見る
「逃げるのか」
短く投げる
「……違う」
それだけ返すとガイは小さく鼻で笑う
「まあいい、来週だな。そこで分かる」
それ以上は追ってこない
「はいはい、じゃあまたね」
リオが軽く手を振る
「遅刻しないでよ」
冗談半分
葵は小さく頷いてそのまま歩き出す
校舎を出ると外の空気が少しだけ軽い。人のざわめきが遠ざかりようやく一人になる
「……」
足を止めることなく帰路を進む。頭の中には今日のことがそのまま残っている、測定、視線、そして言葉
――甘いな
頭の奥で声が響く
葵は何も返さないまま歩く
やがて見慣れた家が見えてくる。扉を開けるとすぐに気配が動く
「遅かったじゃない」
リリスの声
「どうだった?」
興味を隠さないまま視線が向く
「……普通じゃなかったです」
曖昧に返すとリリスは小さく笑う
「でしょうね。で、どこまでやったの」
間を置かない聞き方
「……止めました」
短く答える
「何を?」
「……人を」
空気が一瞬だけ静まる
リリスは数秒黙ってから小さく息を吐く
「……早いわね」
呆れに近いが否定ではない
「気づかれた?」
「……分かってないと思います」
それを聞いてリリスはわずかに口元を緩める
「ならいいわ。知られないまま使えるなら、その方が扱いやすい」
軽く言うが意味は重い
「でも調子に乗ると死ぬわよ。今のは通っただけ、そう思ってなさい。次も同じとは限らない」
まっすぐ言い切る
「……はい」
リリスは満足そうに頷き、すぐに雰囲気を緩める
「で、お腹すいた」
急に軽くなる
「葵、今日は一緒にご飯作ろうよ」
……リリスさん作れるなら一人で作ってくださいよ
葵は小さく息を吐く
「じゃあ一緒に作りましょうか」
それを聞いてリリスは機嫌よさそうに鼻歌を混ぜながら奥へ向かう。その背中を見送りながら葵もゆっくり動き出す、さっきまでの空気は少しだけ薄れているが、完全には消えていないまま残っていた
タイトル名がこれから少しの間、魔法学園〇?と、続くので、味気ないと思いますがご了承ください




