同僚と妖精(騎士編) ⑬ 触らない人
「妖精だからって、触っていいのかよ」
「……おかしいだろ」
独り言みたいに呟く。
「ありがとう」
「気にしてくれて」
「ムカつく」
「……は?」
「騎士団、夜になると妖精呼んでる」
妖精は少しだけ目を伏せた。
「……さっき、お前見て」
「綺麗だと思った」
少しだけ間。
「……俺も同じじゃねぇかって思った」
「だからムカつく」
少し黙る。
「……俺にもムカつく」
「騎士団に、妖精来てるの?」
「ああ」
「綺麗だった?」
「……まあ」
「そっか」
少し間。
「……あのさ」
「ん?」
「……いや、何でもない」
「何だよ」
少し迷ってから、小さな声で聞いた。
「……寝た?」
「は?」
「その妖精と」
「寝てねぇよ!」
少し沈黙。
「……そっか」
小さく息を吐く。
少しだけ黙ってから、呟いた。
「……やっぱり、妖精じゃ無理だよね」
俯いたまま、何かを呟いた。
「え?」
妖精は少しだけ笑った。
「……何でもないよ」
「言えよ」
「……妖精、そういうことしないんだなって思って」
「……当たり前だろ」
少し苛立った声だった。
――妖精なんか、相手にするわけないだろ。
そう言われたみたいで、
胸が少し痛かった。
「女の人が好きなんでしょ?」
「は?」
「一緒に帰って来てたじゃん」
「……ああ、アイツか」
「彼女?」
元同僚はすぐに答えなかった。
「……そうだよ」
妖精は何も言わなかった。
少しだけ目を伏せる。
「そう、なんだ……」
声が少し震えていた。
「んな訳ねーだろ。仕事のパートナーだよ」
「俺が恋人作らねーの知ってんだろ」
少し沈黙。
「……何そんな顔してんだよ」
妖精は少しだけ笑った。
でも、うまく笑えていなかった。
「お前のそんな顔、見たくねぇよ」
元同僚は、妖精の頬に手を伸ばしかけて――止めた。
触れなかった。
(……触るな)
(どうせ、ただの欲だろ)
(そんなもんで触んな)
他の奴らと同じこと、
こいつにすんな。
……やっぱり、触りたくないんだなと思った。
前も、
同じ顔をしていた。
「……触っていいのに。慣れてるよ」
この人は、
俺を欲しがらない。
「慣れんな、そんなもん」
触らない人だった。
だから、
好きになった。
「……じゃあ帰る」
「うん」
「……あのさ」
「何?」
「たまには相談しろよな」
「……うん」
「また来る」
そう言って、帰っていった。
また来ると言った。
それだけで、
明日が少しだけ、楽しみになった。




