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40/55

40.



どこだ。


どこにいる。


目に入る扉を手あり次第開けていく。


空っぽな部屋を目の当たりにするたびに、苛立ちが増していく。


手紙に記されていた場所に赴くと、そこには少し古びた外観の屋敷があった。


完全に廃墟とまではいかないが、管理されているようには見えない。


中に入ると、人の気配は感じられなかったが、人がいた痕跡は各所に見受けられた。


ここが敵の本拠地としたらあまりにも簡素すぎる。


違和感はあるはずなのに、それを考えようとすると思考が途切れる。


一刻も早くアンナを見つけ出さないといけない。


そんな焦燥感が、胸を掻き立てる。


頭では、冷静に状況を整理すべきだと理解していた。


だが思考は一つにまとまらない。


アンナが危険に晒される可能性ばかりが、否定しても否定しても消えなかった。


あり得ない。そう切り捨てるべきだ。


それでも、最悪の想定だけが繰り返し浮かび上がる。


どうか、どうか無事であってくれ...。


2階の廊下の突き当たりの扉を乱暴に開けると、その部屋は他の部屋と違い、人の気配が感じられた。


肩で息をしながら、部屋に入ると、天蓋付きのベッドがまず視界に入る。


ベッドの上に横たわる人の姿が見え、急ぎ足で駆け寄る。


アンナが眠るように横たわっており、鼓動が早まる。


傍らに近付き、胸元に耳を傾けると、微かに心臓が脈打つ音が聞こえる。


...生きてる。


だが、すぐに様子がおかしいことに気付く。


血色が良く、明るいアンナの肌が青白く、生気を感じられない。


口元に手をかざすも、呼吸が浅く、今にも途切れそうなほど弱々しい。



「アンナ嬢」



呼びかけに、反応しない。


抱き上げると、ぐったりしており、体に力を感じられない。



「アンナ!!」



体を強く揺さぶっても、目を瞑ったまま動かない。


呼吸の仕方がわからなくなる。


吸っているのか、吐いているのかすらわからない。


腕の中の体が、あまりにも軽い。


視界が段々と狭まる。


...間に合わなかったのか...?


肩を掴む手が震えている。



「...起きてくれ、アンナ。頼む...!」



目覚めないアンナの頬に触れながら、懇願する。


「目を覚まさない」という事実だけが、頭の中で何度も繰り返された。


彼女を失うなど、あっていいはずがない。


そんな結末、認められない。


アンナの体を抱き寄せ、何度も呼びかける。



「アンナ...、お願いだ、アンナ。...アンナっ」



すると、後ろから手の叩く音が聞こえてきた。


振り向くと、椅子に腰掛けている女が、拍手している。


女は、愉悦に浸りきった顔で、口元を歪めていた。



「素晴らしい、素晴らしいよ。まさに、僕が見たかった光景だ。欲を言えば、もう少し泣き叫ぶ姿を期待したけれど、でもこれでも十分満足だ」



女は、拍手を止める。



「ありがとう、アンナ。君のおかげだ」



空気が、張り詰める。


セドリックは何も言わない。


ただ、女を見ていた。


一瞬たりとも目を逸らさない。



「....アンナに、何をした」



声が低く沈む。


抑えているはずなのに、うまく制御できない。



「おっと、誤解しないでくれよ。アンナは、自分で用意した毒を自分から飲んだんだ。僕は、ただ賭けに勝っただけだよ」


「...ふざけるな」



女は、続ける。



「健気で可愛いアンナが、君を助けるために持ちかけてきたんだ。おかげで面白いものが見れたよ」



何かが、音を立てて軋んだ。


奥歯を噛み締める。


気付けば、指先に力が入りすぎていた。


女を睨み続けると、突然表情が消える。



「でも、この結果は僕にとっても不本意だ。僕は別に、アンナに死んでほしいわけじゃない」



女が椅子から立ち上がり、近付いてくる。



「だから、選ぶんだ。セドリック・レッドフィールド」



傍らまで来て、足を止め、見下ろしてくる。


アンナを抱き寄せる腕に、さらに力がこもる。



「君と、アンナ。どっちが生きるべきなのかを」




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