俺、斬ります。
そこからは、敵の攻撃をいなし、火の玉はマントが防ぎ、救援を待つ。
流石にこの武器のままじゃ、相手に深手を負わせる事は難しいだろうからな。
俺は龍が繰り広げる怒濤の攻撃一つ一つをカウンターアタックで地道に体力を削っていった。
にしても・・・一撃一撃が重すぎるんだよなコイツ・・・。
それのおかげでこっちの手数でどうにか牽制は出来るんだけどな。
でも、こんな浅い傷じゃ相手は全く動じないな。
それに、さっき切り落とした右前足の切断箇所がもう塞がってきている。
なんっつう治癒力なんだよ・・・。
それならやっぱりこんな弱々しい攻撃じゃ無くて、”本気の一撃”ってのをお見舞いしてやらないといけないな。
と、心の中で決心していたその時、さっき王都に帰っていた兵達だろう、援軍を連れ戻ってきた。
「これで少しは楽になるかね・・・」
俺は敵から目が離せないため誰が、どんな奴が駆けつけたのかは知らないが、せいぜい期待させて貰いますかっと!
「な、ガルド・バース・ドラゴンだと・・・!?」
来た兵が何やら怯えた声を出してやがる。何びびってんだ、とっとと加勢しやがれ。
「これは厳しい戦いになりそうですね・・・」
何を冷静に分析してんだよ、さっさとしろよ、俺今一人だよ、一人で戦ってんだよ!?
「って、シュウじゃないか!」
そうだよシュウだよ、シュウピンチだ・・・え?
・・・え?
なんで名前知ってんだ。
俺なんかそこら辺にいくらでも沸いてるファントムブレイカーだぞ。
俺は呼ばれたことに驚き、つい龍から目を離し、声の方向へと振り向いてしまった。
「・・・お、セインじゃねーかよ!」
なんと、援軍に駆けつけたのはかつての兄弟、セインだった。
「今、恐ろしく強いファントムブレイカーが巨龍をどうにか足止めしていると聞いていたが、君だったのかシュウ」
「そうみたいだな・・・て、話してないでそろそろ加勢してくれ」
龍とセインの両方を見ながら会話出来るほど俺は高スペックじゃ無いんだよ。
「任せてくれ。シュウ、交代だっ!」
「おう任せた!」
そうして、俺とセインは入れ替わり、一時的な休憩をする。
それにしても、今の今まで何でセインみたいな強い騎士を派遣しなかったのか。
俺と同等位の力を持つセインがすぐに駆けつけていればここまで長引かなかっただろうに。
「シュウっ!」
「あるじさまー!」
そんな事を考えていたら、ようやくミルと雪月が到着した。
「おう、待ってたぞ!」
馬を止め、馬車から降りる二人。
「今はセインが足止めしてくれてるんだ」
「来てたんだ」
「ああ。今さっきな。・・・そして雪月。あれの出番だ」
「はいっ」
雪月の頭を撫で、そう伝える。
ようやく、あの技を解禁する時が来たようだな。
† † † †
セイン視点。
呼び出され、戦場に着いてみると、私はとても驚いた。
全兵が皆ただ立ち往生し、その”強いファントムブレイカー”とやらを見守っているだけでは無いか。
・・・情けない。『討伐隊』を名乗っておきながら通りすがりのファントムブレイカーに命を救われているなんて。
その、強いファントムブレイカーが戦っている相手は・・・。
「な、ガルド・バース・ドラゴンだと・・・!?」
一緒に来た、ガリアスという討伐隊員がその名を呼んだ。
「これは厳しい戦いになりそうですね・・・」
圧倒的な威圧感。流石の私でもかなり怖じ気づく程に、その姿は迫力のあるものだった。
それに対し果敢に戦う彼は一体何者なんだ・・・?
「って、シュウじゃないか!」
彼を見た時に、更に驚いた。
何故こんな所に居るのか。
・・・いいや、そんな事は関係ない。
彼はもうガルド・バース・ドラゴンとすら対等にやり合える程に強くなっていたのか。
「・・・そろそろ加勢してくれ」
そう、シュウが切り出した。
彼は未だに私の方が強いとでも思っているのだろうか。
今となっては互角どころか、君よりも私は・・・。
多分、強がりたかったのだろう。私は
「任せてくれ。シュウ、交代だっ!」
なんて叫んでいた。
「おう任せた!」
完全に私を信じ切った様に、彼は私に託す。
私にだってプライドはある。ガルド・バース・ドラゴンを前にして逃げ出すやわではない。
「せいっ!」
飛び出し、左前足に斬りかかる。
・・・そこで私は理解した。
私の剣は、刃は、届いていなかった。
皮を貫くことは無く、傷つけることすら適わなかった。
龍の右前足を見ると、切り落とされ無くなっている。
・・・今いる討伐隊の中では私が一番強い。にも関わらず、歯が立たない。
・・・つまり、切り落としたのは彼、シュウという事になる。
桁違いだ、と私は思った。
彼には素質があるとは思っていた。が、まさかここまでの成長をするなんて思っても見なかった。
武器の性能では無い。私のこれもユニークウエポンだ。
すなわち、彼の潜在能力が私を遙かに凌駕していたと言う事。
・・・彼は、何者なんだ。
† † † †
「ミル、一応バフのかけ直し、頼む」
「わかった」
「雪月、俺の合図で頼む」
「はい」
今はセインが龍を足止めしている。
逃げに専念しているのは、攻撃の機を伺っているからだろうか。
なんにせよ、セインが来てくれて助かったぜ。
俺は改めてセインに感謝していた。
「そんじゃ・・・いっちょお見舞いしてやりますかね」
俺は雪月花を握りしめ、声高らかに叫ぶ。
「セインさんきゅー!後は俺が倒す!そしてみんなも出来るだけ離れててくれ!」
俺は駆け出し、セインと交代する。
「後は任せた、シュウ」
「ああ」
セインは後退し、俺の姿を見守る。
よし、見せてやる。
俺の必殺技をっ。
「百式解放!【ファルシオン】」
「ハイランダー!」
叫ぶと、俺の握っていた武器は消え、雪月も光学迷彩の様に消えていった。
そして、目の前にとても大きな、所謂大剣が現れる。
その柄を右手で掴み、両手で構える。
・・・行くぞ。
「セイン、お前は彼の知り合いなんだろう!?止めろ、彼はこのままだと食われて死んでしまうぞ!」
「・・・大丈夫ですよ。彼なら必ず、勝ってみせるでしょう」
「そんな馬鹿な!たかがファントムブレイカー如きで太刀打ち出来る相手ではない!」
「さて。どうでしょうね」
地面を大きく踏み込み、天高く飛ぶ。
・・・よかった、ちゃんとみんな離れている。巻き込み事故も無さそうだ。
それじゃ、食らえ。
「幻影斬壊【ファントムブレイク】」
その大剣は真っ黒な靄を纏い、天の雲は更に濃く、深く暗くなったように感じた。
龍に向かい薙ぎ払ったその一撃は、その奥に見える森林、山までもを両断した。
その一撃で、災厄の黒龍、ガルド・バース・ドラゴンは、跡形も無く消え去った。




