俺、暇です。
「ん~・・・。んーん~・・・。んー?ん~」
「シュウ、どうしたの」
「うん・・・。ん~」
「・・・?」
サイクロプス襲撃のその翌日。
俺はある懸案事項を抱えていた。
「あるじさま、どうしたの?」
「ん~・・・。ん!うんうん!」
「あるじさま?」
「ん、ああ、悪い、どうした?」
「・・・どうしたはこっちのせりふ」
ミルと雪月がこちらを怪訝に見やる。
「昨日、サイクロプス達に襲われただろ?」
「うん」
「で、その時に、グシスナウタルじゃ火力不足を感じた訳だ」
「はい」
「そこで、殲滅力は劣るが、瞬間的な火力の出せる武器を考えてみた」
そう。新しい武器の考案だった。
実際、グシスナウタルでもかなり高いダメージは与えられるだろう。が、やはり相手が強敵になれば攻撃が通りづらくなる訳だ。
つまり、手数で駄目なら一撃の重さで対抗してやろうっていう魂胆だ。
その俺の発言に、二人は「おぉ~」といって手をぱちぱちとさせた。
「それで、どうやってこうげきするの?」
やはりこのロマンのある俺の話にはミルも食いついたようだ。
「ああ。それなんだが・・・」
† † † †
「まあ、こんなところだな」
「いい提案だと思いますっ」
「かっこよさそう・・・」
「そうか、良かった~」
俺が伝えた、少し趣向を凝らした武器変換の仕方は、雪月曰く「出来ます」とのこと。
考えついた当初は結構厳しいものがあるかも知れない、とか、理論上は可能なんだろうけど実際出来るかどうかは不安だ、とか、これは俺が扱えるか以前に雪月に負担がかかるかも知れない、とか。
そんなことを思っていたけど、全く問題ない様だ。
「まあ、これを使うときは、本当にピンチもしくは使うべき時だけにしよう」
「そうですね。環境を破壊してもいやです」
「そ・・・そこまで高い火力がでるのか・・・?」
「冗談です。・・・でも、あるじさま次第で可能にはなるかもです」
「お・・・おう・・・」
・・・今のは聞かなかったことにして、安全に、説明書通りに扱おう・・・。
「実は、もう一つ考え事があるんだが」
俺はそう切り出した折、荷物の中から黒い”あれ”を取り出した。
「・・・?」
「何ですか?」
「・・・このマント、なんだが」
ベートで買った、あの訳ありマントである。
「これを着て、とりあえず一週間過ごしてみようと思う」
このマントは、前述にあった通り”いわくつき”の物品だ。
噂によれば、これに絞殺された奴も居るだとか。
「でもまあ、悪い噂ってのは所詮噂なんだし、問題は無いと思ってる」
その噂とやらを確かめる為に着ている訳でもあるしな。
「シュウがそういうなら・・・良いと思うけど」
「うん・・・。あるじさまがそういうのなら・・・。万が一の時は、私がなんとかしますし」
「おう。そうだな、なんかあったら頼む」
「はい」
そんなこんなで、一週間に及ぶ、黒マント共同生活の記録を綴っていこう。
一日目。
「今日も晴れだなー」
「うん」
「そうですねー」
初日同様、今日も朝から元気よく太陽がおはようを告げに馳せ参じる。
朝ご飯にパンと肉を食べたら馬を引き、目的地を目指す。
「それにしても、こんな平和なものかな」
先日、突如襲来した緑色の彼らと戦って以降、ファントムというファントムに出くわしていない。
プッチーはちらほらと見えるが、あれは小動物みたいなものだ。ウサギと戦わしたらどっちが勝つのか見物のレベルで弱い。
妙に静かで、左に見える森の中にいろんなファントムの気配を感じる。
森には大蛇が居るらしいから、低級のファントムは滅多に近づかないと聞いたが。
「まー、動かなくて良いならありがたい話だけど」
「シュウ、ニート発言」
「ふふっ」
「なんだよ、戦わないことは良いことだろー?」
なんて、三人仲良く操縦席に肩を並べながら話していた。
二日目。
「違う違う、小指はクロスさせて、中指は歯だよ歯」
「えぇ~、難しいです・・・」
「できた」
「うおっ!なんそれもはや芸術じゃん」
「だめあるじさまっ、小指が攣る・・・」
今はみんなで手を使って『カエル』を作っていた。
いわゆる手遊びって奴で、昔母から教えて貰ったのを暇つぶしにたまたまやってみたら雪月が思いっきり食いついた。
「ミルのはもう次元が違いすぎるな。大道芸人とかになれば一儲けできるなこれ」
意外なことに、ミルはとても簡単そうにカエルを作って見せたが、雪月は手先が案外不器用な様だ。
「えっへん」
「うぅ・・・やってみたい・・・」
「ま、まあ、雪月のも一応カメムシに見えなくも無いしな・・・」
「私が作ってるのはカエルですっ」
どう見てもカエルには見えないそれを、みんなで笑っていた。
三日目。
「あ~。おまえせなかおっきいな~・・・」
「あれは?」
「うーん・・・アイスクリーム?」
「さっきもアイスクリームって言ってた」
「ぜんぶアイスクリームにしか見えないです・・・」
俺は馬の背中にまたがり、背中の上で寝そべっていた。
雪月とミルは流れる雲が何に見えるか、とかいってきゃっきゃと女子トークとやらを繰り広げていた。
マントが黒いからか、途中から直に日光を浴びていた背中は温かいと言うより熱くなって、結局荷車の中に退避したのだった。
四日目。
「あるじさま、オークがこっちにむかって走ってきてます」
「ん・・・ほんとだ・・・」
久しぶりに荷馬を襲ってきたオーク。
適当にそこらに落ちている石を拾って
「んー、そいっ」
「グイィ!」
適当に倒す。
「シュウ、暇」
「俺も暇ー」
「私も暇です」
・・・。
四日目にして、既にやることを失っていた。
五日目。
「いただきます」
「ごちそうさまでした」
「いただきます」
「ごちそうさまでした」
「いただきます」
「ごちそうさまでした」
「おやすみなさい」
五日目にして、移動するニートになっていた。
六日目。
特になし。
七日目、最終日。
・・・最終日ということ以外には特になし。
・・・まあ、明日からちゃんと動くし?




