俺、勝ちます。
-19話 俺、勝ちます。-
俺は走り出した。テラリプトンめがけ全力で。
今は周りの兵士がターゲットにされている。俺は後ろから飛び、切りかかる。
自分も回りながら傷を与えていく。
硬質な物体が擦れ合う鈍い音。
キィィィン!と耳をつんざく甲高い音が辺りに響く。
かなりの手数攻撃を与えたのにも関わらず障壁が破れる気配すらない。
ついた傷もすぐに修復される。
兵士数人をターゲットにしてたテラリプトンはこちらにターゲットを切り替え、攻撃をし始める。
”ターンレーザーのターゲットに捕捉。足元にて回避を”
手を通り、そう告げられる。
テラリプトンの顔に該当する部分から赤黒い光が見える。それから轟音とともに広範囲のレーザーが自分めがけ飛んでくる。
「くそ・・・っ」
レーザーが通った後の地面は深く抉れ、石が溶岩のように溶けている。
どんだけ高出力なんだよ・・・。
「周りも気を付けろ!これ食らったら体が残んねぇぞ!」
とりあえず注意喚起はしておくが・・・。避けるのは基本無理だろうな。
だから・・・。
「うぉおおおおおお!」
俺が動き回り、常にテラリプトンのターゲットになっておく。
誰よりも動き、誰よりも攻撃する。
しかしすぐに傷は塞がれて・・・。
・・・ん、待てよ?
何か違和感があった。
何故俺が攻撃している間、テラリプトンは反撃しない?
あそこでレーザーが放たれれば躱すのは困難を極めた。しかし、テラリプトンは何もしてこなかった。
何故だ。
”7秒後に速射レーザー。躱してください”
7秒後?随分長いな。なんでそんな後になる?
一連の攻撃が終わり、一旦躱しの体制に入る。
俺の攻撃した箇所がみるみる無傷に・・・。
なんだ?
傷が塞がるのと同時、動力源がより一層深く赤黒さを増していた。
その間テラリプトンは微動だにしない。
そして傷が塞がると顔部分に赤黒い光が見え、俺めがけ弾丸のようにレーザーが降り注ぐ。
それをどうにか避け、思案顔になる。
攻撃最中に反撃は出来ず、傷が塞がる時に動力源が煌く。
もし傷を塞ぐのに動力源の全てを費やさなければいけなかったとして、何故そこまで浅い傷を治すことに必死になるのか。
もしかすると。
一つの考えが出てきた。
これなら可能性はある。よし。
「少しの間皆で耐えてくれ!20秒で良い!」
そう言い周りに振り向く。
「分かりました!よし、やるぞ!」
「おぉ!」
まだ戦える者達が声を上げ、果敢にテラリプトンへ向かっていく。
「・・・助かる」
俺はすぐさまミルのいる場所へ駆けた。
「ホントにいいの?」
「あぁ。これで駄目ならもう諦めるよ」
ははっと笑い、
「だから、頼んだぞ」
ミルの頭をぽんぽんっとする。
「・・・うん」
ミルは目をぎゅっと閉じ、杖を抱くようにして穏やかな顔で俯く。
「でも、死なないでね」
それから上目遣いで身を案じてくれる。
「大丈夫だっての。死なないよ、絶対」
優しく微笑み、それからテラリプトンを見やり、睨み付ける。
「それじゃあ、皆頑張ってるから、行ってくる」
「・・・うん」
俺は三度目の正直だと、テラリプトンへと駆け出した。
「皆待たせた!あとは任せろ!」
「はい!よし、撤収だ!」
声かけと同時に周りの者は散っていく。
「何処見てんだ、相手はこっちだっての!」
言葉と同時、地面を強く蹴り、テラリプトンの顔付近まで跳躍する。
それから流れるように、重力に従いつつテラリプトンを上から下へと切り刻む。
傷ついたテラリプトンは傷の修復を始める。
もし、俺の予想が正しければこの後の行動は・・・。
”7秒後、速射レーザー。躱してください”
ビンゴ。
「・・・っふ。躱さねぇよ」
警告があった後も攻撃を続ける。顔付近から禍々しい色をした光が見えてもお構いなしだ。
普通はこの光を見た瞬間しっかりと躱す体形を取らなければならない。
そうしてテラリプトンの周りに敵がいなくなり、攻撃を受けなくなった時に回復する事により無傷状態を維持していた。
ならばずっと攻撃すればいいだけの話。
俺はテラリプトンの足元を素早く走り回り、全体を切り刻んでいく。
しかし傷は塞がらず、傷ついたままだ。
そう、テラリプトンは今傷を修復する事ができない。攻撃に専念するほかないのだ。それ以外の選択肢では効果がないから。
傷を治してもすぐにまた俺が新しい傷を作る。ならば一旦傷の修復をやめ、攻撃に特化し俺を排除するのが最もベストだ。
”来ます”
足元にいる俺めがけ弾丸のようなレーザーが降り注ぐ。
俺は攻撃するのをやめず、すんでのところでレーザーを躱しつつ、傷をより一層深いものにしていく。
出来るだけ攻撃の食らいづらい死角を突きながらダメージを蓄積させていく。
そうして傷を増やしていった。
そろそろレーザーの止む頃だ。
それまで攻撃し続ける。
そして終わるのと同時、あえてテラリプトンから距離を置く。
敵のいなくなったテラリプトンは傷の修復を始め・・・。
「ミル!今だ!」
「・・・トゥー・エーゴコンフォールタンス・レディド!」
ミルはテラリプトンにバフをかけた。
「な、何やってるんですかミルさん!」
周りの兵士達がミルに向かって吠える。それもそうだ。相手に対し超強力な能力アップのバフを掛けたんだから。
ナイスだミル。
ものすごい数の傷を負ったテラリプトンはその傷を一気に治そうとする。
動力源は今までにないくらい光を放ち、それに伴うように傷が修復する。
予定だったのだろう。
既に処理しきれない程のダメージを食らい、それを全力で修復するテラリプトンに500パーセントのバフを掛ける。当然制御できなくなり爆発的な速さで傷の修復が終わり、追加で途轍もない硬さになったテラリプトンの半透明な外装。
しかし世の中は奇妙なもので。
途轍もなく硬いものに限って。
少しの衝撃で割れてしまうものなんだよ。
俺は腰からナイフを抜き、テラリプトンへと投げる。
刃は見事に数センチほど、浅く刺さった。
ピキ。
と、何か割れるような音がした。
言わずもがな、テラリプトンの外装だ。
ピキっピキピキ。
パリン。
ガシャン。
あれだけ硬かった外装はすべて砕け、動力源が露わになった。
動力源は今もなお輝きを放ち、不気味な何かを感じさせる。
完全に動かなくなったテラリプトン。
しかしまだ終わりではない。
俺は走り出した。
そして動力源を一閃し、チェーンソーを腰に戻す。
ヴォォォォン・・・という音とともに、黒い霧となって消えていった。
騒がしかった先ほどとは対照に、今は静けさが辺り一帯を包み込んだ。
ん・・・違う。静かなんじゃない。聞こえないんだ。
なんで聞こえない・・・?
分からない。でも今は・・・。
ミルのところに行かなきゃ・・・。
バタン。
そこで記憶は途絶えた。




