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遊び人と妖精② 気づかないふり

1か月後、アイツを指名した。

妖精は二人。

一人は、アイツ。


もう一人の妖精を抱いてる間、アイツは静かに待っていた。


膝の上で、手を握りしめながら。


それが、

妙に目についた。


散々焦らしてから、

ようやくそっちに手を伸ばした。


「……好き」


小さく、

何度も繰り返していた。


乱暴に口づけても、

両腕を縛っても、

アイツは抵抗しなかった。


むしろ嬉しそうだった。


欲しがる目。


それを見るたび、

また抱きたくなる。


繰り返す。


甘い声が上がる。


気づいたらまた朝になっていた。


ーー


朝。


もう一人の妖精が帰っていく。


アイツは

まだ俺の隣にいた。


「帰らねぇの?」


「もう少し……」


肩にもたれかかる妖精。


目を閉じて、

静かに呼吸している。


「……あんたさ」


「はい?」


「いや、何でもない……」


1か月も放ったらかし。


その間も他の妖精と寝ていた。


やっと指名されたと思ったら、

目の前で、他の妖精を抱く。


散々焦らして、乱暴に好き勝手抱いてくる。


そんな男から離れない。


……本当に、変なヤツだ。


「気が向いたら、また私を指名してください。待ってますから」


妖精は笑顔で部屋から出て行った。


ケロッとしてやがる。


好きとか言ってんのも作戦か。


指名取るための。


「……よくやるよ」


あの妖精にしてやられたな。


「まぁ、でも」


営業でもこれはこれで面白い。


客を楽しませるのが娼婦の仕事だ。


次はどんな演技を見せてくれるのか。


楽しみが増えた。


胸の小さな痛みは気づかなかったことにした。


ーー


最近、稼ぎがパッとしなかった。


以前のような大当たりがない。


妖精の店にもしばらく行っていなかった。


「……ツイてねぇな」


歩きながら

タバコに火をつける。


路地裏で話し声がした。


「やめてください!」


「いいじゃん。やらせろよ」


面倒だな……


そう思うより前に、体が動いていた。


「嫌がってるだろ」


壁に手首を押さえつけ、女に無理矢理口づけしようとしている男に言う。


「やめてやれよ」


男は舌打ちして、逃げて行った。


「大丈夫か?」


女の顔を見る。

一瞬止まる。


「お前……」


女じゃない。

あの妖精だった。


「ありがとうございます……」


震えていた。


「今の、客?」


「はい……」


「そうか」


あの客も、俺みたいに言われたのか。


……そりゃトラブルになるわ。


「俺はあんたのやり方、嫌いじゃねぇ」


「けど」


「相手見て言った方がいいぜ。俺みたいに流せるヤツばっかじゃないからな」


妖精は何も言わなかった。


俺は図星で言い返せないのだと思っていた。


「また、会いたいです」


妖精はニコッと笑う。


ほんの少しだけ、

目が揺れていた。


怖かったのか、

それとも――


また営業か。


……そう思うことにした。


そう思っておかないと、

本気にしてしまいそうだった。


「はいはい」


俺はぶっきらぼうに返した。




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