第7章 侵略の影と戦争の警報
ヴァロン卿の作戦室には、軌道セクターと廃墟となった惑星K11をリアルタイムで映し出す巨大なホログラフィックマップが置かれていた。暗い合金の壁が閉鎖的な雰囲気を強調していたが、扉が閉まった瞬間、室内の空気は一気に重く沈んだ。
ヴァロンはドリアを従えて部屋の中央へ歩み出ると、ローラの方を向き、真剣で率直な口調で言った。
「ローラ、訓練にもしっかり取り組んでくれているようで安心した。だが悪い知らせがある。クリザードの精鋭部隊が、ここへまっすぐ向かっているらしい。ヴィデウの計算では、あと二時間で到着する。君とリーをここから避難させ、安全な場所へ連れ出す必要がある」
ローラの血が凍りついた。顔から血の気が引いた。
「えっ⁉ どうしてアレスが私の居場所を⁉」彼女は震えながら訊ねた。「この艦は不可視で探知不能じゃなかったの?」
「ヴィデウが真実を教えてくれた」ヴァロンは一歩近づいて説明した。「リーの耳の中に、ある装置があるんだ。生まれた日から埋め込まれた、極小のチップだ。実は彼が生まれたとき、髪が赤く、火の精霊クリザードの直系の血筋であることが明らかになった。このチップはスピルリアンの技術で作られており、彼の髪の色を緑に見せるホログラフィックな偽装を施すと同時に、リアルタイムで追跡を続けている」
ローラは両手で頭を抱えた。アレスが赤ん坊を腕に抱いた日の記憶がよみがえり、すべての謎が一気につながった。
「アレス自身は艦隊にいないようだ」ヴァロンは続けた。「だが彼らの追跡装置は、この座標を指し示している」
「私たちが逃げたとしても、この艦の人たち全員が私のせいで危険にさらされるんですね!」ローラは絶望的な面持ちで言った。「K11から離れるよう進路を変えることはできないんですか?」
「無理だ」ドリアが割り込んだ。「この隠れた宙域こそが唯一の安全圏なんだ。これほど大型の艦を動かすには、一時的に不可視シールドを解除しなければならない。そうなればクリザードの同盟国であるスピルリアンにたちまち発見されてしまう」
「最初の計画は、君たちを避難させて進路を変更することだった」ヴァロンが説明した。「道中で待ち伏せし、それからリーのチップを手術で取り除く予定だった」
「ここがみんなにとって一番安全な場所なら、私は残って戦います!」ローラは瞳を輝かせて断言した。「もう逃げません! 今すぐリーのチップを取り除いてください。そして私自身がその装置を持って惑星K11の地表へ降ります! 彼らが艦を襲う代わりに、あの死んだ惑星へ向かうように仕向けます。彼らが欲しいのは私です! 息子の命も、ここにいる皆さんの命も危険にさせません!」
「だめだ」ヴァロンは断固として言い放った。「全員で私の用意した別の隠れ家へ移る」
ドリアはホログラフィックマップのタイムラインを見て焦っていた。
「早く決断を! 議論している間にも時間は過ぎています!」
その瞬間、艦全体を揺るがす轟音が響き渡った。室内の照明が緊急の赤に点滅し、侵略警報が艦内のあらゆる通路に鳴り響いた。
作戦室の扉が勢いよく開き、血を流した通信員が壁にもたれながら駆け込んできた。
「ヴァロン卿! クリザード兵が五人、五大元素それぞれの使い手です! 東区画に侵入しました!」
ローラは顔面蒼白になり、手で口を押さえた。心臓が激しく打ち鳴らされた。
「リー! ララ!」彼女は絶望的に叫んだ。「二人のもとへ行かなきゃ!」
ドリアは訳が分からずヴァロンを見た。
「ですがヴィデウの予測では、到着はあと二時間後ではなかったのですか?」
ヴァロンはパネルに点滅する損害マップを睨み、厳しい表情で拳を握りしめた。
「ヴィデウが予測を外すなどあり得ない……何かがおかしい。急げ!」
――――
艦のための犠牲
赤い警報が艦内をせわしなく点滅し、金属の廊下を血の色に染め上げていた。東区画では、XPの古参兵たちが侵入者を取り囲んで銃を構えていたが、その表情には恐怖がありありと浮かんでいた。
破壊された通路の真ん中に、土の元素を操るクリザード兵が一歩前へ出た。
「お前たちの中にローラが匿われているのは知っている」彼の重々しい声が岩のように響いた。「アレス王の命令だ。彼女を守る者は誰であろうと抹殺せよ。だが今すぐ彼女を引き渡すなら、お前たちの命だけは助けてやる。長旅で疲れているし、早く帰りたい。闘技場の星で戦いが控えているからな。遅れれば賭け金が大損だ。だから私を怒らせるな」
濃い茶色のオーラが彼の体から湧き上がり、艦の合金製の床をひび割れさせた。彼の瞳は獣のような褐色に輝き始めた。そのエネルギーが生み出す重圧はあまりに強く、周囲の兵士たちは息もできず、次々とひざまずいた。
――――
ローラは宿舎の扉を勢いよく開けた。部屋の隅では、幼いリーが赤ん坊のララを腕に抱き、爆音音に怯えて泣く妹をなだめていた。
「リー!」ローラは駆け寄った。「お父さんたちに見つかったの……ちょっと見せて!」
扉が再び開き、友人のアリアナが武器を手に、息を切らして駆け込んできた。
「ローラ! クリザード兵があなたを探し回ってる! 行く手にいる者は誰でも襲われてるわ!」
「アリアナ、お願い!」ローラは必死に頼んだ。「ララを連れて隠れて! 私が何とかする!」
アリアナはためらうことなく赤ん坊を抱き上げた。
「気をつけて、ローラ!」
アリアナが去ると、ローラはリーの頭を両手で包み込んだ。彼女の特殊な能力——精神の読み取りと投影——を使い、息子の記憶の奥へと入り込んだ。数年前、暗い部屋の中でアレスが生まれたばかりの赤ん坊の耳に装置を埋め込んだ、その瞬間まで記憶は遡った。
現実へと戻ると、ローラは黄色いエネルギーで作り出した精密な鉗子を手に、細心の注意を払ってリーの耳の裏から極小チップを取り出した。彼女はそのチップをエネルギーで砕こうとしたが、傷一つつけることができなかった——スピルリアンの技術で作られたその装置は、過酷な任務に耐えるよう堅牢に作られていたのだ。
「リー……壊すことができないわ」ローラは涙を流しながら言った。チップを手のひらに握りしめ、息子を見つめた。「ここにいて。これを持って私が惑星K11へ行ってくる。みんなを危険から守るの。彼らが欲しいのは私なの……あなたの命も、ここにいる誰の命も危険にさせない」
声を震わせながら、彼女は息子の額にキスをした。
「もし私が帰ってこなくても……生き延びて、私の愛する子。お母さんはあなたを愛しているわ」
「いやだ!」リーは目を赤く染めて叫んだ。「僕が戦う! お母さんを守る!」
彼がオーラを解き放つ前に、ローラは手刀を彼の首筋に当て、気絶させた。胸が張り裂ける思いで、彼女はそっと息子をベッドに寝かせ、布をかけると、走って部屋を後にした。
――――
指揮室では、ドリアが苛立ちを込めてヴァロンに向かっていた。
「何もしないんですか⁉ クリザード兵が何十人もの仲間を殺しています!」
「アレスがこの組織の背後に私がいることを知れば、我々の故郷であるXP惑星全体が攻撃され、滅ぼされるのです!」ヴァロンは苦悩に顔を歪めながら答えた。「ライコール、カエル、サエルはどこだ⁉」
「全員、外の任務中です!」
「くそっ……俺が行く!」ヴァロンは立ち上がった。
「だめです!」ドリアが彼の腕を掴んだ。「あなたの言う通りです。我々の母星を危険にさせるわけにはいきません。この艦の兵士は、いつでも命を懸ける覚悟ができています。私が行きます!」
――――
東区画では、爆発の煙が倒れた兵士たちの上にただよっていた。その中から、一人の女性が揺るぎない足取りで歩み出た。
「私が探しているのはここよ!」ローラの声がはっきりと響いた。「さあ、私を捕まえてみなさい!」
雷の元素の使い手が一歩前へ出て、嘲るように笑った。
「ほらほら、噂のローラというわけね。ご主人が待ちわびているわ」
ローラはそれ以上言葉を発することなく、体全体を黄色い輝くエネルギーの鎧で包み込んだ。そして振り返ると、侵入者たちが開けた船体の大きな穴からまっすぐ宇宙空間へ飛び出し、死んだ惑星K11の大気圏へ向かって急降下した。
「追え!」クリザード兵が号令をかけた。
五人の兵士たちは即座に小型の攻撃艇に乗り込むと、彼女のエネルギー反応を追って発進した。
通路に残された生存者たちは、呆然と立ち上がった。一人の女性が船体の穴を睨みつけ、憎しみを込めてつぶやいた。
「ほら見ろ……やっぱりこの女が死を連れてきたんだ」
すぐにドリアが援軍を率いて駆けつけ、周囲を見回した。
「何が起きた⁉ クリザード兵たちはどこへ行った⁉」
「ローラがK11へ降りていきました。クリザード兵は彼女を追っていきました!」その女性は怒りを込めて答えた。「やっぱり彼女は危険な女だった。ここに死を招いたんだ!」
「黙れ!」ドリアの怒鳴り声が響き渡り、女性は思わず縮こまった。「誰一人として分かっていないのか⁉ お前たちが故郷や家族を奪われたように、彼女もすべてを奪われた被害者なんだ! アレスという怪物の犠牲者なんだよ! 彼女は子供たちと共に逃げることもできたはずだ。だが彼女は、自分のせいで皆が危険に遭うのは嫌だと言った! 彼女はここにいたくていたわけじゃない……だが我が子のために、そしてここにいる一人ひとりのために、今こうして命を懸けて外へ出ていったんだ!」
指揮室のモニターでその様子を見ていたヴァロンは、ドリアの言葉を一語一句聞いていた。彼は黙って拳を握りしめ、力の込めすぎで手袋がきしむ音がした。




