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「男子が2割の世界で普通にしてたら、どうやら大問題らしい」   作者: ゆう
4章

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第5話「男子3人の放課後」

第5話「男子3人の放課後」


オリエンテーションが終わった後の教室は、祭りの後の虚脱感に満ちていた。

女子たちは後片付けの指示を出すために、生徒会室や体育館へ向かっている。

今、この教室にいるのは俺と田辺、それに松本の三人だけだった。

「……やっと、静かになったな」

松本が、椅子の背もたれに体を預けて呟いた。

俺は机の上に残った装飾用の色紙を束ねる。

「そうだな」

田辺は黙々と、床に落ちたマスキングテープの跡を剥がしていた。

窓から入り込む夕日が、誰もいない机の列を長く照らしている。

「なあ……崎山って怖くないのか」

松本が、天井を見上げたまま聞いてきた。

「何が」

「全部」

(全部って言われても)

「そう言われてもな」

俺は手を止めずに答えた。

間があった。

遠くで、女子たちの笑い声が風に乗って聞こえてくる。

「俺、小学校のとき男子が俺一人だったんだよね」

松本が、消え入るような声で言った。

俺は顔を上げた。

松本は自分の腕をさすっている。

「毎日すごかった。二十人の女子に囲まれて、一挙手一投足を見られてる感じ」

「……」

「先生も、俺を腫れ物みたいに扱って。気を遣いすぎて、逆に俺は何もできなかった。動いたら誰かが怪我するんじゃないかって、ずっと怖かった」

田辺の手が、少し止まった。

彼は床に爪を立てたまま、動かない。

何も言わない。でも、確かに止まっていた。

「今でも、女子の視線が刺さると息ができなくなるんだ」

松本が、乾いた笑いを漏らした。

「だから、お前みたいに普通に喋れる奴を見ると、本気で別の生き物なんじゃないかって思う」

(別の生き物、か)

「俺はただ、目の前のやつと話してるだけだけどな」

俺が言うと、田辺がゆっくりと立ち上がった。

彼は剥がしたテープのゴミを、無造作にゴミ箱へ捨てた。

「……動かなきゃ、壊れないからな」

ボソリと、田辺が吐き捨てた。

それが、松本への同意なのか、自分への諦めなのかはわからなかった。

「壊れる前に、透明になりたかっただけだ」

田辺が俺の横を通り過ぎる。

(……摩耗してるな)

二人とも、戦って負けたわけじゃない。

ただ、過剰な視線と、過剰な保護の中に、自分という形を削り取られただけだ。

「帰るか」

俺が言うと、松本がゆっくりと立ち上がった。

「そうだな。……女子が戻ってくる前に」

三人は、誰からともなくカバンを手に取った。

夕闇が迫る廊下に出ると、そこにはまた、あの息苦しい「正解」の世界が待っていた。

俺たちは並んで、静かに階段を下りていった。

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