第86話 恋愛観
飛行船の件は時間がかかるのでしばらくは保留というよりこちらではどうしようもないというのが実情である。
話し合いを終えて夕食の時間、終始エルナがこちらを見て百面相状態だったので非常に気まずかったが…まぁそのうち慣れるだろう。
実際の所、エルナを産んでから数十年で亡くなったということだったので一度身体の精密検査は受けてもらった方がいいのかもしれないが…。
色々と問題が大きすぎる。
血の一滴、髪の毛一本にしてもこの世界には存在しないサンプルであり異物だ。
どういう影響があるかわからない。
正直金の問題であれば寄ってくる輩も絞られるし、対処に関してもなんとかなるのだが…こと寿命や若返りなどが関わってくると途端に対処が難しくなる。
母が退職する前に病院で検査してもらうのが一番かもしれないなぁとも思えてきた。
こちらにしては慎重に運ぶ必要があるので色々と根回しも含めて終えた後だ。
そしてその前に色々とこちらもイベントが重なっている。
あと2週間ほどで陸上の地区大会。
そこから1ヶ月ちょっとでインターハイである。
「学生時代は運動全然だったからなぁ…」
お金を増やすのが楽しすぎてその手の行事には参加していなかったので初めての経験である。
競技者として参加したかったという訳では無いが、あの感動自体は少し味わってみたいと感じていたので非常にこの機会は有難いと思っている。
まぁ実際の所、アヤネに勝てる人はいないと思うのでその手の感動はなさそうだ。
「そう、考えると先輩をいかに勝たせるかが俺にとっての成功になるのか…」
アヤネは放っておいても優勝すると思うので先輩を勝たせる事が出来た時が俺にとっての成功になるのかもしれない。
「…もう少ししっかり戦略等も含めて確認するか…」
実際に身体の勉強はしたが競技における戦略面などは勉強していない。
なんせどっかの人は戦略をフィジカルでぶっ壊すからだ。
勉強する必要がなかったという側面が大きい。
「やるからには徹底するか」
と勉強を始める。
それから少ししてからドアがノックされる。
「どうぞー」
一応、鍵はかかるが鍵をかけていないのでそのまま声をかけて招く。
まぁノックする人物は限られる。
「どうも…」
来客はエルナだった。
ちなみに祖母、母、アヤネはノックをしない。
「入っちゃダメな状態なら鍵をかけておきなさい」
との事だ。
いやいやいや…そういう問題?とも思ったが元々の家には鍵なんてついていなかったので仕方ないのかもしれない。
思春期の男なのだから少しは気を使って欲しいもんである。
ちなみに事を致すのは深夜なので基本は鍵はかけることは先程のリモートで話している時などだけである。
「どうしました?」
2人きりになると少し意識してしまう。
ってか風呂上がりか…鼻腔をくすぐるいい香りが漂ってくる。
今まで意識したことなかったのに身体の接触があったからといって意識するなんて童貞がすぎるぞ、俺。
「ええっとちょっと…というかどうしても確認しておきたい事があって」
「はい…」
非常に言いにくそうにしているのでこちらも不安になってくる。
エルナは、大きく深呼吸をした上で声を発した。
「昨日からずっとあなたの事が頭から離れなくて…」
(これもしかして…)
「だけど、こんな遥かに歳上の私にはそんな資格はないと思うのよ…でもその私と子作りして欲しいの!」
ん????????
性知識を得た上でその結論に辿りつくのはどういう思考回路なんだ…。
「えっと…なんで子作り?」
「母が初潮が来てから100年ほどで亡くなった事を考えると私もそうなる可能性があるわけじゃない…それなら子供を残しておきたくって…」
ん??????
さらに不可思議な情報が出てきた。
「あれ、エルナさんのお母さんは産んでからすぐ亡くなったんじゃ…」
「ええ、私を産んでから20年位で亡くなったわ」
時間感覚ぅううううううう!!!
「その初潮を病気だと思ってから子供を作ろうと思ったって聞きましたけど…」
「ええ、それから子供を作ろうとして60年以上かかったみたいで…」
なるほど…。
そこも時間感覚がバグっている訳ですね。はい。
「それを考えるとすぐにでも子作りを始めないと…」
それで焦って俺に子作りを頼んできた訳ですか…。
それを頼める位には好いてくれいるのは嬉しく思うが、さすがにそれに素直に飛びつくほど俺は飢えてはいない。
というより、2人生分の童貞にはそれはハードルが高すぎる。
「ええっと結論から伝えますけどまず現段階ではNOです」
「やっぱり、そうよね…こんな年寄りじゃ…」
とあからさまに落ち込んでいる。
「いや、そうじゃなくて子供を作るならちゃんとお付き合いをして、そのお互いに好き合ってから色々と順序立ててからが…望ましいというか…」
甘いこと言ってんじゃねぇと思われるかもしれないが…子供を作る覚悟なんて出来るわけがない。
今世はまだ10代の子供だ。
今のままでは世間的にも許されない。
エルナはナニソレという顔を浮かべている。
くっそ!恋愛初心者というかそっち方面の知識が幼稚園児以下かもしれない。
「わかりました、とりあえずですね…このアカウントでログインしてこのゲームをやってください」
とパソコン画面を見せて説明する。
「これはなに!?」
やればわかります。
ほんとは高校生がやってはまずいゲームなのだが、まぁそこは許して欲しい。
という訳で俺の手持ちのゲームをやってもらい恋愛に関する知識を育んで欲しい。
アブノーマルなものはないので問題ないはずだ。
「このゲームをやった後に、自分の言ったセリフの間違いに気付いたらまた話をしましょう」
と言ってエルナを追い出してから俺は風呂へと向かった。
心頭滅却しなければ…心がざわざわしていた。




