遊び人と妖精⑦ しるし
「好き……好き」
ベッドの中で妖精が呟く。
「……ああ」
返事をする。
額にキス。
抱きしめて寝る。
恋人として接している。
俺はそのつもりだった。
抱く回数、会う回数が減っても、アイツとの関係は切れなかった。
いつ会っても、アイツは嬉しそうに笑うから。
また会いたくなって会う。
その繰り返しだった。
気づけば一年経っていた。
収入は安定したけど。
相変わらず女性客の相手をする毎日。
妖精が安心できない仕事。
このままバー店員続けるのもどうなんだろうな……
今の仕事に疑問を持ち始めた頃だった。
小さな子供がパン屋に一人で入って行くのを見た。
自分でパンをトレーに乗せるなんて無理だろと思っていたら、案の定店員が代わりに取ってやっている。
熊の形をしたパン。
それだけ買って帰る子供。
何となく、胸が温かくなった。
ああいう顔、
久しぶりに見た気がした。
ーー
いつものように妖精と会う。
食事をする。
宿に行く。
ヤる。
終わった後、一服していた。
パン屋か……食っていけねぇよな
なんて思っていた。
ため息をつく。
「……何か、ありましたか?」
「いや……」
「私にできることがあれば、言ってくださいね。何でもしますから……」
「ん?じゃあ遠慮なく」
再びベッドに入る。
その日は
久しぶりに燃えてヤりまくった。
それで、懲りもせずまた調子に乗ってしまった。
妖精の首筋に鬱血の痕。
まずいと思ったときには、もう遅かった。
動きが止まった俺を見て、
「……どうしました?」
不安そうに目が揺れる。
「……悪りぃ、また痕つけちまった」
「いいですよ」
ニッコリ微笑む。
「つけたいだけ、つけてください」
「それは……」
俺の頬に触れる。
上目遣い。
「私を、めちゃくちゃにしてください……」
それは、反則だろ。
何もかもどうでもよくなる。
理性が飛んだ。
ーー
いつのまにか、妖精を抱きしめたまま眠っていた。
朝。
いつもより、妖精はニコニコしていた。
鏡の前で何度も俺が付けた首の痕を見ていた。
「……嬉しそうだな」
「はい」
付き合って一年も経つのにこの反応。
やっぱり変わってる。
「あなたのモノになりたくて」
腕を絡ませてくる。
「……付き合ってるだろ」
「しるしが欲しかったんです」
「ふぅん」
今までだって何度も付けてんのに、今更?
と思ったけど、聞かなかった。
そういうもんかって軽く流した。
俺はタバコに火をつけた。
ーー
銀行に融資の話を聞いてみることにした。
とりあえず話だけ聞いてみるかって軽い気持ちで。
「じゃあな」
「はい」
いつものように妖精と別れて、そのまま俺は銀行に向かった。
窓口で話す。
「ご結婚は?」
「……してません」
「ご夫婦ですと、融資が受けられやすくなりますよ」
「……そーすか」
まぁ予想通り、簡単じゃなかった。
俺は早々に銀行を出る。
「金貯めるしかねぇな……」
歩きながら呟く。
妖精がその様子を見ていたことに、俺は気づかなかった。




