12.疑念
よろしくお願いします
その後。
流れるようにジョセフィン、さらに巻き込まれるようにセレナの着替えと化粧が行われた。
ルノアはそれをスツールに座って眺める。
この後はジャズバーでの仕事がある。なので、今までの服より着飾った格好で行く予定だ。
ふと、ルノアが横を見ると衣装係の1人が小道具のチェックをしていた。
確か、先程ルノアの下着姿を見た時1番驚いてた人だ。そのおかげで印象に残っていた。
「どうですか?不審な点とかありませんか?」
ルノアは手持ち無沙汰だったので、気さくに話しかけた。
――ビクッ
その金髪の衣装係は、肩を揺らしてルノアを振り返る。
「……え!?」
「…………いえ、最近小道具や衣装に破損があるとジョセフィンから相談されたので」
「あ、ああ!そ、そうですね」
そういって彼女は、チェックを続けながら答える。
「……ええ、今の所問題はなさそうです」
「……そうですか。それは良かったです」
「ルノア〜?」
その時、支度が終わったジョセフィンが話しかけてきた。
「ああ、終わったかい?」
「ええ、準備万端よ。表に車を待たせてるから行きましょう」
「わかった、行こう」
そう言ってルノアは立ち上がり、金髪の女性に挨拶をする。
「では。メイクとかありがとうございました」
彼女はルノアの方を見ずに言う。
「……ええ、いってらっしゃいませ」
そして、ルノア、ジョセフィン、セレナの3人は衣装部屋を後にする。
ルノアは、
扉が閉まりきる最後まで、
背中を向けた金髪の衣装係を見ていた。
レコード会社の表には、ハイヤーが待っていた。ルノアもドレスとヒールを履いているので、今回は運転を任せている。
運転手が扉を開けてくれた。
「やぁ、ジョセフィンさん。本日もいい夜ですね」
「ええ、そうね。いつもありがとう。今日も任せるわ」
「おや?」
そこで彼女は、ルノアを見て片眉を上げた。
「今日は、新しいお連れさんがいるんですね」
「ええ、友達のルノアよ」
ジョセフィンは、ルノアを紹介しながら後部座席に乗り込む。
「はじめまして。よろしくお願いします」
ルノアも挨拶して乗り込んだ。
3人が乗り込んだ後、運転手も前席に乗り込んでエンジンをかける。
「では出発します」
「お願いします」
と、セレナが代表して言う。
今は夕方。
車は帰路に着く人々を片目に、穏やかにジャズバーへ向かう。
西日が街の尖塔やドーム型の屋根を照らし、幾何学的な影をレンガの道に落とす。
「運転手さんとは長いんだね?」
ルノアが気になってたことを聞いた。
「ええ、彼女は私がデビューした当時から会社と契約してるのよ」
「私の会社も、当時はまだまだ参入したばかりでした」
運転手は、チラッとバックミラー越しにルノアを見る。
「そんな時、ジョセフィンさんの会社と提携をさせて貰いました。そして、ここまで一緒に来たという感じですね」
「なるほど、持ちつ持たれつ、と言うやつですね」
「ええ、そういうことです」
運転手は頷く。
「さっきの衣装係の方々も長いのかい?」
と、ルノアが別の質問をする。
「彼女たち?ええ、あの子たちも私がデビューした辺りからだったかしら?」
ジョセフィンは、セレナに確認しながら返答する。
「クララだけは違いますね。彼女は1年くらい前からです」
セレナが答える。
「クララ?」
「ほら、さっきあなたが話してた金髪の子よ」
ルノアは頷く。
「……なるほど。クララさんはどういった経由で雇われたか分かるかな?」
「どうだったかしら、セレナ」
セレナは戸惑ったように答える。
「いえ、分かりますが、流石に個人情報なので」
「ああ、すまない。確かに気軽に教えれないよね」
ルノアはすぐに謝った。
「それに、なぜそんな事を聞かれるんですか?」
セレナが聞く。
「いやなに、さっき話した際にとても気さくに答えてくれてね。仲良くなれたらいいな、と思ったんだよ」
平然と嘘をつくルノア。
「なるほど」
と、素直に納得するセレナ。
「……あなた、まさか狙ってるんじゃないでしょうね」
ジョセフィンは、どこか不機嫌そうにルノアを睨め付けた。
「いやいや、勘違いだよ」
ルノアは焦ってジョセフィンを宥める。
「「狙う?」」
セレナと運転手は、分かってないのか揃って首を傾げる。
「着きましたよ、お三方」
車は、歓楽街の中心地にあるジャズバーに着いた。
ルノアは、ジョセフィンの降車をエスコートしてから店を見上げる。
高級な雰囲気を醸し出す佇まいで、看板にはザ・ベルベットと書いてある。
嫉妬してくれる女の子はお好きですか?




