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俺、狩ります。

それから2時間程。

俺の眠気もピークに達した頃、雪月がようやく目を覚まし、夜のお守を買って出てくれた。

「ごめんな雪月、俺が寝ている間は、よろしく頼む」

「はい。おやすみなさい、あるじさま」

馬を止め、道の脇に薪をセットし火をつける雪月。

ぼう・・・と燃える火を遠目で見ながら荷物の中から適当に毛布を引っ張って包まり、お手頃なサイズの荷物を枕代わりにして寝ようとしたら。


「・・・っ」

「ん・・・?」


俺の服の裾をちょっとだけくいっと引っ張り、上目遣いでこちらに何か伝えようとするミル。

「どうした・・・ふわあ」

口に手を当て、大きくあくびをする俺。

焚き火の方からバチっとはじける音が鳴り、それに照らされるミルの輪郭。

軽く口をつぐんでは何かを言いかけ、またつぐむ。

頬が赤くなっているのは、焚き火のせいだろうか。


「・・・ひざ、使わないの?」


「・・・っ」


ようやく発した言葉に、ほんの少し胸が高鳴った。

ミルのその優しい言葉に、俺は口を緩め


「お願いしようかな」


といい、荷車で膝を畳んだミルに頭を乗せ、目を閉じた。



「・・・ウ・・・・・き・・・・」



遠ざかる意識の中、ミルが呟いた言葉が何だったのか、俺は分からなかった。



†    †    †    †



「ミル!バフを頼む!雪月は後衛で援護!・・・百式解放・・・【グシスナウタル】アルクス!」

「トゥー・エーゴ・コンフォールタンス・・・」

「百式解放【プロパーガ-ティオ】・・・」




翌日。目を覚ました俺を迎えたのは、慌ただしく俺の名を呼ぶ雪月の声だった。

俺に膝枕しながら一緒に寝てしまっていたミルも同時に起きた。

「あるじさまっ。たいへん、たいへんですっ」

「どうしたんだ・・・」

「あれです、あれ、みてくださいっ」

「ん・・・んなっ!?」

俺はそれを見て、これでもかと言うほどに目を見開いた。


「1、2、3・・・7体、1・・・3体!?」


ゴーレムが7体、サイクロプスが3体もこちらをめがけ歩いてきているではないか。

それに伴うようにガルドウルフ、ブラッディ・ホーンラビット、オークやウルフまでついてきている。

「ミル、雪月、すぐに戦闘準備だ!テラリプトンほどでは無いといえ、気は抜くなよ!」

「はいっ」

「わかったっ」

ガルドウルフなどの取り巻きは問題ないとして、サイクロプスをどう倒すかだな・・・。




そして今に至る。


強弓が全員をものすごい早さで貫通し、取り巻き、ゴーレム4体は霧散させた。

やはりサイクロプスは体力が高そうだ。三体同時に馬の所までやってきたら流石に対処しきれないぞ!

「雪月、ゴーレムは任せた!サイクロプスは俺が刈る!」

「分かりましたっ。・・・短剣演舞【ブレイドダンス】」

ゴーレムに対し、得意の短剣では相性が悪いだろうが、雪月ならどうにかしてくれるだろう。


俺は目測30メートルほどのサイクロプスめがけ駆けだした。

遠くからでも分かるほど隆起した筋肉は、太い幹でさえも真っ二つにへし折ることが出来るという。

捕まれば最後、トマトを潰すが如く簡単に体などはじけ飛ぶことだろう。

体長が3メートルを優に超えるその巨体は、緑色になった人間のように二足歩行で歩いている。

重力の関係だろう、走っている姿はあまり確認されていないが、普通の人間が全力で逃げたとしても早歩き程度で捕らえられる。

馬鹿力で有名な彼らだが、あの巨体の癖、殴る速度は残像が残るほど。

慎重に攻撃の機会を見極めなければな・・・。


ミルのおかげで普通の十倍ほどにまでは見える世界が遅くなる。

俺が早くなっていることの証拠だ。

手始めに体を左右に大きく振り、飛んでみたり早さに緩急をつけてみたり。

サイクロプスは頭が悪いため、大袈裟に混乱している。


今だ。


「そいっ!」

全速力でサイクロプスの足まで”跳び”、太ももからふくらはぎまでを刈る。

「グラァァァァ!」

文字通り怪物のように叫び声を上げ、地面に片膝をつく。


そこからは腕を落とし、全身を痛めつけ、動けなくなった所で首を狩り落とす。

「よし、いったい撃破っ」

青い霧となって消えていった。

「あと二体・・・うげ、まじかよ」

見やると、二体並んだ状態でこちらへと向かっている。

それも早歩きしている。

「これは・・・しんどいな・・・」

休憩する間もなく、俺は武器を握りしめた。



相手は二体だ、さっきと同じ行動で通じるかは分からない。

とりあえずは同時に相手するのでは無く、一体ずつ確実に倒していくのが良いだろう。

「そんじゃあ・・・お前からっ!」

俺から見て左側のサイクロプスから刈ることにする。

ここはあえて殴られやすい正面に入ろう。

そうすると、馬鹿なサイクロプスは・・・。


ビンゴっ。


途轍もない速度で殴打をかましてくる。

到底人間には反応出来ないスピード。

この距離感で逃げられる者など居ないだろう。


・・・俺以外はな。


復習してみよう。

問題。俺の能力は?



そう、動体視力アップと運動神経アップ。



サイクロプスの目は完全に「殺ッタ・・・」って目になってるが、残念だったな。

この程度、テラリプトンのレーザーに比べれば全然遅いんだよっ!


俺はサイクロプスのでっかい拳を半身で避け、回転しながら手首を切り落とす。


躱された上に手が無くなったという事が全く理解出来ないサイクロプスの後ろに回り、アキレス腱を削ぎ落とす。

これで動きを封じ、もう一体の方も同じように狩る。


殴りかかってきたその手を躱し、即座に脇下まで潜り込み、肩を落として首ちょんぱ。

地面に伏せてるもう一体の首も刈り取り、試合終了。



「・・・ふう」

正直どうなるか分からなかったけど、思ったよりは弱くて助かった。

「お疲れ様です、あるじさまっ」

雪月の方もちょうど終わったみたいだ。トコトコと小走りでこちらに来る。

「ああ。ミルもさんきゅ」

「うん」

ミルは落ち着いた感じで歩いてきている。

絵面としては、お父さんの元へ無邪気に走る子供と、それを見守るお母さん、みたいな。

別に俺達はそんな歳じゃ無い・・・事もないのか。

「よし、金貨とアイテム集めるぞ」



それにしても不思議な話だ。

本来、ゴーレムもサイクロプスもこんな集団で出くわすことなどないのだ。

一体でさえ危険なこいつらが複数で現れなんてすれば、普通のパーティじゃすぐに壊滅するだろう。

ほかのファントムだってそうだ。今の俺達にとっては相手ではないが、あんな集団で山の方からくるなんて、何か強大な敵から逃げてるみたいに・・・。


・・・。


まあ、詳しい事は分からないが、何にせよ、今後の旅も注意するべきだろうな。





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