第33話 メイ
泣きわめきながらずっと謝罪を口にする彼女を宥め、ようやく会話が出来るようになるまで時間がかかった。
「ほらメイ、謝罪はいいけど、とりあえず事情を説明しなさい」
泣きじゃくるメイを宥めながら話を振るエルナ。
ひっくひっくと泣いている状態を見ると、とても三賢者の1人とは思えない。
次第に落ち着いていき静かに口を開いた。
「あなたを召喚したのはあたしです…突然召喚してしまって申し訳ございませんでした…」
と深々と頭を下げた。
ちなみに彼女が泣いている間に家の中に移動してきている。
そしてここはリビングだ。
彼女は全然気付いていなかったが…。
「生きててよかったけど、引き篭もりのあんたがよくここまで来れたわね…」
「隠れるのは得意なので…隠れながらなんとか…それに私の責任ですし」
事情を説明してもらうことになった。
「彼は今のこの世界の事は?」
「説明してあるわよ、私達の現状もね」
「なるほど、ではその説明を省きますが…現状を打破する為に勇者の血液を使って勇者を召喚する為に魔法陣に組み込みました」
「それで召喚しようとしたと…」
正直いい気はしていなかった。
「身勝手な行為なのは重々承知しているのですが私だけでは現状どうすることも出来ず…」
「まぁあなたはずっと隠れてる訳にもいかないものね」
「そうなんですか?」
「メイはあんまり強くないのよ。隠れるのは得意だけど戦闘力はゴミだからこの子」
「正直日々の食事もままならなくなってきてまして…」
と身の上話を聞かされた。
四英雄から逃れるには四大国の外にいる必要があり、そこで生活するにはそれなり…いやかなりの強さがいる。
食料を調達するにしても魔物を倒す必要があり、その魔物を倒す強さを持ち合わせていない。
「てっきりあの海の洞窟に隠れてるもんだと思ったのだけど…」
「あそこは真っ先に見つかったからすぐに逃げたよ」
終の住処にするつもりだったそうだが、出かけている間に奇襲されたそうで間一髪で逃げ出したそうだ。
「まぁあいつらも知ってる場所だったししょうがないか」
「それに私は水場が必要なので…」
「逃げる場所が限られると」
「はい…」
なるほど向こうとしても水場を探し回れば良いわけか。
「だから私は水場の近くに住んでないのよ」
とエルナが水場の近くに住んでいない理由を教えてくれた。
この世界、実は水場はかなり限られる。
大きな湖や川はそれそのものが生活基盤となっており、ほぼ確実に人が住んでいる。
国外の場合は魔物が生息している。
つまり生活圏がない。
「状況はわかりましたけど…」
「わかってます。勇者を呼び出そうとしたこともそれであなたが召喚されてしまったことも…本当にごめんなさい…」
「あなた、ハヤトの事を知ってたんですね」
「召喚者とは離れてても分かるようになってまして…ほんとここに来るまでずっと気が気じゃなくて…」
「生きててくれてほんとによかったぁ…」
とまた泣いてしまった。
ずっと心配してくれていたようだ。
色々と引き出した情報をまとめると…。
住める水場が無くてピンチで色々な場所を転々としており、その道中で偶然勇者の血を入手した。
血を媒介にして魂を呼び出そうとした所、失敗。
すでにこの世界にいないことが判明した。
この状況をなんとかする為に、勇者に来てもらう為に必死で召喚魔法を改良した。
元々は虫なんかの小さいものしか呼び出せなかった魔法を、範囲を指定することで人間を呼び出せるように調整した。
「それだけでも凄いことなんだけど…よく別世界からの召喚なんていけたわね…」
基本的にこの手の魔法は消費魔力が大きく術者の魔力を大きく上回る。
なのでどこかから魔力を補填しながら使うのが一般的らしい。
まぁそもそも使えるのが三賢者と勇者だけらしいが…。
「私の魔力だけじゃ足りないから本来は召喚時に了承した場合のみ、来てもらえる仕様のはずだったんでですが…」
虫は基本的に意思を媒介しないので強制的に呼び出し可能。
人間の場合は、了承しなければ召喚出来ない仕様だったらしい。
「そうでもしないと魔力が足りなくて」
了承を得ることでその者の魔力で補填して安全に召喚できる仕様だったようだ。
「ああ、それをアヤネが弾いたから」
「魔法が暴走して近くの人をこちらに召喚してしまいました…」
しかも弾いたせいですべての魔力をメイが補填することになり、補填用に用意していた魔石もすべて使い切った上で完全に魔力切れで動けなくなっていたそうだ。
「後、数日起きるのが遅かったら干からびてました…」
魚人族は定期的に水に浸かる必要があり数日間浸からないと干からびて死に至るらしい。
魔力が少ないのが幸いし目が覚めるのも早かったそうだ。
「なんというかこの世界の魔法は、かなり安全性が意識してありますよね。転移魔法もそうですけど」
この世界の魔法は意外と使用時の安全性が確保されているなと不思議に思っていた。
転移魔法も片方が消失していた場合は発動しないなど安全性が確保されていた。
「そりゃそうよ、基礎の魔法学を提唱したのが私だもの」
とエルナが言う。
「ああ、それで…」
「基本的に安心安全をモットーにしてるからね、危険な魔法はそもそも教えないわ」
「なのに未発表の魔法を勝手に改良するから暴走するのよ」
「面目次第もないです…」
とメイはとてもしゅんっとしていた。
「それで気がついたら、あなたがこっちの世界に召喚されてて…慌てて向かったという訳です…」
水場を探しながらの旅だったらしくかなり過酷だったそうだ。
「まぁ事情はわかりましたけど…正直こっちの世界の問題に勇者を巻き込みたくなくてですね…」
「はい…命を賭して救ってくれた勇者に縋るのは非常に葛藤はあったのですが…やはり溺れている状態で眼の前に大木があったら掴みたくなってしまいまして…」
まぁその例えは言い得て妙なのだが…。
確かにその状態で大木を掴むなというのは無理があるか…。
「まぁ結果的に生きてますし妹も巻き込まれなくてよかったです」
「お兄さんだったんですね…でもそれならもしかして強かったり…」
「残念ながら魔力無しなもんで、なんも出来ないんですよ」
というと目に見えて落ち込んでいた。
「まぁこれでも飲んで落ち着いてください」
そう言ってお茶を差し出した。
「ありがとうございます…わぁ、すっごい美味しい…落ち着く…」
と何やら和んでいるようだ。
「って何、ここ!!!!!???どこ!?」
今更ツッコミが入った。
この人、多分一点しか見えなくなるタイプなんだなと改めて思った。




