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同僚と妖精(騎士編) ㉒ 繋がれた手

姫の恋人が元同僚。

騎士団の中ですぐに噂は広まった。


「お前マジかよ!?」


先輩が肩に腕を回してくる。


「姫と付き合ってるって」


一瞬、無言になる元同僚。


「……そーなんすよ」


適当に合わせる。


「やるなあ」


他の団員達も食い付いてくる。


「もうヤった?」


「ヤったに決まってんだろ」

笑って流す。


(……面倒くせぇ)


練習中、侍女に呼び止められることも増えた。


「姫様が、お呼びです」


「……わかった」


姫に呼ばれて行くと、

大抵、もう一人いる。


(……またか)


視線の先に、王子がいた。


こちらを、じっと見ていた。


「手を繋いで、歩いて」


姫が耳打ちした。


一瞬だけ、王子を見る。


「……はい」


手を引く。


距離が近い。


……昔は、

こういうので何か思ってた気がする。


ほんの少しだけ、

違和感が残った。


そのまま、


庭を歩いた。


王子は何も言わずに、去って行った。


「……いいんですか?これで」


「……放っておいたら、あの人は来ないもの」


元同僚はゲンナリした。


ーー


夜。


元同僚は自室に戻るなり、

ベッドに倒れ込んだ。


「疲れた……」


目を閉じる。


――ふと、


妖精の顔が浮かんだ。


「……は」


すぐに、目を開ける。


……もう、いいだろ。

そう思い込む。


――また、近づきすぎだ。


小さく、息を吐く。


目を閉じる。


ーー


妖精は、

目を閉じる。


元同僚に、

――触れられる。


近い。


息がかかる。


「……」


唇が、触れた。


ーー


目が覚める。


息が、少し荒い。


心臓が、うるさい。


しばらく、


そのまま動けなかった。


……今の、何。


顔を覆う。


(ありえないのに)


でも、


指先に、


まだ残っている気がした。


ーー


隣町までパンを配達に行ったときだった。


妖精は、ふと足が止まる。


見覚えのある背中。


――元同僚。


隣には、姫。


距離が、近い。


笑っている。


何か話して、

姫が少し身を乗り出す。


元同僚が、手を伸ばした。


そのまま――


指先が触れ、

そのまま手を繋いだ。


胸の奥が、

ひくりと鳴った。


……違う。


でも、


目の前で起きているのは、

それだった。


並んで歩く。


人混みの中でも、

離れない距離。


ときどき、肩が触れる。


姫が何か言う。


元同僚が、短く返す。


それだけで、

十分だった。


――恋人みたいだ。


視線を、逸らした。


足が動かない。


行けばいいのに。


声をかければいいのに。


でも、


動けなかった。


箱を持つ手に、

力が入る。


指先が、震える。


(……仕事だよね)


自分に言い聞かせる。


でも、


もう一度だけ、

見てしまう。


まだ、繋いでいた。


離す気配は、なかった。


喉の奥が、少しだけ詰まる。


……やめよ。


顔を背ける。


そのまま、


歩き出した。


パンの匂いが、


やけに強く残った。


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