「情動の富の解放」:王都を包む破壊の情動、愛の檻が息子を封じる、群衆が紡ぐ最後の物語
細い白い道を進むほどに、空間は徐々に静まり返り、音が消えていった。
闇とも光とも呼べない帯が重なり、時の流れさえ希薄になっていく。
ここが B.Z.E. のさらに奥、**“未来核”**に近づいている証拠だった。
歩みを進めるたび、胸の奥が重くなる。
選んだ未来線がレオン自身の存在を引っ張っているような感覚。
まるで、別の自分がどこかで息をしているのを感じるようだった。
(……この感覚はなんだ?
誰かが俺に“追いつこう”としているみたいだ。)
白い道が途切れた瞬間、前方で光が弾けた。
「……来たね。」
声がした。
レオンは息を飲んだ。
光の中から歩み出てきたのは――
**自分と同じ姿をした“もうひとりのレオン”**だった。
輪郭は揺れ、実体は薄い。
だが、確かにレオン自身と同じ顔をしている。
(未来の断片……?
いや、違う。もっと深い。)
もう一人のレオンは微笑み、静かに言った。
「俺は……“選ばれなかった未来”のレオンだよ。」
胸が殴られたような衝撃。
「……EP96で切断した黒枝線……あれは、未来の住人だけじゃなかったのか。」
もうひとりのレオンはゆっくりとうなずいた。
「そう。
本来なら、お前じゃなくて“俺”が続く未来もあった。
でも……お前が選んだ瞬間、俺は線から外れた。」
その声には怨嗟も怒りもなく、ただ淡い寂しさがあった。
「俺は消える運命だった。
でも……お前がここまで来てくれたから、こうして“形”を得た。」
レオンは拳を握りしめた。
「……悪い。
俺が選んだせいで、お前の未来を奪った。」
もうひとりのレオンは笑った。
「違うよ。
未来は奪うものじゃない。
選ぶものだ。
ただ……“選ばれなかった側”にも、痛みはある。」
その言葉が胸に刺さった。
レオンは一歩前に出た。
「お前は……今、どうなりたい?」
もうひとりのレオンは少しだけ目を伏せた。
「このままでは消える。でも、それは怖くない。
ただ……一つだけ、知りたい。」
顔を上げ、レオンをまっすぐに見つめた。
「お前が選んだ未来は、“本当に守る価値があるのか?”」
レオンは息を呑んだ。
(試されている……俺自身に。)
レオンは答えようとしたが、喉が震え、声が出なかった。
もうひとりのレオンが微笑んで言う。
「答えを急がなくていい。
俺はお前だから、分かってる。」
光の粒が彼の腕から剥がれ、宙へ舞い始めた。
「俺はもうすぐ消える。
でも……お前が進む力になれるなら、それでいい。」
レオンは反射的に手を伸ばした。
「待て! お前まで消える必要はない!」
もうひとりのレオンは、その手をそっと押し返すように笑った。
「必要なんだよ。
未来は一本だけでいい。
“重複した俺たち”が存在したら……世界は耐えられない。」
光が身体を包み、輪郭が透明になっていく。
「最後に、これだけ。」
彼はレオンに近づき、額が触れるほどの距離で囁いた。
「お前が選んだあの未来線の先には……“誰かが待ってる”。
俺はその姿を見てしまった。
だから――自信を持て。」
レオンの瞳が震えた。
「誰だ……?
誰が待っている?」
もうひとりのレオンは答えず、ただ微笑み、
「行けよ、レオン。」
その一言とともに、光となって消えた。
残されたのは、静かな空間と、自分の呼吸だけ。
レオンはゆっくりと拳を握った。
(……選んだ未来を疑うな。
進め。
誰かが待っているなら――)
胸の奥が熱くなった。
それは恐怖ではない。
決意だった。
レオンは前を見る。
薄闇が割れ、白い線が再び奥へと続いている。
「行こう。
俺が選んだ未来の“核心”へ。」
足を踏み出すたび、空間が震え、世界が呼応する。
その先へ――レオンは進んだ。




