俺、進みます。
「ふー、倒した倒した!」
肩をぐるぐると回し、ストレッチ紛いの事をする。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
なんだ、ガルド・バース・ドラゴンはもう倒したぞ?
見やると、兵士は皆唖然としていた。
「なんだよ、どーしたんだよみんな?・・・まあ、それにしても、”思ったより弱くて”助かったなー」
そう、今回の敵、ガルド・バース・ドラゴンはあまり手応えが無かったのだ。
確かに攻撃力は途轍もなかったし、火の玉が飛んできた時は死ぬかと思った。
でも、何だろう、もっとこう、わくわくさせてくれる位強く無いと戦ってて面白く無いからなあ。
耐久力、そう、耐久力の問題だなこれは。
俺の弱点は耐久力のある奴と堅い奴だな。・・・まあ、堅い奴は今の攻撃で倒せるだろうけど。
「シュウ・・・本気で言ってるのか・・・?」
セインでさえもなんだか驚いた顔をしている。ほんと、何だってんだよみんなして。
「・・・?当たり前だろ?」
こんなところで嘘ついてどーすんだよ。
だって、だって弱かったんだもん。としか言いようがない気がするぞ。
「・・・ガルド・バース・ドラゴンは、カースドラゴンと双璧を成す、災厄の龍だぞ?」
「そんな異名まであったのか。だとしたらレア泥くらいして欲しかったぜ。また倒すのは面倒だから倒さないけど」
俺的にはよっぽどクロトプリズム・テラリプトンの方が強かったけどな。
「まあどうでも良いけど、もうここに留まる理由も無いよな?それなら俺達はもう行くけど」
「え、あ、ああ」
「ミルと雪月も準備できてるか?」
「うん」
・・・。
「あれ、雪月は?」
「武器握ってるから出てこれないんじゃない」
「なるほど」
言われて武器を置いてみる。
「準備は出来てませんあるじさま」
ぽふんっと煙を上げ、そして出てきた雪月はなんか不機嫌そうだった。
「あ、悪い、すまん雪月」
「・・・大丈夫です。言われてみれば準備するようなものも無かったですし」
「お、おう・・・」
「てことで、俺達はもう行くなー」
言い、馬車に向かう。
「ミル・・・!これを見て、なんとも思わないのか・・・?」
すると、珍しくセインがミルに話しかけた。
「・・・?」
ミルは何のことを問われているのかすらわからなかったようだ。
とかいう俺も、わかってなかったりする。
「シュウが・・・その、一撃でガルド・バース・ドラゴンを倒したことに、何も思わないのか・・・?」
あー、なるほどね、そういうこと。
ここで俺はようやく皆の視線の意味に気が付いた。
確かに普通の兵士からみればこの龍も多少は強いんだもんな。
「・・・いつものことだよ?」
小首を傾げ、普通の事じゃ無いの?とミル。
そして俺達は馬車に乗った。
「悪いな、それじゃ俺達はもう町に目指すな。んじゃまた会えたらそんときはよろしく頼むぜセイン」
手綱を持ち、馬を引く。
そんな、何事も無い様に立ち去る俺達一行を、それこそ化け物が現れたような顔をしてただ見やる兵士達だった。
「お前の知り合いは何者なんだ・・・」
俺達の姿が見えなくなった頃、ガリアスがセインに向け問いかけていた。
「・・・さあ、私にも彼が何者なのか、計り知れませんよ」
「強すぎる・・・」
「なんて威力なんだ」
「何故ああも平然としていられるんだ・・・」
口を開けばあいつはあいつはと、周りの兵士が騒ぎ立てるのをセインは、なんだかなあと、頭を掻いた。
† † † †
「俺、雪月の事もっと詳しく知りたいんだけど」
「えっ、ど、どういう意味っ」
「はい、良いですよ」
馬を歩かせ、後ろのセインらが見えなくなってきた頃、俺はひょんな事から雪月について知りたくなっていた。
何故だかわからないが、俺が雪月について知りたいと言っただけでミルは激しく動揺していた。
「まず、さっき俺が武器握ってた時、なんで出てこられなかったんだ?」
俺は、雪月と合同で百式解放を使った後に、融合しっぱなしだったことに謎を抱き、問う。
「そ、そういうこと・・・」
またもミルが意味不明な反応をとって見せた。
「ええと、元々私と器・・・あるじさまが使用している武器は同じだったじゃないですか」
「ああ」
「レベルが上がって分離した時、あるじさま倒れて、武器を少しの間手放したじゃないですか」
「そうだな」
「その時私が出てきたんですけど、理由は分かりますか?」
「うーん・・・。俺がずっと雪月を握ってたから、鎖のような役割をしてた、とか」
「そうです。・・・あるじさまが、私を縛って・・・出せなくしたんですよ・・・?」
「そういう言い方をするなっ」
「ひうっ」
「・・・シュウのへんたい」
「どー考えたって誤解だるぉぉが!?」
雪月が変な言い方をしたからチョップをお見舞いしてやったら、いつかのミルみたいな変な声を上げた。
それに、なんで誤解と分かってながらミルもそんな事言うんだよ・・・。俺悲しいよ・・・。
「・・・と、そろそろ山超えるな」
「うん」
「そうですね」
遠くに見えていたはずのあの高い山も、近付いて実際に登ってみると案外なだらかなものだ。
一雨来そうだった空も、気が付けば雲の隙間から太陽が覗き込み、それは光のカーテンのように美しいものだった。
「あー、そう、あと一つが、融合なんて事が出来るって事は――――――」
山道の頂に到達した時にはもう、上にあった太陽が地平線の彼方にまで顔を落とし、俺達を赤い光で照らし、遠くに見える海と町に夜を知らせていた。




