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第19話 基礎練習②

「……もう一回」

視点を広げる 思考を分ける


「……止まれ」「……動け」「……戻れ」


三つはもう迷わない ほとんど無意識に重なる


──『同時処理数:3 安定』


少しだけ余裕が生まれる

できる そう思った瞬間


「……じゃあ、増やしてみなさい」


「……え」


「三つで満足する気?」


葵は少しだけ視線を落とす、三つできた なら


「……四つ」


小さく呟く

視点をさらに広げる 今までより曖昧に 広く

拾うものを増やす 落ち葉 石 草 空気の流れ

全部を同時に


「……止まれ」「……動け」「……戻れ」


そこにもう一つ


「……揺れろ」


草がかすかに揺れる


──『同時処理数:4』


一瞬成立する、いけるそう思った瞬間


ぐらっと視界が歪む


「……っ!」


一つが遅れる 一つが強くなる 一つが消える

バラバラになる


「……止まれ!」


無理に繋ぎ止めようとしたその瞬間


──『警告:処理負荷 過多』


「……っ!!」


頭に鈍い痛み

視点が一気に収束する

葉が落ち 石が止まり 草が揺れをやめる

全部 崩れる


「はぁ……っ、は……」


息が荒い 足元が少しふらつく


「……だから言ったでしょ」


すぐ近くでリリスの声がした


「その伸び方は危ないって」


「……すみません」


「謝る必要はないわ むしろ今のは上出来」


「……え」


「一瞬でも四つ回したんだから 普通はそこまで行かない」


葵は何も言えない

まだ頭が少し重い


「いい?」


リリスは少しだけ視線を落とす


「“数を増やす”っていうのはね ただ増やすことじゃない

維持できる範囲を見極めること

限界を知らないまま伸ばすと 今みたいに崩れる」


「……はい」


「だから今のあんたの限界は“三つ”四つは“触れただけ”」


「そこを勘違いしないこと」


「……はい」


葵はゆっくり息を整える、さっきの感覚を思い出す

できたと思った瞬間に崩れた



「……もう一回」


自然に言葉が出る


「……ほんとに懲りないわね」


リリスは少しだけ笑った


「いいわ、そこまで言うなら付き合ってあげる」


一歩下がる


「ただし次は条件を変える」


「……条件?」


「動いてる中でやりなさい」


風が少し強く吹く

葉が舞う


さっきまでと違う不規則な動き


「止まってるものだけ相手にしてるうちは まだ楽なのよ」


「……」


「現実は止まらない」


静かに言い切る


「その中で制御しなさい」


「……はい」


葵はもう一度 目を閉じる


さっきより少しだけ 深く


風が少し強く吹く

葉が舞う さっきまでと違う 不規則な動き


葵は目を閉じる

視点を広げる ぼやかす 全部を同時に捉える


動いている

止まらない


「……止まれ」


一枚 葉が空中で止まる

でもすぐ 横から流れに引かれそうになる


「甘いわね」


「“止める”なら 周りごと止めなさい」


「……っ」


周りごと


風の流れ。空気


全部


もう一度


「……止まれ」


今度は 葉だけじゃない

その周囲の流れごとわずかに止まる


「……動け」


石が転がる

でも風に押されて 少し軌道がズレる


「環境も含めなさい」


「……はい」


思考を分ける、一つは対象もう一つは周囲


さらに


「……戻れ」


葉と 石が 元の位置へ戻る

でも風が邪魔をする


「……っ」


崩れかける


「維持しなさい」


「今度は“続ける”のよ」


「……はい」


止める動かす戻す、それを維持する


一瞬じゃない

続ける


「……止まれ」「……動け」「……戻れ」


風の中で 三つが揺れる


──『同時処理数:3』


安定しない


揺れる


崩れそうになる


「……っ」


でも離さない


視点を広げる

思考を分ける


もう一つ、周囲。


「……止まれ」


今度は 少しだけ


静まる


──『同時処理数:4』


「……っ」


一瞬だけまた届く、でも今度は崩れない


「……」


わずかに維持される。数秒、ほんの短い時間


それでも


「……できてる」


「……へぇ」


リリスの声が 少しだけ変わる


「さっきより 粘るじゃない」


葵は答えない

余裕なんてない

ただ、崩さないように繋いでいるだけだ


視界が揺れる

一つが遅れて、一つが強く出る

バランスが崩れかける


「無理に広げない」


リリスが静かに言う


「今は落とさないことだけ考えなさい」


「……はい」


短く返す

息が浅い


それでも、離さない


――その瞬間


頭の奥で、何かが噛み合った


今まで引っかかっていた感覚が、わずかに滑る

揃う


──カチ


『スキル取得:適応能力アダプト


「……っ」


一瞬、視界が安定する

さっきまでバラついていたものが、ほんの少しだけ揃う


「……今の」


思わず漏れる


リリスはすぐに反応した


「何か変わった?」


「……分かりません」


でも、違う


「……さっきより、崩れないです」


リリスがわずかに目を細める


「へぇ」


少しだけ、間


「馴染み始めたってことね」


葵は答えない

ただ、維持する


止める、動かす、戻す

それを繋ぎ続ける


さっきより、長く


そのとき――


『Lv.-100 → -99』


「……レベルが」


ぽつりと漏れる


リリスの視線が止まる


「……何?」


「……上がりました」


短く言う


一瞬の沈黙


「は?」


空気が変わる


「今ので?」


「……多分」


曖昧に頷く


リリスが一歩近づく


じっと見る


「……どこが変わったの」


「……少しだけ」


息を整える


「……軽いです」


リリスは数秒黙る


「……意味分かんないわね」


「普通そこ、そんな上がり方しないでしょ」


少しだけ笑う


「ほんと、変なやつ」

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