俺、寝落ちます。
「ただいま・・・」
頭がまだ沸騰してるほど熱く紅くなっている中、戦場で瀕死になったかにボロボロな状態で家に入る。
「まあ・・・だよな」
当然ミルも雪月も起きておらず、変化と言えば朝よりも多少明るくなった程度だ。
静寂に包まれる中、リビング中心の四人掛けテーブルの椅子に座り、今までを振り返っていた。
† † † †
ミルと出会って大体2週間ほど。
先日グリズリーに殺されかけ、セインから熱い指導を受けていた。
「それにしても、よくこんな短期間で彼女と親しくなったな、シュウ」
戦闘後の息抜きにと、セインが川で汲み煮沸した水を飲みながらそう聞かれる。
「いやまあ、あいつが俺のストーカーだったわけで、びっくりするくらい俺の事知ってたんだよ。だから何つーか、出会ってすぐに打ち解けられたな」
ミルのやつ、オークに襲われてたんだよな。そこからずっとこんな感じか。
「はは、そこで君は気味が悪いと思わなかったんだな」
まあ、そりゃ陰で付きまとわれるのはなんか嫌な感じするけど、
「・・・可愛かった・・・しな」
第一印象は見た目で決まるって、こういう事なんだろうな。
「なかなかに素直なんだな、君は」
ただ座っているだけなのに様になっているセインになんか無性に腹が立ってきたのを抑え、そんなんじゃねーよと呟き、小屋へと戻っていった。
きっと見た目だけじゃなくて、あいつの過去を聞いたから、今こうしてミルとやっていけてんだろうな。
「シュウ、作ってみたの」
「こ、これは・・・」
「お肉と野菜の炒め物」
夜、俺の寝泊まりしてる部屋に来たと思ったら、料理なんか作ってきたミル。
「これが、肉と野菜・・・」
目の前の惨状を出来るだけ簡潔に伝えようか。
黒だ。真っ黒だった。
「何を・・・炒めたって?」
「お肉と野菜」
肉は辛うじてなんか真っ黒なとても固そうな物体があるからこれだろうとはわかる。でも野菜の要素が無い。無いというか、もう消えた、どこかに消えてるなこれは。
「あ・・・味付けは?」
「うーん・・・シュガー・・・?って書かれた塩でお肉を揉んでそのお塩で炒めたの」
じゃあシュガーなんだろ、砂糖じゃねえかよ。
「・・・はやくたべて」
拷問かよ!あほ、あほなのかコイツは。てかよくこんなものを持ってこれたな!作った段階で「あれ、おかしい」って思わねえのかよ!真っ黒、真っ黒だからねこれ!
何でそんなもぞもぞしてんの。何で少し照れてんの。え、ほんとに食べんの?
「・・・」
よし、覚悟は決まった。母さん、もしかしたら会えるかもしれないな。
「頂きます・・・頂きます」
カハっ。
「シュウ、シュウ?どうしたの?そんなにおいしかったの?」
あ、あぁ、お母さん、お母さんがいる・・・。
今そっちに行くよ・・・。
”だめよシュウ、あと一回我慢しなさい”
鬼かよ母さん!
「・・・はっ!」
「そんなに美味しかった?」
笑顔が無垢ですねミルさん。
そういやこいつなんか自分も役に立ちたいとか言ってたよな。
「アイナが料理できたはずだ、そこでスキルアップするべきじゃないか、と思うんだ」
そこからミルは役に立ちたくて料理を勉強するようになった。次食べると俺はご臨終するみたいだから、ほんと、頑張って覚えてください。
シュウ、シュウ?
・・・。
シュウ。
なんだよ、なんか用かよ。
あるじさま。
雪月もどうしたんだよ。
・・・。
「痛!・・・ん?」
体に痛みが走ったと思ったらミルにほっぺをつねられていた。
「なんでリビングで寝てるの」
思い出を振り返っていたら寝ちゃってたか。
「・・・と、悪い、今何時くらいだ」
「9時頃です」
雪月が答える。
「そっか・・・今から行くか?」
9時頃なら粗方の店は開いてるだろうし、なんなら食べ歩きってのもありだしな。
「お肉食べる」
「おさかな食べたいです」
二人してそんな事を言う。
「お前らは食べることしか頭にないのか」
こんな二人に和み、苦笑する。
「食事することで英気を養うの」
「物は言いようだな」
食べ物に目を輝かせるミルを見ながら、平和だなと感じる。
「よし、んじゃいくか」
変わった二人と街を散策ってのも、悪くないな。
さて、何処に行こうか。
そう思い二人を見るが・・・。
・・・まずは飯、だな。




