第2章 滅びし星の鋼の要塞
回廊の静寂の中、周囲の金属構造から低く安定したエネルギーの唸りが続いていた。ローラは右側の強化ガラスの窓越しに外を眺めた——暗闇の宇宙空間の彼方に、不毛で蒼白な惑星K11の球体が浮かんでいる。
その世界は遥かなる戦争によって徹底的に破壊され尽くした——忘れ去られた死に岩。だからこそ、彼らはここにいたのだ。
彼女のいるこの軍事艦は、五千人以上の戦闘員を収容できる浮かぶ要塞。高度な不可視シールドに包まれ、人の住まわぬこの惑星の軌道に静かに停泊していた。アレスとその配下のクリザード軍が、この壊滅した宙域に抵抗勢力を探しに来るはずはなかった。エックスピアの戦略的指導者であるヴァーロン卿は、七隻存在するとされる秘密艦隊の一つを、極秘裏にこの地に建設したのだ。その存在は、クリザードの支配下にあるエックスピアの一般民衆にさえ隠され続けている。
アレスは、女神ララが定めた古き神聖な法——種族同士の戦いを禁じる掟——をまったく重んじなかった。彼はいかなる神も信仰しない。ただ自らをこの宇宙の至高神として戴くことだけを目指していた。それでもエックスピアがまだ灰燼に帰していない理由は、ただ一つの名に尽きる——ローラ。
あの危機的な時期の記憶が、ゆっくりとローラの心に蘇ってきた。
十七年前、最高裁判決廷での裁きが終わった直後、現実が容赦なく彼女を襲った。彼女はただの裏切られた妻ではなかった。この宇宙が滅ぼそうとしている二人の子供を抱える母親なのだ。
リーはまだ八歳。クリザードの血を引き、父との確執の痕をその身に刻んでいる。ララはまだ一歳の赤ん坊——何も知らぬ純粋さを、何があっても守り抜かねばならない存在。
当時、ヴァーロン卿は安全を確保するため、彼らをK11のこの秘密要塞へと招き入れた。だがヴァーロンは多忙な指導者であり、外交や戦術の指揮に追われ、この艦に長く留まることは稀だった。そんな不安定な状況の中、ドリア長官がローラに近づいてきた。
「ご家族の安全を確かなものにし、組織内の結束を固めるためには、揺るぎない絆が必要です」ドリアは真剣な面持ちで告げた。「あなたの娘ララが成人した暁には、私の息子と結婚させる。この同盟によって、我々の二つの家は共に守られるのです」
当時、味方も頼れず、周囲の者たちが「クリザードの血」と囁く視線に晒されていたローラは、その申し出を受け入れた。リーと幼いララに住まいと食料と安全を確保するための、代償だった。
だが同意したからといって、諦める必要はない。腕の中の赤ん坊を見つめ、隅っこで一人歯を食いしばって稽古するリーの姿を見たとき、ローラは生涯にわたる決意を固めた——私は傍観者ではいない。偏見が私を打ち砕こうとするなら、私はこの艦隊最強で、誰もが一目置く存在になる。
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鋼の砦と死せる星の上の誓い
回廊の静寂の中、周囲の金属構造から低く安定したエネルギーの唸りが続いていた。ローラは右側の強化ガラスの窓越しに外を眺めた——暗闇の宇宙空間の彼方に、不毛で蒼白な惑星K11の球体が浮かんでいる。その世界は遥かなる戦争によって徹底的に破壊され尽くした——忘れ去られた死に岩。
彼女は仮設居住区へと向かった。暗い部屋の中、八歳の小さなリーが、一歳になったばかりの妹ララのベビーベッドの隣で、安らかに眠っていた。二人の穏やかな寝息を見て、ローラの胸にかすかな安らぎが訪れる。リーの布団をそっとかけ直すと、彼女は執務室の方へと歩いていった。
自動扉が軋む音と共に開く。執務卓の前にはドリア長官が立ち、ホログラムの星図を見つめていた。その表情は疲れており、厳かだ。
「ドリア長官」ローラは落ち着いた声で呼びかけた。「ここは一体どこなのですか?それに……奥様のご容体はいかがですか?」
ドリアはため息をつき、ゆっくりと振り返った。その瞳には重いものが宿っている。
「妻は重い病に伏しています、ローラ。予断を許さない状況です……息子が十歳になり、惑星G23へ学びに旅立つまで、あなたの助力と理解が必要です。彼が二十一歳で戻ってくる頃、ララは十八歳になっている。その時が来たら、二人は結婚し、我々の絆は正式に結ばれるのです」
ローラの表情が曇る。まだ記憶に新しい裁判の痛みが、胸をかすかに焼いていた。
「わかりました……」彼女は低い声で答えた。「エックスピアの故郷にはもう帰れないのですから」
「この場所はヴァーロン卿によって極秘裏に設立されました」ドリアは一歩近づいて説明した。「エックスピアの民衆でさえ、この艦の存在を知りません。破壊された世界の軌道に浮かぶ七つの秘密拠点の一つなのです。艦の運営と資源を調達するため、我々は傭兵として小規模な任務を請け負っています。ただし一つだけ絶対の掟がある——クリザード軍と直接戦ってはなりません」
彼はモニターの方へ手を伸ばし、無数の訓練室や施設の映像を映し出した。
「ここに集う者たちは皆、過去の戦争の避難民たちです。我々は彼らを訓練し、秘密裏に軍を育て上げています。最終的な目的は——エックスピアの民が自らの運命を再び自分の手に取り戻すことです」
ローラは眉をひそめ、その構想の大きさに驚いた。
「でも今は平和なのでは……?戦争を起こそうとしているのですか?」
「そうではない」ドリアは静かに訂正した。「だが戦争は必ず来る。アレス王はすべてを支配しようとしているからです。そしてあまり知られていないことがあります——ヴァーロン卿の側近に、ヴィドゥー族の生き残りがいるのです」
ローラは目を見開いた。ヴィドゥー族は伝説的な種族——未来の流れを視る力を持つといわれ、あまりにもその力が恐れられたため、あらゆる帝国に追われ、絶滅の瀬戸際にあるとされていた。
「実はアレスの側にも、ヴィドゥー族の者が仕えています」ドリアは続けた。「だからこそ、どちらも決定的な一打を与えられずにいるのです。互いに相手の手の内を未来視で知っているから。ですが彼らは悪しき存在ではありません。宇宙の均衡を守るため、彼らは時に未来の映像を歪め、隠します。もしどちらか一方が絶対的な力を手にすれば、この宇宙すべてが終わりを迎えるからです」
ローラは一語一句を心に刻んだ。目の前の事実の重さに息をのみながらも、母としての決意は揺るがなかった。彼女は顔を上げ、その瞳に強い決意を宿らせて言った。
「わかりました」ローラは凛とした声で答えた。「私にできることがあれば、力を尽くします。子供たちを守るためなら、何でもする。私には普通の幸せな家庭を築く未来はないのかもしれない……それでも娘ララには、輝かしい未来を与えてやりたい。女神ララの導きを信じ、そのために戦います」




