俺、起きます。
-20話 俺、起きます-
何かに体を揺さぶられていた。
”おきてください”
・・・。
”あるじさま、おきて”
ん・・・。
”おきてください。あるじさま”
遠く向こうから無機質な少女の声が頭に響く。
”おきてください。おきてください”
あぁ・・・この声は俺のユニークウェポンか。
「んん・・・起きてるぞ・・・」
目を閉じたまま答える。
それと同時、ほっと溜息のような息遣いが聞こえたのち、体の揺さぶりが無くなった。
”あるじさまは戦闘による打撲、挫傷、疲労疲弊によって睡眠状態にありました”
ウェポンがそう伝える。
「そう・・・か・・・」
言いながら閉じていた目をゆっくりと開ける。
明るい日差しが飛び込み、体には布団が掛けられ、カーテンの隙間から、開いている窓の外より流れこむ風が心地よく顔を撫でる。
今は仰向けで天井のシミが目に映る。
俺はゆっくりと、窓の方へと目を向けた。
「リンゴ、剥けました」
白髪のツインテールをした少女がベッドの横の椅子に腰かけていた。
+ + +
「・・・誰だ」
ベッドに腰かけるように座り、白髪の美少女に向け問いかける。
「私はあるじさまと契約した者です」
「・・・誰だ」
「雪月花・百式=幻影です」
「・・・誰だ」
「雪月と、呼んでください」
「・・・誰だ」
「うーん・・・あるじさまの、ユニークウェポンです」
「・・・駄目だ一向に解せん」
この少女は一体何を言ってるんだ。訳が分からん。
「ユニークウェポンが・・・なんだって?」
「わたしのレベルが50になったので、具現化しました」
うんーと、なんて?
起きてすぐだから思考回路が働かないのかも知れない。どうしよう、誰か助けてこの状況どうにかして。
「あぇーと、つまり、お前、ゆづき?は、俺の、あのー、チェーンソーの中身?みたいな」
だめだ、言葉がちぐはぐになって曖昧な表現でしか伝えられない。
「中身ではなく、私自身が雪月花です」
雪月花・・・あぁ、自己紹介の時の名前か。
「あ、いや、でもそこに俺のユニークウェポンならあるし」
窓側、雪月の座っている方とは反対側の、背の低いタンスの上にチェーンソーは乗っている。
「うーん・・・言い方を変えると分岐した、一つが二つに、生まれた子が双子、に近いです」
なるほど、言ってる意味は分からんが意図は理解した。
「つまり、あれもお前も一緒なのか」
「はい」
俺は立ち上がり、タンスの中から鑑定石を取り出した。
やはりまだ先ずの戦いの傷が癒えておらず、動作の一つ一つに痛みが伴う。
鑑定石をウェポンの付近に置き、内容を見やる。
雪月花・百式=幻影★★★Lv51
攻撃力3780
自身の能力値50%アップ
百式開放
鬼神化
skill1 ライトニング・ブラスト(常時)
skill2 セプレーション
と出た。
「ふーん・・・」
「・・・」
「・・・」
まぁ、そうだよな。特に真新しい反応とか出来んよな。もう既に色々聞いてたし。
「何というか、その、これからよろしくな、雪月」
こんなことしか言えない俺を精一杯殴りたい。
「はい。あるじさま」
うーん。
「あるじさまなんて固い言い方しなくていいぞ?」
「それではなんとお呼びすれば?」
どうしようか。ここはやっぱり・・・
「お兄ちゃん、とかな」
「それはいやですあるじさま」
あ、断る事とかあるのね。
「じゃあもう好きに呼んでください・・・」
「決めてほしいです」
「さっき断ったじゃんか」
「もう断らないですから」
「っじゃあおに」
「いやですあるじさま」
「最後まで言わせろよ!」
「ですからそれ以外なら」
「なんでお兄ちゃんが駄目なん・・・」
・・・。
背筋が凍りそうな気がした。
なんでかって?
「・・・その子。誰」
扉を開けて蔑むような目で雪月と俺を見下ろす、お茶をお盆にのせた物を持ったミルが扉の前に立っていたからだ。
・・・誤解だぞ




