第67話 契約
とりあえず人工衛星キットを組み立てた物に関してはお墨付きを頂いた。
後は軌道へとどうやって乗せてそもそもどう運用するかという話になってくる。
「一番良いのはロケットに相乗りさせてもらうのが一番だと思うが⋯」
「打ち上げるのはここではないのでその方法は使えなくて⋯」
「ああ、話には聞いているが異世界ってやつかね」
「はい。正直全容すら掴めてないのでこれで世界の全容がつかめればと思いまして」
「実に羨ましい限りだな⋯完全未開拓の星なんて」
「未開拓という訳ではないんですけど、ほとんど未開拓に近いですね」
一応先日ドローンで確認した際に球体であることは確認した。
まぁそもそも地球と同じように太陽だったり星の位置で球体であることはすでにわかっていたのだが⋯。
この事を2人に説明する時は本当に大変だった。
自身の信じていた常識を覆すというのは本当に大変なことだと思い知った。
めんどくさいので教育番組にすべて丸投げをしてようやく理解してくれた。
やはり映像の力は凄い。
「球体であることはわかっています、それに恐らくではありますけど地球と同じように太陽のような星の衛星であることはわかっています」
「なるほど、そういうことなら実際にこちらで使われているロケットでなんとかなるかもしれませんね」
法律などを度外視すれば個人でロケットを作成して飛ばす事は可能だ。
なんなら『通販サイト』にロケットの模型自体は売っていたりするので同じ耐久性をもつロケット自体は手に入る。
「問題は軌道に乗せることでして⋯」
「それは難問ですね⋯基本的に宇宙に届かせることだけであれば難しくはありません。それこそ成層圏を抜けるまでであればロケットじゃなくても気球でもいける」
と何やら色々とプランを考えてくれているようでホワイトボードに書き出している。
「気球⋯それは盲点でした」
「観測も不十分ということであれば気球で上がれるとこまで上がってそこから打ち上げるもしくは軌道に乗せるという手段のほうが安全かもしれません」
なるほど⋯。
「しかし軌道を周回させるとなると推進力もいるのでその推進力を得る方が⋯」
衛星として軌道を周回させようとすると地球の重力に負けないようにする為に推進力が必要となってくる。
一度軌道に乗せてしまえばいいのだが乗せるまでには勢いが必要なのである。
それが宇宙に人工衛星を飛ばすだけではダメな理由な訳だが。
「この人工衛星にエンジンを積んで微調整させる事はできますかね⋯」
「外部出力という形なら出来るかもしれないが⋯」
完成品部分に手をつけるのは怖いので外部パーツで出力を得られるようにするしかない。
この人工衛星キットには簡単な軌道修正用の装置は搭載されている。
しかしこれでは軌道にのる推進力を確保出来ないので外付けするしかない。
「個人で作成できるものなんですかね⋯」
「出来なくはないと思うけどうちで承ろうか?」
「いいんですか!?」
正直そこまで頼むつもりはなかった。
「いいよ、恩人の頼みだし⋯それに未開拓の宇宙なんて興味しか沸かないよ」
「ありがとうございます⋯あっでも予算ってどれくらいかかりますか?手元で動かせるお金だと2億位なんですが⋯」
と言った所で社長が驚き転んでしまった。
「大丈夫ですか!?」
「以前の時も会社の為にポンって出資してくれたとは聞いてますけど⋯今は高校生だよね?」
「ああ、まぁお金は稼いでますのでそれに開拓するならもっとお金はいると思うので正直お金だけあっても仕方ないんですよ。価値あるものに変えなきゃ」
そう金をいくら保有してても金自体は放っておいてもは何も生み出さない。
まぁ銀行に預けておけば利子はつくかもしれないが⋯。
「恐れ入るね⋯ほんとにお金については心配しないで大丈夫。正直私も興味があるし自己資金から出させてもらうよ」
「そんな、悪いですよ」
「なーに、もし成功したらその成果を教えて欲しいそれだけでも充分な価値があるのさ」
と言われてしまった。
しかし、その言葉をそのまま受け取る訳にはいかない。
「タダはダメです。それでは仕事ではなくなってしまいますから、とりあえず1000万は受け取ってください」
と言い張り、受け取らない社長と不毛なやりとりを繰り返した後に拉致があかないので社長夫人の所にいき小切手を渡した。
「あなたは受け取りたくないかもしれないけどお金を受け取る事で立派な契約になるのですから仕事としてしっかりやりなさい」
と夫人からお叱りを受け渋々受け取ってくれた。
「ありがとうございます」
「本当は私も受け取りたくはないのですが⋯開発資金の出資という形で処理させて頂きます。成果次第では還元致しますのであしからず」
と言われてしまい、この人はやり手だと認識した。
なんやかんや理由をつけてかえされそうな気がしていた。
その後、社長といろいろと詰めながら開発の目処は立った。
「それで期間なのですが⋯」
「そうだな⋯とりあえず2週間で形の目処を立てて1ヶ月後には完成できると思う」
「そんなに早くですか!?」
正直早くても半年位かかるかと思っていた。
「何をいってるんだい、出資をしてもらった以上は仕事。しっかりやらせてもらうよ」
と言われてしまった。
寄付とかのがよかったかもしれないと少し後悔していた。
すっかり話し込んだせいもあってすでに17時を回っていた。
エルナ達も仕事を終えたようで社長室にて集合する。
「仕事の方はどうだった?」
「なんとかなりそうです」
「私はもう少し時間かかるかも⋯」
メイは大丈夫そうでエルナは少し自身なさげであった。
「大丈夫ですよ、正直メイさんが異常なだけでエルナさんもかなり覚えが良かったです」
事務系とは聞いていたのだが詳しい業務内容は聞いていなかったが⋯何をしたのだろうか?
「今日は簡単なプログラミングを覚えてもらいましたが2人とも基礎はばっちりです。さすが英語が出来るだけ違いますね」
「プログラミングを教えたのか?」
となぜか社長が驚いていた。
「最初はエクセルとかの事務処理を教えてたんだけどすぐにマスターしちゃったからちょっとプログラミングもやってもらうかなって一応技能実習生って扱いでしょ?」
「すみません、娘も本来は技術者でして⋯お二人には簡単な事務処理だけ頼む予定だったのですが⋯」
と社長が恐縮していた。
「是非、また教えてください!」
「今度は私も出来るようにしときます!」
と2人は張り切っているようだ。
「2人も喜んでいるようですし技能実習生の扱いなのですからどんどん教えてやってください」
正直俺には2人に教えられるほどのプログラミングの知識はない。
経済以外は広く浅くが信条の為、専門分野以外は教えるのは難しい。
「こちらこそ、こんなに覚えの早いならそれこそすぐに戦力としてカウントしてもいいかもしれません」
とお墨付きをもらえるほどのようだ。
「そういうことなら⋯うーん。一つ相談があるのですが」
と社長を含め3人に相談をしたのは転移陣の件だった。
本来は月1の出勤だけであれば設置する予定はなかったのだが⋯。
本人達も学ぶ意欲を見せている上にここにくる道中でもトラブルに巻き込まれそうな空気をひしひしと感じていたので出来ればこの近くで家を借りて転移陣を設置することも視野に入れていた。
「これを設置させて頂ければ自宅からここまで一瞬でこれるのですが⋯」
秘匿するべきであるというのは重々承知しているのだが、伝えるべき人には伝えておいたが方が都合がいいのは確かだ。
今日話してみてこの人達は信用出来ると判断した結果であった。
それにこれに至っては悪用される心配はない。
「これって私でも使えるの?」
と尋ねられたが⋯。
「残念ながら作成時に登録した人しか使えないので他の人には使えません」
「そうなのね⋯残念」
「設置するのに都合が良い社員寮などの1室を貸してもらえればとおもったのですが⋯」
「それなら家で良いんじゃない?どうせ私もこそこそ出勤してる訳だし一緒に出勤するよ」
と言ってくれた。
「セキュリティ的にそれは問題があるのでは⋯」
「良いの良いの、それに私の部屋は別宅にあるしそこなら問題ないでしょ?」
と言われてしまった。
「あ、そういえば自己紹介をしてなかったわね。エルナさん達とは教える時にしたから忘れていたわ。司馬ナギサよ、よろしくね」
「進藤隼人です、こちらこそよろしくお願いします」
と握手を交わした。
「さてという訳で自宅に招待するわ、どうせお父さん達はまだ帰れないんでしょ?私が送ってくから」
という訳で自宅に招待される事になった。




