遊び人と妖精③ 見返りはいらない
久しぶりに大儲けした。
「やっとか……」
気づけば2ヶ月ご無沙汰だった。
慣れた手つきで妖精の店に入る。
指名は4人。あの妖精もその中に入っていた。
個室に入ると
他の妖精は笑って寄ってくる。
アイツは一歩後ろに立ったまま、
こっちを見ていた。
遠慮がちに。
それが妙に俺をイラ立たせた。
何でそんな顔するんだよ。
「来いよ」
手招きすると、
小走りに側に来る妖精。
少しだけ、
嬉しそうだった。
顔を抱き寄せて2、3回唇を奪った。
「……待ってろ」
「はい」
頷くと妖精は元の位置に戻っていく。
俺に言われた通り。
他の妖精を抱き終わるのを待っていた。
ずっと、こっちを見ながら。
喘ぎ声。
荒い息遣いの音。
本当に好きなら、こんな状況耐えられないはず。
他の妖精と交わりながら、
何度か目が合う。
娼婦が客に恋する訳ねぇよな……
なんて思っていた。
一通り終わって、俺は一服していた。
ちらっとあの妖精を見る。
膝を抱えてこっちを見ていた。
「来れば?」
隣を指す。
いそいそと近寄ってくる妖精。
そっと隣に座る。
触れない距離で。
「まだ遠慮してんだ?」
妖精の肩を抱き寄せる。
こくりと頷く妖精。
「はい……」
「そんなに好きか?」
妖精が息を飲む。
「俺のこと」
軽く言ってみただけだった。
冗談には冗談で乗っかってやろう、くらいな感じで。
「好きです……」
声は少しだけ震えていた。
妖精が真っ直ぐ見上げてくる。
「初めて会ったときから、私あなたのこと……」
「ずっと……好きで……」
俺はタバコを落としそうになった。
「本気か?」
妖精は目を逸らさない。
俺が言葉に詰まっていると、
「迷惑にはなりたくないんです。私は役に立てれば、それで……」
俯いた。
「……そうか」
「はい」
それ以上、
会話は続かなかった。
でも、抱いた。
あの目を見ると
狂ったように欲しくなって。
考えたくなかった。
朝が来るまで何度も抱いた。
ーー
翌朝。
繁華街を歩きながら
妖精のことを思い出していた。
『私あなたのこと……』
『ずっと……好きで……』
あの声がずっと離れなかった。
妖精なら金だけ払って
ヤりたいときにヤれる。
後腐れなくていい。
そう思っていた。
『迷惑にはなりたくないんです。私は役に立てれば、それで……』
見返りも求めず、こんなに真っ直ぐ気持ちをぶつけられたのは、初めてだった。
これまでの恋愛はいつも見返りを求められた。
私を見て
私を愛して
私と一緒にいて
何かあれば
私私私……
それが面倒で恋人はいらないと思っていた。
……なのに、
あいつは違った。
「妖精か……」
そういう生き物だ。
そう思うことにした。
――そう思わないと、困る。
それでも、
あの目が頭から離れなかった。




