第22話 転移魔法
翌朝になって外には出れないので、そのまま動画を見ながら時間を潰す。
生活基盤を整えつつも四英雄を潰す策は、しっかり立てている。
問題はタイミングとその方法である。
一番の問題だった各国への移動に関しては、エルナが転移魔法を使用出来るそうだ。
そんな魔法があるなら逃げるのも容易いだろうと思っていたが…。
本人曰く使用条件が難しいそうだ。
「まず、転移するには事前に魔法陣を設置する必要があるのよ」
転移する場所、そして転移する先の両方に魔法陣を設置する必要があるそうだ。
転移する場所の魔法陣に関しては、その場で設置すればいいのでそこまで大変ではないそうだが…すぐに使える魔法ではないので逃げるには向かないそうだ。
「後は転移先に関してもどうなってるかわからないから…行ったら敵に囲まれてたりするかもしれないし、あんまり多用出来ないのよ」
確かに転移先の状況がわからない状態で転移するのはなかなか怖い。
「転移魔法は、四英雄も使えるんです?」
「無理無理、あいつらには使えないし私が使えることを知ってるのは勇者だけよ」
「それは、意外ですね…割と知らしているもんかと」
「私の魔法研究の集大成みたいな魔法だからね。勇者にはバレちゃったけど…ってか人の論文を読み取ってそこまで達したあの子がおかしいのよ」
ええぇ…本当に勇者がアヤメなのかと疑いたくなっている。
どうしてもそういう印象がない。
「勇者は本当にすごいですね」
「ええ、ほんとに天才だったもの」
本当にアヤメなんだろうか…疑いが深くなっていく。
という訳で、移動に関しては心配事もあるが…実現は難しくない。
各国に設置した魔法陣に関しては見つかった様子はないそうだ。
ちなみに、距離に応じて使用する魔力量が変化するそうで遠ければ遠いほど、荷物が多ければ多いほど、魔力を多く消費するそうだ。
そういえばエルナにも時計を渡してる。
とても感動していた。
なにやら魔法にも運用出来ると言っていたが、どう運用するのかは不明である。
配達時間を7時としてそれに時計を合わせたのだが、偶然なのかこの世界も24時間だったようで、ちゃんと7時に到着のポップアップが出る。
そろそろ起きないかなと様子を見ているのだが…。
残念ながら完全に寝入っているようで起きる様子がなかった。
掛け布団を渡したのは失敗だったか…。
とりあえず部屋を出て朝食の準備をする。
起きるまで時間もありそうだし少し凝ったものを作るか…。
ポップアップウインドウは受け取りをせずに、閉まっておける事に昨日気付いたので閉じておく。
事故で受け取りを押したら家が崩壊しかねない。
という訳で本日はフレンチトーストです。
昨日の内に冷蔵庫で染み込ませてある。
キッチンでフライパンを使ってじっくりと焼いていく。
実は石窯の上にカセットコンロを置いているシュールな光景なのだが…。
まぁ使用するには問題ないので気にしない事にする。
部屋中に甘い匂いが漂っていく。
「やっぱり良い匂いだなぁ…」
このフレンチトーストは、家族全員大好きなのでよく作っていた。
厚切りのパンを両面浸す必要があるので、時間がかかるがかけた分だけ美味しいのだから仕方ない。
「今度は一体何を作ってるの!?」
と驚いた顔をしながらこっちに向かってくる。
「そんな慌ててこなくてもまだ出来ないですよ」
「こんな甘い匂いしてるのに!?」
「とりあえず寝間着を着替えてきてくださいな、その間に出来ますから」
恨めしい顔をしながら着替えに戻っていった。
両面焼き終わったのでテーブルに並べる。
一緒にサラダと合わせてヨーグルトも添えておく。
スープを作る時間はないので、カップにインスタントのコーンスープの素を入れておく。
慌てて着替えてきた様子のエルナがやってきた。
「これで良い?」
「はい、それと着替えたものはそこの籠に入れといてください。それと翻訳魔法をください」
もうすぐ切れる時間なので先にかけてもらう。
割とこの翻訳魔法が生命線な気がしている。
「出来てますよ…あっそのカッ…」
と言い終わる前にカップに入っていたスープの素を薬を飲むかの如く飲んでしまい…。
「この粉もすごく甘いわね。美味しい」
説明しなかった俺が悪いと思い俺の方のカップにお湯を入れてもらう。
「どうぞ…これがスープです」
「あ、ありがとう…」
少し気まずそうだったが、スープを口に運んでホワーッとした顔を浮かべていた。
「俺の分を焼いてきますから先に食べててください」
「待ってるわよ?」
「その匂いを嗅いで我慢出来るなら待っててもらっても良いですよ」
と言い残してキッチンに戻る。
自分の分を焼いて戻ると…。
すでにフレンチトーストは消えていた。
「無理だったわ…」
「でしょうね。こっちは上げませんからね…」
残念ながら今回は、2枚しか用意していないのでおかわりは無い。
「そんなに意地汚くはな…い…わよ」
そう言うエルナの目は少し泳いでいた。
「仕方ないですねぇ…これも食べていいですよ」
別にフレンチトーストじゃなくてもパンはあるのでそっちを食べれば済む。
「くっそんな…食い意地…」
と抵抗していたようだが、眼の前に出した所…即落ちだった。
「ありがとう…とっても美味しいわ」
という訳で主食を食べられてしまったので、キッチンに戻ってパンに少し火を通してから目玉焼きを上に乗せて完成である。
パンを焼く際に少し醤油を垂らしておくのがポイントである。
そして戻ってから食べようとしたのだが…。
なにやら視線を感じる。
「もうダメですよ」
「一口だけ…その香ばしい匂い…」
「一口だけですからね…」
女性のおねだりの表情に逆らえるような胆力は、持ち合わせていないので仕方ない。
パンを差し出したのだが、俺が食べていた部分をかじった。
「これもすっごく美味しい!」
こちらが関節キスを気にしているというのに、本人は全く気にしていないようだった。
そして帰ってきたパンに目を落とす。
相手が気にしていないのに自分だけ気にするなんてと思い残りを平らげる。
緊張で味が飛んでしまった。
朝食を終え、片付けをしてから2人で庭にでた。
「この辺を使ってもいいですか?」
彼女の家の裏手の庭を指さして確認する。
「いいけど何をするの?」
「見てからのお楽しみということで」
そういって受け取りボタンを押した。
そして眼の前に家が現れた。




