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同僚と妖精(騎士編) ⑭  対等じゃない恋

 元職場の先輩が配達中の妖精と道ですれ違う。


 妖精を見つけてニヤニヤしていた。

 変わらない目つき。


「久しぶりじゃん」


「……はい」


「パン屋やってるって本当だったんだな」


「……」


「騎士の野郎に会ったか?」


「……まぁ」


「可愛い彼女連れてたな」


「仕事上のパートナーって言ってましたけど……」


「んな訳ねぇじゃん。お前ニブイのな」


「え?」


「くっつく寸前ってやつだよ」


 妖精が黙る。


「お前さぁ、アイツに惚れてるみたいだけど」

「まさか本気で、妖精が人間の恋人になれるなんて思ってねぇよな?」


「……そんなこと」


 妖精は首を振った。


「妖精なんて、ただのおもちゃなんだよ、人間にとって」

「寝るだけの道具」


「……わかってます」


 わかっている。

 そんなこと、昔から。


 ……期待しちゃいけないんだ。


 妖精は踵を返した。


「仕事の途中なので」


「金困ったら、いつでも俺が買ってやるよ」


「……失礼します」


 妖精は頭を下げて、歩き出した。


 何も言い返せなかった。


 アイツは違う。


 そう言いたかったけど。


 自信がなかった。


 配達の帰りだった。


 村の外れの道。


 少し先に、

 見覚えのある後ろ姿が見えた。


 騎士の服。

 隣には、女騎士。


 何か話している。

 女騎士が笑った。

 元同僚も、少しだけ笑った。


 並んで歩いて、

 そのまま村の外へ出て行く。


 仕事に戻るんだろう。


 妖精は、少しだけ立ち止まった。


  ――可愛い彼女連れてたな。


 先輩の言葉を思い出す。


 ――くっつく寸前ってやつだよ。


「……そっか」


 小さく呟いた。


 それなら、

 触らないのも当たり前だ。


 また来るって言ったのも、

 ただの優しさだ。


 ――勘違いしちゃいけない。


 妖精は、もう一度だけ

 二人の背中を見た。


 それから、

 何事もなかったみたいに歩き出した。


ーー


「戻りました……」


 店に戻ると、師匠がパンを並べていた。


「おう」


 妖精がため息を吐いたのを、師匠は見逃さなかった。


「何か、あったのか?」


 ドキリとする。


「いえ……」


「アイツ、いい奴っぽかったな」


「え?」


「お前の好きな男」


 妖精は首を振った。


「違います」


「好きなんじゃねぇの?」


「人間を好きになったって、無理だし……」


 妖精は目を伏せる。


「何でそう思う?」


「妖精は、人間のおもちゃだから」


 師匠はため息をついた。


「お前見てると、昔付き合ってたヤツ思い出す」


「……妖精ですか?」


「そう。

 付き合うか?って言ったら、夢みたいって泣いてたな」


「……わかります、その気持ち」


「でもな」


 師匠はパンを並べながら言った。


「言われた方からすると、オイオイってなる」


「……え?」


「人間とか妖精とか、

 関係ねーって言ってんじゃんって」


 妖精は黙った。


「お前の好きな奴がどう思ってるかは、

 俺は知らねぇけどな」


 少しだけ間。


「俺達は、だからうまくいかなかった。

 俺はそう思ってる」


 最後のパンを並べ終わる。


 師匠は手を止めたまま、少しだけ考えてから言った。


「……対等じゃねぇと、

 続かねーんだよな」


「……対等、ですか」


「そうだ」


「無理ですよ」


「何で」


「俺、妖精だし」


 師匠はため息をついた。


「……そうか」


 そう言ったきり、何も言わなかった。


 一番弟子が顔を出す。


「師匠、チェックお願いします」


「ああ」

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