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俺、増えます。

書く前は焦りましたがなんとかなりました。

-5話 俺、増えます。-


「・・・もう一度」

「バフ能力アップ(特大)」

それは・・・

「魔力が高いとかか」

「・・・違う」

「バフスキルが得意とか」

「違うっ」

「魔法適正が高いとか」

「むぅ、違うってば」

ぷくっと頬を膨らませ、不機嫌になってみせる彼女。

「・・・本当にバフ能力アップなんだもん」

「じゃあなにか、お前はバフ以外に何も出来ないと」

「そ。攻撃魔法とか回復魔法とか使えない」

「うっわいらな!」

「・・・ひどい」

思わず滑って出てしまった言葉で悲しませてしまう。しかし、バフは戦う上で重要になってはくるのだが、ここらのモンスターではまず、バフはいらない。バフをかけないと倒せない相手の場合、魔力高い系女子は全体にバフをかけ、自らも攻撃魔法や、支援魔法、デバフを使う。それが、彼女には出来ないと言うことだ。

「あぁ、悪い。けど、バフ以外使えないとなると、それこそ前線で戦ってる奴らとか、一人でファントムとやり合える奴以外に欲しがるパーティーなんか・・・ぁ」

言葉に出して気づいた。なるほど、彼女はそれが狙いか。

「そ。一人でやり合える人じゃないと欲しがってくれないの。一人で戦ってる人じゃないと」

してやったりといった顔で訴えてくる彼女。

「ま、まぁ、そうだな。なら、前線の兵士達に全体バフかけてあげれば人気者になれるぞ」

「一人にしかかけれないの」

「うっわ使えねー!」

「むぅ・・・」

悔しがる彼女。が、一変。いいこと考えたと口走る子供のような顔で俺を見上げる。子供の「いいこと考えた!」ほど無粋で滑稽なものはない。

「でも、その分一人にかけれるバフは通常の10倍近くだと思ってくれていいっ」

キラキラと期待を込めるように俺を見つめる彼女。

「い、いや、そんな強いバフかけられても使いこなせないしな」

「いつも通りに戦えばいい」

「ほ、ほら、そんなに強いバフなら、他のパーティーでも重宝されるだろ」

彼女は途端、顔を曇らせ、俯きがちに、

「・・・探したけど、みんな『10倍もいらねぇよ。てか、そんなの」

続く言葉を聞いて息が止まった。

「・・・そんなの、どこで使うんだよ』って言うの」


といった。



あぁ。聞き覚えがある。4年程前、俺もパーティーを探していた頃に何度も何度も言われた言葉。それを聞いて毎回枕を濡らした。



「そっか。そうだよな」

「・・・?」

態度一変同情の眼差しで語りかけた俺が不思議だったのだろう、キョトンとしている。


「・・・分かった、仲間になろう。一緒に『パーティー』になろうか」


思いがけない俺の言葉に彼女は唖然とする。


たっぷり5秒ほど口を洞穴にした後、

「・・・いいの?」

と問うてきた。

「あぁ。俺がなりたいって言ってんだ。ほら、心変わりしない内に返事した方がいいぞ」


眠そうだった顔はどこへやら。ぱぁっと顔を輝かせ、それから目頭に涙が溜まっていくのがわかった。

それから安心したように胸の辺りを手を持って行き、その手の上に一粒、二粒と雫を落とした。

そしてニコっと笑い、周りに花でもあれば恋に落ちる様なシチュエーションで。



「よろしく、シュウっ」



俺に、念願だったパーティーメンバーが増えました。



-----------------------------



「ところでよ、何でお前は俺の名前を知ってたんだよ」

帰り道、仲間になる際に俺の名前を呼んだ事を訝しげに思い、問いかける。

「調べたの」

さっきの輝かしい、青春の1ページを飾るに相応しい笑顔は旅にでたのか、面影すら後ろ姿すら見えない。

「そりゃまたなんで」

「一人でファントムとやり合ってるおかしな人を見つけたから」

「な、なるほど」

一応人の目の届かない所でファントム狩りをしていたのだが、見つかったらしいな。

「・・・俺はお前の名前知らないんだが」

「ミルメール。猫科獣人族。16才。ミルって呼んで」

簡潔に言い終わる。

「分かった。ミル、お前装備は持ってるか」

「持ってないわ」

「じゃあ買いに行くぞ」

「・・・お金はないの」

申し訳無さそうに言うミル。

「いいから付いて来い」



来ましたはお馴染み鍛冶屋のおっちゃんの店。

「今日は何のようかねぇ?」

特徴のある声音で問われる。

「あぁ、コイツの装備一式とバフ効果のある杖だな」

「なるほどねぇ、ちょっとまってなぁ」

言いながら裏へ消えるおっちゃん。

「シュウ、その、えぇと」

バツが悪そうに胸のあたりで指を遊ばせている。

「そう言うときは素直に『ありがとう』で良いんだよ」

「・・・ありがと」

おー、今のちょっと可愛かったかも。

「待たせたねぇ。よいしょっと・・・これで、いいかい?」

カウンターに乗せられたのは黒の裾が三角のようにカットされているコートと、黒のショートパンツに80デニール位のストッキングみたいなの。そして黒と、白のラインが入ったブーツ。どれも魔導装備らしい。

「これでいくらだ」

「145000ゴールドになりますねぇ」

思っていたよりも随分と値が張っていたが、ここは我慢。

「分かった。これでちょうどだ」

「はい、まいどぉ」

機嫌良さそうに声を張るおっちゃん。

「それにしても獣人ちゃんかい、珍しいねぇ」

「あぁ、俺も初めて見たんだ」

「そういう私もドワーフなんだけどねぇ?」


無視。


「それで、杖は」

「あぁはぁ、これでどうかねぇ」

取り出されたのは長さ1メートル程のステッキのような黒い棒だった。

「これは?」

待ってましたとばかりに手を揉む。

「これはですねぇ、バフ効果を2倍に高め、微量の回復効果のある掘り出し物でさぁ。ほら」鑑定石を置く。「この通り」

鑑定石に映し出されたのは前述された内容だった。

「そうか、そりゃいいな。じゃ、貰う」

「これは結構値が張りましてねぇ・・・258000ゴールドでさぁ」

高!は、まじかよ!

でも、こればかりは仕方ない。仲間の装備の為だからなぁ・・・。

「わ、わかった。ほら」

「まいどありぃ」


一式買い終わり、ミルはそれに着替える。

「・・・似合って、る?」

伺うような声。正直めちゃくちゃ似合ってる。

「あぁ、まぁ、いいんじゃないか?」

「・・・そう」

言うと、ミルそのままふいっ、とそっぽを向く。若干顔が赤く見えたが、気のせいだろう。


しかしまあ、黒ずくめと白ずくめ。目立つな。男女逆だが二刀流のヤツと目に見えない速さの細剣で相手を貫くヤツに似ているな。


「それじゃ、帰るかー」

「うん」

俺は借家へと向かう。

てくてくてく。

てくてくてく。

ん?

てくてくてく。

おい。

てくてくてく。

なんで付いてきてるんだよコイツは。

帰り道が同じって可能性はあるが、怪しく感じたから若干遠回りで歩いたのだが、ずっとついてくる。

「おい?」

「なに」

「お前、家はどこだ?」

「シュウ」

「なんだ」

「・・・」

「・・・なんだよ」

「家」

「は?」

「私の家、シュウの家なの」

「は?」

なにいってんだコイツは。

「いやいや、借家だから俺の家には俺しか居ないぞ」

「今日からお世話になるの」

「なんでだよ」

「私、家無いの」

「・・・」

開いた口が塞がらないとはこの事か。

次回からミルもレギュラーですね。ようやくヒロインを誕生させられて良かったです。

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