表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「男子が2割の世界で普通にしてたら、どうやら大問題らしい」   作者: ゆう
第二章 教室の外側

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/48

第10話「帰る場所」

第10話「帰る場所」


雨は上がっていた。

アスファルトの窪みに溜まった水が、街灯の光を鈍く跳ね返している。

一人で歩く帰り道。

(明日には、もっと騒がしくなるんだろうな)

男子に女子が傘を返す。それだけで教室の空気が変わる世界だ。

だが、困っている人間に傘を貸す。その理屈は間違っていないはずだ。

この世界の「正解」はまだ遠いが、俺の「普通」を曲げるつもりもなかった。

◇  ◇  ◇

玄関の鍵を開ける。

以前は、重い沈黙だけが俺を迎えていた。

「ただいま」

靴を脱ごうとした時、廊下の奥で足音がした。

ことみがひょいと顔を出す。

「おかえり、兄さん」

彼女はそう言うと、こちらの手元を見て、少しだけ目を細めた。

返ってくる言葉がある。それだけで、空気の温度が違う気がした。

◇  ◇  ◇

食卓には、湯気の立つ料理が並んでいた。

母さんのたか子も椅子に座っている。

「今日はどうだった?」

ことみが箸を動かしながら、何気ない風を装って聞いてくる。

視線は小皿に向けられたままだ。

「少し、噂になった」

「……また?」

「また」

俺が短く答えると、ことみの口元がわずかに緩んだ。

俺も少しだけ笑う。

たか子は何も言わなかったが、皿の上にはいつもより一品、煮物が多い。

余計な説明も、劇的な和解の言葉もない。

ただ、食器の触れ合う音と、ささやかな会話がそこにある。

「ごちそうさま。美味しかった」

席を立ち、自分の部屋へ向かう。

「ただいま」が返ってくる家になった。

それだけで、今日は十分だった。

◇  ◇  ◇

翌朝、登校して生徒会室の前を通りかかった。

まだ誰もいないはずの時間。

ドアの隙間から、細い光が廊下に漏れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ