第72話 打ち上げ
翌日、アヤネは母の迎えもあったので日曜の朝にやってきた。
「おつかれ、部活の方は大丈夫だったか?」
「⋯まぁ部活は大丈夫だったけど⋯」
「どうした?」
なにやら言い淀むアヤネにツッコミを入れる。
「兄さんを今度呼んで欲しいって例の先輩が⋯」
「土日じゃなければ別に構わないが」
土日はもう予定が詰まりすぎていて時間が取れない。
「むぅ⋯月曜日の放課後にフォームとかを見て欲しいってさぁ」
「ああ、別に構わないけど」
アヤネは教えるには向かないので俺に聞いてきたのだろう。
もうすぐ大会も近いのでどうせなら良い結果を残して欲しいとも思っている。
それに部内では出来る限り角を立てない為にもいい顔をしておきたい。
「⋯そう、わかった伝えとく」
何やら煮えきらない態度だが、何かあったのだろうか?
まぁ年頃な訳だし色々あるのだろう。
「さて、やりますか」
すでに準備は完了している。
予想通り、組み立て済みの小型ロケットが到着したのですでにセッティング済みである。
「設計図を見て知ってたけどそれでもデカいなぁ⋯」
さすが専門家が設計までしたロケットだ、小型と言っても全長20mもあるので届いた時は驚いたもんだ。
燃料の積み込みは終わったので後は無事に打ち上がるかどうかなのだが⋯。
まぁもし失敗したとしても金を失うだけなのだから安いもんである。
「しかし、この世界でロケットを打ち上げるなんてよく考えたね」
「正直、この星がどうなってるか気になるからな。それに地理が把握出来れば出来る事が増える」
「それに3人には打ち上げ後の姿勢制御をやってもらわないといけないからな。頼むぞ」
性能面では今までの事があるので信頼しているのだが、こちらの世界にはGPS制御などが出来ないので正直不安が残る。
発射後、無事に空に打ち上がるように3人で支えてもらう手筈になっていた。
発射設備もない上に近くにいるわけにもいかないのでここは3人に任せるしかなかった。
「正直、これメイがいなかったら色々無理だったんじゃない?」
「俺がやる予定だったんだけど⋯さすがにここまで出来るようになるのは予定外だったよ」
ロケットのプラグラムも含め、メイにはお世話になりっぱなしである。
「ご迷惑をかけた分はお返ししないといけないので」
どうやらまだ俺を召喚したことを気にしているようだ。
「気にしなくていいって言ってるだろ、それにおかげでこんな面白い事出来てるんだから感謝してる」
「それはそれ、これはこれだから」
「また変な言葉覚えたなぁ」
すでにエルナもメイも翻訳魔法は使用していなかったりする。
脳みその出来が根本的に違う気がする。
数十年分のアドバンテージを恐ろしい勢いで追いついてくるのでほんとに凄い。
メイによる設定も終わり、いよいよ打ち上げである。
俺は発射の操作をするだけで後は3人におまかせである。
可能な限り姿勢を安定させる為に風魔法で保護してもらう事になっている。
そしていよいよ打ち上げ。
とはいえ、俺はボタンというか決定を押していくだけである。
安全のために複数の起動ボタンにわかれているのでそれを押していく。
エンジンに点火されて打ち上がるまでのカウントダウン。
そして0となり打ち上がる。
風魔法のおかげかロケットの性能か⋯まぁどちらにしても無事に打ち上がった。
そしてどんどん高度があがっていく。
目標の高度の到達したタイミングで人工衛星が射出された。
一番最初に離脱したメイが戻ってきて俺と一緒にモニタリングに入る。
そしてブースターによって軌道に乗るための速度まで加速する。
「どう?いけた?」
かなり上空まで風魔法で保護していたアヤネも戻ってきた。
「順調だ⋯っていうかこのロケット高性能過ぎ⋯」
この大きさだと普通は、こんなところまで持つわけがないのだが⋯。
「ほんとにおかしな性能をしてるね⋯どこまでいけるのこのロケット⋯」
「容量もギリギリだったはずなのにな⋯もう一個いけるか?」
「なんとか⋯いけちゃいそう⋯」
ありえないロケットの性能を持ってもう一つの人工衛星も切り離す。
「そっちはサブプランだからエルナ特製の魔法陣による衝撃波で加速できるかどうかかなぁ~エルナ頼んだ」
「了解」
そういってエルナが遠隔で魔法を起動する。
結果として衝撃によって人工衛星が加速する。
本当はブースターを乗せたかったのだがさすがに重量オーバーな上にロケットがそこまで到達できる保証もなかった。
「衛星の通信は?」
「順調に受信中⋯通信も安定してる。まぁ妨害するものなんもないからねぇ」
地球と違って妨害するものが何もないのでかなり通信環境は良いようだ。
これで別大陸は、実は文明が発展してましたとかだったら笑えないのだが⋯。
「地図データもマッピング中」
ほんとにメイ様々である。
これを全部俺1人でやるのはしんどかった。
「それじゃ私達は、片付けしたら魔物狩ってくるね」
「結果をみていなかないのか?」
「どうせ時間かかるでしょ?全部纏まってからみたほうが効率的だし」
といってアヤネとエルナは狩りに向かった。
「まぁまだ色々やることあるからなぁ」
「とりあえず映像自体は順調に受信してるけどもう一つの方は?」
「そっちはサブプランなんだけど上手くいくかなぁ?」
こっちは失敗しても軌道修正などが出来ないのでほんとうに一発勝負である。
「こっちは飛んでっちゃったかもしれんな」
「魔法が強すぎた?」
「かもしれない⋯さすがに無理かぁ」
という訳でもう一つの衛星は軌道から外れてしまったのか上手く通信が出来なかった。
「まぁこの失敗は次につなげよう」
100万を失ったとはいえ大きな成果もあった。
「面白いものが見つかったよ」
とメイに言われて画面を見る。
「おいおい⋯これは大発見だな」
「恐らく、この実験をしなかったら見つけるのは困難でしたね⋯」
それは、新しい大陸の発見だった。




