俺、悶えます。
「なん・・・だって?」
自分の耳がおかしくなったのか腐ったのか、俺が言われるはずのない言葉を聞いた気が・・・。
「この間見た時から、シュウさんが好きです・・・」
目の前のグラマーなお姉さんが俺に対して恋愛感情を抱いていると、そういってるのか?
「その、何で俺?」
俺はこの街において最悪なイメージしかないはずなのだが。
街のごろつきを民家にぶっ飛ばしたり腕切り落としたり。我ながらに最低な振舞いだよな・・・。
「街の皆がどうすることもできなくて困ってたカーバン達・・・あのシュウさんに絡んでいた3人組を一瞬で無力化しましたし、テラリプトン・・・?とかっていうファントムをシュウさんが倒したって、今この話で街は持ちきりなんですよぉ」
紡ぐ言葉に合わせて体を動かし百面相しながら俺を誉め倒す彼女。
「シュウさんが倒してくれなかったらって思うと・・・。シュウさんはこの街の救世主さまですねっ」
「・・・」
聞いて驚く。俺はそんな評価を下されてたのか。
皆俺の過去を知っているはずだ。能力も、地位も、名誉も、誰よりも底辺にいた俺を。知っているはずだ。
俺はそこで嘆息する。
「言っておくがあれは全部俺の為だ。ごろつきを倒したのはムカついたからで、テラリプトンを倒したのも金のためだ。みんなが思い描く理想のヒーロー像とは全く異なる、限りなく一般人な発想や才覚で見出した結果だ。変に期待してガッカリされるのも面倒だしこれだけは言っておくぞ」
詭弁だってことは分かってるけどこういっておかなければまた変な誤解が生まれるかも知れない。
「その包み隠さない堂々としたところも魅力ですよ?」
おいおい折角めんどくさい長台詞吐いて幻滅させようとしたのに何でプラス査定されなきゃならんのか。
「いやいやいや、だって俺だぜ?あの、能力偏差値最底辺の俺だぜ?そんな奴とかかわってるとろくな目に合わないって」
はぁ~・・・自分で出した言葉にめちゃ傷つくんだが。
それに対し彼女は
「そんな方が街を救ったからかっこいいんですよ?そんな方だから好きになったんです」
「あ・・・う」
なんてことを言ってのける。
やめてそんな真顔で見ないで。そんなに真剣に見つめられたら何か解決しなきゃいけなくなりそうじゃないか。・・・私、気になります!とか言わないでね?すきになります。す、気になります。・・・なんちゃって。
アホか。
「わかった、わかったからとりあえず布団洗濯してくれませんかね」
もうそろそろ腕がパンプアップされすぎてポーズ決めちゃいそうだわ。いや嘘だけど。
「あっ、そ、そうですよね、すいません」
あはは・・・と無理矢理笑いながら布団を受け取る。
「はあ、じゃまあ夕方ごろに取りに来るから、それまでにお願いできるか?」
頭をぽりぽり掻きながら問う。
「はい・・・」
何か言いたそうにしてるが、ここは逃げよう。
「そ。それじゃな・・・」
彼女から踵を返し、ドアに手を・・・
「あのっ!返事は!」
掛けようとした時、やはりと言うべきか、案の定必死に呼び止め、うるっとした目で答えを待ってる彼女に俺は。
「・・・のー・・・だよ」
そう答え出て行った。
† † † †
「・・・」
ふー!あっぶね!何カッコつけてんだよ俺!
店を出たすぐあと、最後に発した自分のキザすぎる言葉に、これでもかというほどに悶えていた。
「ぬあぁあぁああぁ~」
頭を抱え羞恥に苦しみ先程の”あやまち”を悔いる。
ああこれを何と表現したものか。消し去りたい過去、永遠に滅却したい歴史。真っ黒な過去。
黒歴史とでも名付けよう。もうこんな思い出すだけで恥ずかしくなる言葉は言わないでこう。
なにが・・・のー・・・だよ。だよ!かっこつけんなばーか!
ああもう嫌だ。布団取りに来たくない。あの人と会ったら体がよじれるくらい悶えそう。
ただ一人、誰に知られるでもなく早朝に奇声を発しながら帰路につくのであった。




